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嗤う道化は殺されない  作者: からう
笑わぬ子供は道化に至る
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笑わぬ子供の戦い方・Ⅰ


 朝起きる。今回はいつの間にか天井を見上げていた訳では無く、久しぶりに自分の意思でベッドに入り眠る事が出来ていた。その為非常に気持ちのいい朝であった。部屋を見回すと端に黒い人影が座っている。


「クライス」


 影従クライスを呼ぶ。部屋の隅で待機していたクライスが立ち上がる。何度見ても異常な姿に驚くが、努めて冷静に対応する。


「クライス。潜め」


 潜めと命令すれば姿は薄くなっていき、最終的にはまったく見えなくなる。


「<視覚共有>」


 クライスが何を見ているのか視覚を共有しようとするが、それは出来ない。


「入るぞ。ラクーン」

「どうぞ」


 部屋の中にガンズが入ってくる。


「さて、昨日はよく眠れたか?」

「それは勿論」

「では早速剣の訓練に行こう。まずは今の実力から把握せねばならんからな」

「分かりました。クライス。付いて来い」

「随分使える様になったじゃないか」

「まだ視覚の共有は出来ませんがね」

「それは難しいらしいからな。まあ俺は魔法なんて使えないから知らんが」


 そんな会話をしながら庭に出る。


「さて、お前の武器は何だったか?」

「<魔力武装・サーベル>」

「そうだった。サーベルだったな。じゃあとりあえず俺の剣を防いでみろ」

「分かりました」


 ガンズはそう言って普通の剣を構え、振る。その剣を受けようとサーベルを構える。剣とサーベルが当たるとサーベルが折れる。


「なるほど。次は俺に攻撃してみろ」

「はい」


 サーベルを作り直し、サーベルを全力で振る。しかしガンズは簡単に受け止めてみせる。


「なるほど。分かった。これは基礎の基礎からだな」

「……基礎?」

「まず基礎ができとらん。守りに技術も無く、攻撃は力任せだ。サーベルは片手で持つ武器なのに剣を立てて防御してどうする。片手で両手の剣を止めれる訳無いだろ。サーベルでの防御は止める防御じゃ無い。軌道を変える防御だ」

「軌道を変える?」

「相手の剣を止めるのでは無く、サーベルを相手の剣の腹に当てて攻撃を躱す。剣を斜めにして相手の剣を滑らせる。それが片手武器の防御だ」

「なるほど」

「攻撃は出来るだけ突きを使え。サーベルは突きも斬撃も出来る武器だから、突いてから相手を追う様に斬れ」

「わかりました」

「じゃあもう一回防御だ。やってみろ」


 そう言ってガンズは剣を振る。それに合わせてサーベルで防ぐが上手くいかない。


「もう少し角度を付けろ」

「はい」


 何度も防御し、何度も失敗する。


(……この防御を覚えても多分使えない。それにこれは剣単体での戦い方だ。この防御法と魔法攻撃は同時に使えない。それじゃダメだ)


 闇の魔力をサーベルに流し、黒いサーベルを作り出す。


「いきなりどうした? まだ剣の訓練中だぞ?」

「<魔力黒装・サーベル>」


 黒いサーベルを振る。するとサーベルが通った所に黒い残像が出来る。どれだけゆっくり振ろうと出来上がる残像。途中でサーベルの軌道を変えると残像は残らず、最初の軌道に沿って残像が作られる。


「なんだ? その剣は?」

「いえ、闇属性に魔力を変換出来る様になったので、魔力武装も進化させてみました。かなり面白い性能になりましたね。それと防御面は多分もう大丈夫です。攻撃に移りませんか?」

「まともに防御出来ないのに何言ってる」

「防御は後にしませんか? それに剣で防御する必要は無いでしょう?」

「何をする?」

「クライスは、影従は自由に行動させる事が出来る。そして影従は不滅。だったら新しい籠手の形をした影従を作ろうと思うんですよ。けど影従は人型だから……そうだな……影装。うん。意識を持った闇の武装。影装を作ってみようと。闇魔法<影装>」


(イメージするのは籠手。自分の意識を持った闇の籠手。防御出来ない所には闇を伸ばして防御する。クライスよりも大量の魔力を籠手の形に。意識を持った籠手を作り出せ)


 闇の魔力が術式を通して左前腕に集まっていく。爆発しそうな量の魔力が集まっていく。それでも魔力はまだ集まり続け、ついに完全に前腕を覆う。前腕を覆って終わりかと思ったら全ての魔力は一度手の甲に集まり、そこからもう一度ゆっくりと前腕を覆っていく。全体を覆った闇は非常に濃く、大量の魔力を消費しただけの事はある。手の甲にはクライスの顔の様な模様がある。手の甲の端から端まで鋭い歯のような物が見えている。


「それは……クラーク! クラーク! ちょっと来い」


 ガンズはクラークを呼ぶ。するとすぐにクラークが屋敷から出てくる。


「どうしました? ガンズ」

「あれを見ろ。何だあれは?」


 ガンズはラクーンの左腕を指差す。


「凄い事になってますね。ラクーン君。なんですか? それ」

「影装です」

「影装?」

「影従を作るみたいに意識を持った籠手を作ってみました」

「影従……クライスは近くにいる?」

「いますよ。クライス」


 クライスを呼ぶとすぐ隣にクライスが現れる。


「いるんだ……。じゃあやっぱり影従とは別なんだね」

「どういう事です?」

「影従っていうのは一人一体しか作れないんだよ。だから君の影従とその……影装が同時にあるっていうのは面白い状況なんだよね。ガンズ。この影装の性能を知りたい。攻撃してみてくれ」

「おうよ」

「影装……名前何にしよう。そうだな……とりあえず性能を見てからかな」

「じゃあ攻撃するぞ」

「はい。攻撃を防げ」


 ガンズが剣を振る。すると影装は動きだす。手の甲にある口が動きだし、剣に噛みつく。


「今度は連続で攻撃するぞ」

「はい」


 ガンズが連続で剣を振ると、そのすべてに反応して攻撃を防ぐ影装。


「じゃあもっと難易度を上げよう」

「はい」

「剣技<三刃>」


 ガンズが剣を振ると斬撃は三つに分かれ、攻撃してくる。それに対し影装は三本の闇を出し、全ての斬撃に噛みつく。


「なるほど。では次が最後だ」


 そう言ってガンズは黒い大剣を持ってくる。


「あの。その黒い大剣と先ほどの剣技って何ですか?」

「この大剣はアダマンタイトで作られた大剣だ。剣技は剣を極めると使える、剣の魔法だ」

「なるほど」

「では行くぞ」

「はい」


 ガンズは黒い大剣を構える。


「剣技<山返し・逆山>」

「防げ」


 ガンズが狙ったのはラクーンでは無く、影装でも無く地面。にもかかわらず衝撃はラクーンにも届く。その衝撃は前にブリューデンが大剣を振った時とはレベルが違う。あの衝撃が枝で軽く殴られた程度に感じるほどの衝撃。それに対し影装は口を大きく開け、衝撃を喰う。何個にも分裂した口が衝撃を喰っていく。

 衝撃が止むと地面が抉れていた。ラクーンが居る場所を除き。

 影装を見るとかなり弱っており、闇が薄くなっていた。


「凄いな。俺の技を喰ったのか……」

「衝撃を喰う影装。ラクーン君。今度は僕が魔法を撃ってみます。影装で防いでください」

「ちょっと待ってください。かなり弱っています」


 影装はもう闇を伸ばす事が出来ない程弱っている。


「なるほど。どうやら限界はあるようですね」

「まあ、あれを防いだんだ。十分な性能だろう」

「ですね。じゃあ少し休憩をして、影装が回復してから魔法を撃ってみよう」

「……よし。じゃあ影装の名前はイーターだ」

「決めたのか。良いんじゃないか?」


 それから三十分程休憩する。


「さすがに回復したな」

「では魔法を撃ちましょう」

「はい。イーター。喰え」

「光魔法<フォトン>」


 クラークが魔法を撃つ。それに反応して魔法を喰うイーター。魔法を完全に防いでみせる。

 

「じゃあ次だ。光魔法<リフレクションフォトン>」


 クラークが撃った光はラクーンを外れ、ラクーンの後方で反射する。そんな後ろからの攻撃にもイーターは反応し、光を喰う。


「じゃあ次。光魔法<ライト>」


 クラークはライトを発動する。イーターはライトに反応しない。


「反応しないね。じゃあライトを喰うよう命令してみて」

「分かりました。イーター。ライトを喰え」


 その声に反応しイーターはライトを喰う。


「これは食べるんだね。次が最後だ。ラクーン君。ライトを使ってみてくれ」

「分かりました。光魔法<ライト>」


 これには反応しない。


「なるほど。<ライト>」


 クラークが発動するとイーターは反応し、ライトを喰う。


「なるほど。ラクーン君のライトには反応しないが、私のライトには反応する。それも二回目から。つまり学習していますね」

「どう思う? クラーク」

「これなら防御は後回しで良いんじゃないか?」

「そうだな。それにあのサーベルも気になるしな」


ここまで読んで下さってありがとうございます。

面白いと思って頂けたら嬉しいです。

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