5話
翌日、朝早くから起きた俺は魔法で飲み水を飲んでから外に出た。
「う、寒っ……。」
家の中も寒かったがそれ以上に家の外は気温が低くて寒かった。
早朝の時間を使って武聖の知識を使って武器を使わない格闘技を鍛えようと思ったが諦めることにした。寒さには敵わない。
家に戻っても室温は低い。
昨日は練習には使っていなかったが部屋の温度を一定に保つ魔法があった。その魔法の練習をしよう。
指先に集めた魔力で魔法陣と魔法術式を描いていくが、今回の魔法は魔法の発動に成功した魔法よりも難易度が高い。
魔法術式を描き終わってもどこかしらに問題があって魔法の発動に失敗してしまう。
それでもと練習していても失敗。両親が起きてくる時間帯になっても一度も成功することはなかった。
「どこが違うんだろうな〜。」
何が原因で魔法が発動しなかったのか考えるが、魔法陣か魔法術式のどちらかにあるのだろつが、どこなの部分なのか、それとも同じところで躓いてるのか、そこのところがいまいち分からない。
原因が記憶図書館で分かったりしないかと思って一応確認の為に記憶図書館に意識を向かわせる。
検索ワードを選んで失敗の原因がなんだったのかを調べた。
「こんな風にも出るんだ。」
失敗の原因の根底は分からなかったが、それでも魔法を失敗した際の魔法陣と魔法術式が全て現れる。成功する正確な魔法陣と魔法術式と一緒に。
正しい魔法陣と魔法術式と失敗した魔法陣と魔法術式。この2つを見比べて見ればどこで間違っていたのかが分かる。
何度も失敗したからこそ失敗のパターンがたくさんある。全てを見比べてどこで多く失敗しているのかも確かめられた。
こうやって見比べられることでどこが間違えやすいのか一目瞭然だった。
「分かりやすい。これなら……そう言えばここで魔法って使えるのか?」
次こそは成功できる様に頑張ろうと思ったところで疑問が湧いた。
この記憶図書館の空間内の俺は思考のみが記憶図書館に存在していると思っている。
けど、もしかしてだが、この記憶図書館でも魔法を使えたりはしないだろうか?
もし本当に魔法が使えるのなら現実での時間が経たないに等しい空間で練習するのはたくさん練習する時間を取れるのではないだろうか?
「試しにやってみるか。」
俺は成功率がかなり高くなった送風を送れる魔法を発動してみた。
魔法陣を描き、魔法術式を描いた魔法陣から魔法が発動するのかを描くことには成功した。
あとは魔法陣から魔法が発動するだけ。
魔法陣を見守っていると発動した。
魔法陣から風が吹き始めた。
「記憶図書館でも魔法は使えるんだ!」
これでほぼ無限に近い時間を使って魔法の練習が出来る。魔力が続く限りだが。
この記憶図書館で魔法を使おうとすれば魔力は消費されるのはさっき確認できたので魔力の限界まで魔法だけでなく聖法の練習も出来そうだ。
現実世界では武術を、記憶図書館では魔法と聖法を練習すれば普通に練習をするよりも早く強くなれるはず。
俺のジョブは3つもあるんだから少しくらいズルをしたって問題ないはずだ。それに記憶図書館は俺の力でもあるんだし。
それよりも魔法の練習をしよ。直接魔法術式を見ながら練習できるから魔法の発動も間違えないで出来るかもしれない。
指先に魔力を集めた魔法陣と魔法術式を描き始めた。
成功する魔法陣と魔法術式を見ながら正確に魔法陣と魔法術式を描いていく。
ゆっくりと確実に描いて完成した魔法陣は魔法術式も含めて歪みもない様に見える。
「よし、発動だ。」
魔法を発動した完成した魔法陣を中心にして空間内の温度が一定に保たれる。
のだが、ここで問題が発生する。それは記憶図書館に室温が寒くも暑くもないからだ。
せっかく魔法が発動して人が過ごしやすい温度になっていたとしても、この記憶図書館では判別することが出来ないのだ。
「まさかこんな失敗するとは思わなかった。」
今なら分かり切ったことだったと思える。けど、思い付かなかったのだから仕方がないことだ。
「それでも魔法は発動したんだから成功ではあるよな。」
あとはここから見本を見ながらではなく見本を見ずにでも魔法を発動させられる様になればいいだけ。
頑張ろう。そう思った俺はそれからも魔力の続く限りに魔法の練習を記憶図書館で行なった。
それかれ記憶図書館でしばらく経ち、あと室温を丁度良い温度に変えて一定に保つ魔法を使える分の魔力を残し、魔力を消費して疲れた俺は現実に戻った。
現実ではまだ母が朝食を作り始めているところだった。ほとんどやっぱり時間が経っていない。
「母さん、魔法使うから驚くかもだから気を付けて。」
「危ない魔法じゃなければいいわ。」
母から許可を貰ったことだし、俺は室温を一定の温度にする魔法の魔法陣を描き始めた。
記憶図書館で何度も失敗と成功を繰り返した結果、今なら成功率もそこそこ高くなるくらいにはなったほどだ。
何度も練習した魔法を発動する。綺麗に描けた魔法陣を中心にしてリビングを覆うくらいに広がった空間内は暖かくなる。
「よし!成功だ!」
「レン、何したのあなた。」
母が驚いた顔をしてこちらを見てくる。
料理に火を使っていても部屋の温度は低かったのに、今は室温が過ごしやすい温度に変わっているのだから。
「魔法だよ。何度も練習したんだ。成功して良かったよ。」
赤ん坊の頃から魔力をいじくり回して増えた魔力でも、かなりの量の魔力を使って練習を繰り返したのだ。
記憶図書館では成功していても現実で本当に成功するのか少し心配だった。
本当に成功して良かった。
母も最初は驚いていたが、この魔法の便利さには勝てなかった様だ。毎日、使えるのなら使って欲しいと言われたほどに。
外に出た父も戻ってきた時には部屋の温度が暖かいことに驚いていた。
俺が魔法を使って暖かくなった事を伝えれば「凄いじゃないかと!」と褒められた。
起こしてきた双子たちももちろん驚いていた。寝ていた部屋よりも暖かかったのだから。
季節は冬なのにも関わらず、俺たち家族は暖かな部屋の中で朝食を食べ、お互いに今日の予定を話してながら食事をする。
朝食を全員が食べ終わり母と一緒に洗い物をしている時に魔法の効果が切れて、一気に下がった部屋の温度には別の意味でも驚くことになった。




