笑わぬ子供と試験・Ⅲ
作戦を考える試験を合格した次の日。今日は指揮能力の試験を受ける。朝起きたらすぐに準備を始め、庭に出る。
「おはようございます」
「おはようございます。ラクーン殿。さっそく試験の内容を説明しましょうか」
「お願いします」
「指揮を執る能力というのは即座に判断する能力が必要です。ですので今回は今から二十分間で編成、作戦を考えてもらいます」
「なるほど」
「今回の試験ではガンズと戦って頂きます。今からサーカスの通常メンバー四十人の中から五人を選び、戦う。勝利条件はガンズを線から出したら勝ちです。それとガンズと戦える時間は十分です。十分の間にガンズを円から出してください」
カルードが指を指した先には円形に線が引いてある。その中にガンズが入り、そこから出したら勝ちなのだろう。
「分かりました」
「では出て来てください」
カルードがそう言うと屋敷からサーカスのメンバーが出てくる。
「それではグループに分かれてください」
カルードがそう言うとサーカスのメンバー達は、サーカスの統括の人達の前に並ぶ。
「これは?」
「これがそれぞれのグループです。つまり彼等の前に居る統括者が彼等の所属するグループです」
「一人も並んでいない所がありますが?」
「それはグループである必要が無い所です。リーダーの俺は統括する特定のグループは無いですし、作戦参謀も一人です。統括と付いていない役職は一人なんですよ」
「なるほど」
それぞれどの程度の人数が居るのか数えてみると、物理十人、魔法七人、諜報五人、壁役五人、遠距離七人、補給六人である。
「それでは今から二十分で彼等の能力を把握し、五人選んでくれ。それと今回はラクーン殿の参加を認めます」
「サーカスのメンバーに重りを付けたりはしますか?」
「あります。内容は前回と同じです。ただガンズには何もつけません。他に質問はありますか?」
「ないです」
「分かりました。では、始め!」
こうして試験が始まる。まずは能力の把握だ。特に魔法使いの能力を最優先で把握する。
「まずは魔法使いの皆さん。得意な魔法を教えてください」
「能力は分かると思いますが、得意なのは火属性魔法です」
まずはケイドから。
「私の得意な魔法はまだ言ってなかったわね。私は呪術師、特殊な闇属性魔法を使うわ」
メアリーは魔法部隊所属だったようだ。そして闇魔法を使うらしい。
「俺はノリスだ。火属性魔法が得意だ。ケイドよりも攻撃力の高い魔法を使える。ただケイドほど器用に魔法は使えないけどな」
ノリスと名乗った男は、そこまで高くない身長と確実に鍛えているだろう体が特徴的で、予想だが魔法使いになる前は近接戦闘をしていたのだろう。
「アイリスです。水属性魔法が得意です。私はあまり強くないので他の人を選んでくださいね」
アイリスと名乗った女は、低い身長と死んだような目が特徴的だ。
「プースです。得意な魔法は地属性です。特に土を盛り上げたり下げたりし、上下に揺らす攻撃が得意です」
プースと名乗った男は、細身で高身長で貴族っぽい雰囲気のある人物だ。
「俺はブーヴィンだ。得意な魔法は地属性魔法。プースよりも攻撃的な魔法が得意だ。特に敵の逃げ道を潰して潰して、最終的に相手も押し潰す。全方位からの連続攻撃が得意だ」
ブーヴィンと名乗った男は、武闘派っぽい体つきに非常に厳つい顔をした男で、今回の試験で今の所一番使えそうな人物だ。
「リースです。得意な魔法は風属性魔法。その中でも移動系の魔法が得意です」
リースの名乗った女は、まだ十五になったかどうか程度の見た目で、とても戦闘系には見えない見た目をしている。
これがサーカスの魔法攻撃隊の様だ。今の自分では勝てないだろうと納得出来る威圧感がある。全員に勝てず、特にメアリーに勝てるイメージがまったく湧かない。奇襲、罠、正面戦闘、どの手段を用いても勝てないだろう。戦った事は無いが、何となく分かってしまう。ただサーカスと出会う前なら分からなかっただろう。
(さて、今回の編成はどうしようか? 近接戦をする人は誰でもいい。魔法を使う人と牽制が出来る人が重要だ。ブーヴィンは確定だな。後一人は誰にするか……)
「あと十五分」
魔法使いの人の情報を聞いただけで五分も使ってしまう。
(後一人……後一人は……いや、一度諜報部隊の能力を聞こう。牽制する人を選ばないと)
「諜報部隊で牽制や戦闘を行っている人は自己紹介をお願いします」
「では私から。サーラと申します。針の投擲による牽制が主な役割です」
サーラと名乗った女は、低めの身長と短い髪が特徴的で、腕と腿に何本のも針を忍ばせている。
(今度教えてもらいたいな。けど今回の試験では使えないかな)
「次は僕ですね。名前はデニス。僕は様々な移動術によって相手の視線を自分に向けたり、相手の視覚から消えたりして相手の気を散らす事が得意です」
デニスと名乗った男は、高めの身長と細い体の人物。
「移動術?」
「はい。少し見せましょうか?」
「……お願いします」
「分かりました」
そう言ってデニスは少し体勢を落とす。その状態から歩き始め、こちらに近づいてくる。
「僕に触ってみてください」
「分かりました」
徐々に近づいてくるデニスに触れようと手を伸ばす。しかし手は空を切る。
(あれ? 確実に届くと思ったんだけど……?)
「今のは自然と動きに緩急をつける事で相手に間合いを測らせない技です」
「なるほど。そういった技が使えるのですね」
「はい」
(……ありかな。少し気を散らせる事が出来るのは大きな。けど通用するかな? 試してみないと分からないな……。けどまあ候補かな)
「私はノーシです。私も一応戦闘系ですが、どちらかと言えば暗殺なのですが……」
ノーシと名乗った女は、小柄で腕とかは非常に細く、本当に殺せるのか疑問な程である。
「うーん。暗殺か。……一応聞いておこうか」
「分かりました。私は足音や気配を消して近づいて、ナイフで殺すのが基本なのですが……」
(暗殺特化か……。今回はあまり使えないかな)
「なるほど」
「あと十分です」
もう残りの時間が半分しか残っていない。その後は作戦を考える時間を惜しんで編成を考えた。その結果ブーヴィン、デニス、メアリーとシルクとジュークを編成する。
シルクは遠距離攻撃部隊で最も早く弓を連射出来る為、編成した。
ジュークは物理部隊の格闘家でとても速いラッシュと、溜め時間が長いが威力の高い一撃を使い分けれる人物だ。
この編成でガンズに挑む。しかしまだ作戦は考えていない。戦いながら作戦を考えなくてはいけない。
(さて、この編成で勝てるかな? けど今回は僕も参加出来るし、何とかなるかな? まあ、試してみれば分かる事か……)
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