3話
教師役の団員に木剣を弾かれて負けてしまったが、木剣を拾い直してまた模擬戦が始まった。
それでもやっぱり相手の方が経験もレベルも違うせいで勝ち目がない。
「これが武聖、か……何か違和感があるが剣を使い始めてにしては強いぞ。」
「そうかな?」
団員も何か疑問に思っているが、俺も自分に対して違和感があった。
あの時に感じた明確に強くなったと思うほどの万能感がいつまで経っても戻って来ない。
やっぱりあれはジョブを授かった時に起きる一時的なものだったのだろうか?
分からないものは分からないが、強くなる為にももっと鍛えないといけない。
「もう一回模擬戦お願いします。」
「来い!」
それから何度か模擬戦を行なった。
模擬戦の最中にこれは!と思う一撃を2回ほど振るえた。
その時の2回の攻撃を受けた時の団員は驚いていたので相当良い一撃だったのではないだろうか。
昼の鐘が鳴った頃に訓練所での訓練は終わった。
「あの……。」
「どうした?」
俺は訓練所の武器を使って訓練所で訓練するのは1人の時に使っても問題がないのかを団員に聞いた。
「基本的に訓練所には団員の誰かしらは居るから訓練することを伝えれば問題ないぞ。でも、壊したりした場合は団員の誰かに伝えてくれよ。」
「うん、分かった。」
訓練所は使用することを伝えれば誰でも使える様だ。毎日訓練所で訓練する訳じゃないから武器の練習が出来るのはありがたい。
初日の訓練も終わり家まで真っ直ぐに帰った。
「ただいま。」
「「にいちゃん、おかえりー!!」」
帰って来たらとてとてと双子たちが近寄ってきた。
俺は双子たちを抱っこするとそのまま料理中の母の元に向かった。
「おかえり。どうだった?訓練。」
「疲れたけど楽しかったよ。」
「そうなの。もう少しでお昼だから、その汗流しちゃいなさい。」
「ん、そうする。」
昼食になる前に汗を流すことにした俺は抱っこしていた双子を下ろして井戸に移動した。
「うー、冷たい。寒いし、早くしよ。」
太陽が出ていても気温が低い今の時期にする水浴びは本当に心臓が止まりそうになるのではないかと思うくらいには寒い。
手早く汗や埃を水で洗い流して体を拭いて家に戻る。
「あ〜、温かい。」
家の中は料理中で火を使っていることもあって暖かい。
冷えた体が温まるのを感じながら俺は昼食になるまで双子たちと遊んで過ごすことになった。
それから少し時間が経ち、いつの間にか帰って来ていた父親も揃って家族全員で昼食を食べ終わると、俺は魔法の勉強を始める。
俺のジョブの1つである賢者。
それはジョブの特性として賢者は全ての魔法属性に適正のあるジョブだ。
全ての属性魔法が使える様になるという事はその分だけ魔法の取得に時間が掛かる。
まずは初歩的な初心者が魔法を使える様になるのに必要な情報を記憶図書館を利用して学習しよう。
魔法を使うのに必要な情報から始まってとにかく思い付いた情報を元に検索した結果、30冊くらいは記憶の本が出現した。
「結構な数が出たなぁ。」
もう一度検索結果を絞ろうかと考えた。けど、初歩的な初心者が魔法を扱える様にする為にした検索結果だからこそ、悩んだ。
「意識の外の時間は止まったも同然だし、全部読むか。」
どうせ今後の賢者としての魔法の勉強に必要になる情報が記された本などだから。
俺は本の中から最も最初に読むべき本を開いて読み始めた。
記憶図書館の中での肉体的な疲労も精神的な疲労もそこまでない。
それでも疲れてはくるので時折り休憩を挟みながらも全ての本を読み終わった。
「ふぅー、終わった。」
本を読み終わって記憶図書館から現実に戻ってきた俺は早速覚えた本の内容通りに魔法の練習を始めようと思った。
まず魔法を使うには魔力を感じて操作しないといけない。
でも、この魔力の感知や魔力の操作は既に赤ちゃんの頃からやっていた事もあって問題ない。
けど、魔力の感知、操作、制御が記憶図書館の賢者の情報の中に初歩的な部分でも重要な情報はあった。
まずは魔力の感知、操作、制御の3つを記憶の本の要訣に従って行なってみる。
「お、おぉーここまで違うのか。」
魔力感知から要訣に従ってやってみた。
独学だったからこそ感覚的にやっていたものを賢者のジョブの知識や要訣を元にして行なっただけでだいぶ違う。
今までの魔力感知よりもより深くより広く魔力を感じ取れる様になった。
初歩的な情報だけでここまで変わるのには驚愕するほどだった。
より高度な情報を基にして鍛えればもっと凄い精度の魔力感知になるだろう。
続けて魔力の操作と制御も要訣や情報通りに記憶した通りに行なってみた。
どちらも情報の成果が出たお陰で魔力の操作と制御が向上した。
「別物ってくらい変わったぞ。これなら魔法の方もすぐに使える様になるんじゃないか。」
生活魔法と呼ばれる初歩的な魔法から始めてみた。
魔力操作で魔法陣を描き、魔法陣の中に魔法術式を描くことこそが魔法を使う為に必要な事だ。
俺の魔力操作技術なら魔力の操作も問題ないし、そのまま魔法術式として魔力を留めて置くのも魔力制御も鍛えてあるので問題はないはずだ。
あとは上手く魔法術式の術式そのものを魔力で描くだけだが、実際に何度も繰り返してそこは学んでいこう。
部屋の中でも使える送風の魔法から始めることにした。
指先に集めた魔力を使って文字を書く様に空中に魔法術式を描いていく。
不恰好だがとりあえず送風の魔法術式を描くことは出来た。
あとは魔法を発動するだけ。
しかし送風の魔法は発動しなかった。
「失敗した。もっと丁寧に書いた方がいいな。」
歪んだ形になってしまったのが原因なのだと思う。
失敗してしまったのは仕方がない。
あとは上手く描ける様に何度も繰り返して行なうだけ。
俺はそれから上手く描くことを意識して何度も魔法術式を描いていった。
魔法術式を描いては失敗して、また描いては失敗してを繰り返して15回を超えた16回目の時にようやく魔法が発動する魔法術式が描けた。
魔法陣に描かれた魔法術式の力により送風の魔法陣から風が優しく吹き始めた。
1回は発動した。あとは繰り返し行なって100%の確率で送風の魔法が発動する様になれば賢者として一歩進めることになるだろう。




