10話
次の訓練所での訓練の日にアークスとの再戦を目指して今日も俺は身体も技術も鍛える毎日を過ごしていた。
そして今日はその訓練の日。
流石にまだアークスと模擬戦で戦っても勝てないが、それでもアークスと模擬戦が出来たらしようと思う。
ジョブの補正がかなり強いアークスと戦えばよりもっと俺は強くなる気がするからだ。
訓練所では訓練を受ける子供や警備団の団員が集まってくる中でいつまで経ってもアークスはやって来なかった。
「あれ?居ない。」
もうそろそろ訓練の始まる時間になると言うのにアークスやその取り巻きの数人が来ていない。
せっかく戦闘系のジョブで鍛えるチャンスなのにアークスは来ない気なのか?
「よし!訓練を始めるぞ。まずはいつも通り走るところからだ!」
とうとう訓練が始まってしまった。
それなのにアークスとその取り巻きたちは訓練には来ていない。
アークスが来ないのは教会で教皇としての練習があるからと言うのはあるかもだが、前々回の訓練には参加していた取り巻きたちが参加しないのは不味いのではないだろうか?
「ま、俺には関係ないし別に良いか。」
今は俺自身を鍛える為の時間。
他人のことを一々気にしていても仕方がない。
俺は呼吸や走るスピードを一定にしながら訓練所の内側の壁際を走っていく。
そうして体力作りのマラソンだろう訓練の後に素振りを行なった。
ここから次は模擬戦だ。
今日は俺よりも3つ年上の男子と模擬戦をする。
相手は既に3年間の訓練をしている相手だから油断出来ない相手だろう。
俺は木剣を構えながら模擬戦の始まる合図を待った。
「模擬戦開始だ!」
模擬戦が始まった。
「うぉおおお!!!!」
相手の男子は木製の手斧を使う。それも二刀流で。随分特殊な相手だ。
手斧の大きさは片手で持てるサイズだからこそ間合いは短いが当たったらかなり痛いだろう。
左右から別々のタイミングで振るわれる2つの手斧に最初は回避を優先する。
振るわれる手斧は左側が右側よりも拙い感じだ。
相手の男子の利き手は右手なのだと予測する。
それならと俺は右手側の手斧を回避して左手の手斧が続け様に振るわれたのをチャンスだと手斧を弾く様に木剣を振るった。
狙い通りに手斧を木剣で弾くことには成功したのだが、その代償に若干だが俺の手に痺れが起きてしまう。
痺れを抑える為にも木剣を握る力を強めながら相手の男子の動きを観察することにした。
今の相手は手斧を片方失っている状態だ。
手斧の大きさ的に両手で扱うのはそこそこ難しいと思うが、ここからどうやって戦うのかを警戒しなければ。
どう来るのか。
どんな風に相手が動いても対応できる余裕を作りながら木剣を構えていると、相手は俺に向かって突っ込んできた。
手斧を振るうのか、それとも他の攻撃をしてくるのか、相手を良く見ながら対応すると決めて俺の方も動く。
相手は手斧を両手で振るってきた。
手斧の大きさ的に間合いが少し短くなったが、もともとの手斧の間合いは俺の木剣よりも短いから気にしていないのだろう。
両手で扱うことで威力が片手の時よりも上がった手斧の一撃を、俺は木剣で滑らす様にして受け流していく。
力をかなり入れていただろう一撃を受け流されてバランスを崩した相手の手首を軽く叩いた。
「痛っ……!」
そこまで力を入れていなくても痛かったらしく手斧を手放した相手に木剣を握って尋ねる。
「まだやる?それともここからはお互いに素手同士で戦ってもいいよ?」
「……ッ!!俺の負けだ!」
悔しそうに噛み締めてから相手は負けを認めた。
やっぱり3年間訓練をやっていたのに少ししかジョブを得てから時間が経っていない人に負けるのは悔しいのだろう。
でも実は今回の模擬戦では闘気を纏うまでは行っていないが、それでも魔力を生命力に変換したものを身体の中に満たしていたので身体能力が増していた。
ただ純粋な技術のみで相手を倒した訳ではないのが、俺も悔しいところだ。
でも3年の月日は子供だからこそ大きい。
相手の男子は俺よりも身長が高くて体格もいいのだから、これくらい強化して戦っても別に良いのではないか?と言う気持ちもある。
とにかくこれで模擬戦に初めて勝利した。
初めての模擬戦では団員の相手と模擬戦をして勝てず。
2回目の模擬戦ではアークスに敗北した。
3回目の今日の模擬戦で初めての勝利だ。
この勝利くらいは喜ぼう。
それから初の勝利を喜びながら休憩していると、他にも少しずつ模擬戦の勝敗が決まった頃に別の相手と模擬戦をすることになった。
次の相手は槍使いの女の子だ。
歳は俺よりも年上で訓練もその分だけ受けているだろう。
でも、さっきの相手に勝利した俺は今回も勝てると自信がある。
相手の体格は同じくらいだから今回は闘気は使わずに技術と今の身体能力だけで戦うつもりだ。
「よろしくお願いします。」
「こちらこそ。では始めましょう。」
模擬戦の合図もなく模擬戦は始まった。
相手の女子から繰り出された槍の刺突を木剣で受け流す。
刺突の速さこそ早いがそれでも受け流した際に感じだ力はそこまで強いものではない。
俺の身体能力でも強引に入っても勝てそうだ。けど、ここはなるべく技術で勝ちたいところ。
俺は受け流しを主体にしながら相手の攻撃を捌いて防いでいく。
「これならどーよ!」
これまでの刺突によるスタイルから槍による薙ぎ払いや振り下ろす様な攻撃に相手は変えてきた。
力が弱くても遠心力の乗った一撃は重い攻撃になると判断した通りに木剣で受け止めた時の衝撃が結構ある。
でもこのスタイルでの戦法は刺突を行なっていた時よりも大きな隙が多い。
俺は大きな隙の瞬間に相手との距離を詰めて槍の柄を握っている手の近くで槍の薙ぎ払いを押さえ込む。
木剣で押さえ込んだ時の手に掛かる衝撃はそこそこで、これならと俺は槍を力を込めた木剣で弾いた。
「きゃっ……。」
相手が悲鳴を上げるがまだ槍を手放している訳ではない。
ここから更に槍を狙って攻撃を何度も繰り返して、相手の槍を握る力を失わせていくと最終的に槍を手放した相手に木剣を添えて俺の勝利となった。
それからも何人かとの模擬戦を行なったが俺よりも年上の子供でも俺が勝利したのだが、流石に警備団の団員には勝てずに負けてしまうのだった。




