2話
翌日、俺は村の訓練所に来ていた。
俺が授かった武聖のジョブは武術系のジョブだって事もあり、戦い方を磨く為にも訓練が必要だからと言うことだ。
「居ないのか?」
武術系のジョブを授かったのは俺だけでなくアークスもそうだ。同じ様に武術系のジョブを授かった子供たちは集まっている。なのにアークスが居ないことに疑問を思っていたが教師役の村の警備団の団員が来てしまった。
「今日から狩人のダンの息子が参加するぞ。レン、挨拶を。」
「レンです。」
教師役の団員に促されて挨拶をする俺に対して疎に拍手が起こる中で1人の俺より年上の子供がアークスが居ないことを言及した。
その時の回答がこうだ。
「アークスは教皇のジョブを授かった。その為、教会で勉強中だ。戦闘訓練の方には今日は参加しないそうだ。」
そう言うことらしい。俺も教皇のジョブを授かったが、教会での勉強など聞いたことはないので俺の方にはそう言った話は来ていないのだろう。村長の息子と狩人の息子の差が出ているのではないかと思われる。
まあ他人のことはどうでもいい。それよりも鍛えることだ。強くなる為に頑張らなくてはいけない。
ジョブを授かった時の万能感が一夜を明けても戻っていない。あのジョブを授かっただけで強くなったと感じる万能感はもう戻らないのだろう。
あの万能感を感じた。だからこそ強くなりたい気持ちがジョブを授かる前より強く感じる。
「まずは走るぞ。訓練所の内側10周だ!」
「「「「はい!!」」」」「はい。」
俺も遅れる形で返事をすると訓練所の内側を走り始める。
身体を鍛える為にも毎日走っていた事もあって体力には自信があったからこそ、内側を10周走り終える頃には息切れがありながらも走り切った。
「レン、初日から良く走り切った。これから武器の素振りだ。武聖は様々な武器を使えると聞いている。訓練用の武器の保管庫があるから着いて来なさい。」
「はい。」
教師役の団員の背後を着いて武器庫の中に入った。武器庫の中には木製の剣や槍や斧に弓矢が置かれていた。
弓矢は父が狩人という事もあってジョブを授かる前から扱える。ここは武聖のジョブを授かったからこそ別の武器にするのが練習の為にも良さそうだ。
「これにします。」
「剣にするか。訓練所に戻って素振りをするぞ。」
「はい。」
訓練所に戻った俺は手に持った木剣を素振りしようとするのだがどう素振りをすればいいのだろか?と悩んだ。
そう言う時は記憶図書館を使うことにした。記憶図書館を使用している時は時が止まったかの様に意識の外はゆっくりになる。
その間に本の様になっている記憶の本を読むのだが、まずは剣の素振りに必要になる情報を探すことだ。
どんな情報が欲しいのかを意識すれば、その欲しい情報が書かれた記憶が本として現れる。
「おぉー、結構な量があるな。これ、武聖の中にあった情報なのか?」
一冊に治らなかったからかテーブルが現れて、そのテーブルの上に大量の本が置かれていた。
この中から全部の本を確認するには時間が掛かる。
記憶図書館の効果の中には記憶そのものも強化されているから俺自身の記憶としても覚えてられるけど、もっと本としての記憶を精査した方がいいだろう。
「初心者でも分かる剣の素振りの仕方。」
本の数が7冊くらいまで減った。ここから更に今の俺の年齢である10歳児が素振りをするのに必要な情報で検索する。
そしたら2冊まで本は減った。この2冊に書かれた情報を読んで記憶して素振りをすることにした。
剣の握り、身体の動かし方、足腰の動きなどの剣を振るう基礎的な部分の要訣が書かれていた。
「なるほどな。ただ剣を振るうのとはだいぶ違うな。」
2冊の本を読み終わって完全に理解した訳ではないが、それでも剣の素振りをするくらいは出来ると思う程度には理解した。
記憶図書館から意識を戻した俺は木剣を記憶通りに身体を動かして振るってみた。
「……?なんか違うな。」
初めて木剣を振るってみたが感覚としてこれで振るい方としてあっているのか分からない。
とりあえず素振りに関する情報や要訣の記憶を思い出しながら10回素振りをしてみた。
「んー?こう?いや、こうかも。」
そうやって考えながら木剣を振るって素振りをしていると。
「!!今の感じかも!!!」
しっくりとくる振るい方が出来た気がした。
俺はもう一度木剣を振るってみたが先ほどの様なしっくりときた振るい方は出来なかった。
それからも素振りの訓練が終わるまでにしっくりとした振り方が出来たかもと思う振り方が出来たのは数にして3回ほどしか出来なかったが、そのしっくりとした振り方をした時としなかった時の差が本当に違うのでしっくりした振り方こそが正解の振り方なのだと思う。
「よーし!素振りは終わりだ。次は模擬戦をやるぞ。それぞれ相手を決めて始めろ。レン、お前は初めての模擬戦だからな。俺とやるぞ。」
「はい。」
偶にモンスターがやってくる程度で盗賊もやって来ない平和な村だが、それでも警備団に所属する団員が相手だ。良いジョブを持っていても初めての模擬戦相手としては全力で戦えるだろう。
「よろしくお願いします。」
「さあ、来い。最初は打ち込まないからな。」
「はい。」
俺は記憶図書館に意識を飛ばすと、剣を使った戦闘や模擬戦などの情報を元にして記憶の本を呼び出した。
やっぱり大量の本が現れたがそれから何度か検索内容を絞り込んで数を少なくさせても10冊以上ある本を時間を掛けて読み切った。
剣を使った戦法の情報やその要訣を記憶した俺は記憶図書館から意識を戻して模擬戦相手に向かって駆け出した。
「はっ!!」
走る勢いと重心や円運動などの技術を組み合わせた一撃を振るった。
団員の木剣に防がれてしまったが威力としては出たのか団員の表情は驚いている。
それからも記憶している情報を元にして木剣を振るっていくのだが防がれ続けてしまった。やっぱりレベルや経験、年季が違うのだろう。
「なかなか良いぞ、レン。流石は武聖だ。次はこっちからもいくぞ。」
こちらの攻撃を受けるだけだった団員から反撃が来始めた。
攻撃一辺倒だった先ほどまでとは違い、今度は俺の方が防戦一方になってしまう。
それでも剣対剣での防御の仕方は情報にあり、その通りに身体と剣を動かしてなんとか防いでいくのだが、俺は木剣を弾かれてしまい、そこで模擬戦は終了した。




