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嗤う道化は殺されない  作者: からう
笑わぬ子供は道化に至る
23/35

笑わぬ子供と属性魔法

クラークの一人称を私に変えました。


 目が覚めると自分の部屋の天井を見上げていた。


(また負けた。まだ勝てない)


 自分はブリューデンに負け、気を失ったのだと理解し、悔しくなる。


(二度負けた。今のままじゃ勝てない。それじゃ僕は自由に戦えない。僕は強くなって沢山戦いたい。今、手が届く所にチャンスがあるのに、手を伸ばす事が……出来ない……)


「どうした? そんな泣きそうな顔して。旨い話を持ってきてやったのに」

「ガンズさん? どうして……」


 いつの間にかガンズが隣にいる。


「俺もいますよ」

「昨日は残念だったね。ラクーン君」

「カルードさん。クラークさん。どうやって?」

「そりゃクラークの魔法に決まってるだろ」

「闇魔法<ハイド>闇に紛れ姿を隠す魔法です」

「なるほど……便利ですね」

「……ラクーン殿も……」

「カルードさん。僕をサーカスに入れてください」


 ベッドから起き上がり、カルードに頼み込む。


「どうして?」

「僕は戦うのが楽しい。もっと戦いたい。けど今のままじゃブリューデンに勝てない。ブリューデンに勝たないと僕は自由に戦えない。今より強くならないといけない。だからサーカスに入れてください」

「……サーカスに入れる事は出来ない」

「そうですか……」

「それは明確なルールがあるから。けど代わりの案を持ってきた」

「代わりの案?」

「ラクーン君。君は気づいていないだろうが君は確実に成長している。それも非常に珍しい成長の仕方を。私達からすれば君はまだまだ弱い。そして君の父親も私達からすれば弱い。昨日の戦いを見て分かった。君の父親は身体能力と才能のみであの強さで、君はまだ自分に合った戦い方を自分のものに出来ていないし、戦いの技術も身についていない。けど零の君を百にする力を、力を君は知らぬ間に身に着けた。それは私と同じ魔法の力。非常に希少な光属性魔法と闇属性魔法を使えて初めて使える様になる魔法。夢幻魔法を。その使い方を、剣を、戦いの知識を教えましょう」


 クラークからの衝撃の言葉を受け驚いていた所に、さらに驚くような、願ってもないチャンスが訪れる。


「よろしくお願いします」

「厳しいですから覚悟してください。それではメアリー。入ってきてください」

「はい……決まりました……?」


 入って来たのは少し赤みがかった長い黒髪と真っ黒な服で掠れた声をした女性。その声はどこか不気味で、綺麗な顔なのにどこか怖い。


「ラクーン君。こちらはメアリーだ」

「サーカスで呪術師をやっているわ。今回は貴方の身代わりを作りに来たわ」

「身代わり?」

「君は今後少しの間私達の仲間として生活してもらう。その間君が居なくなった事に気付かれない様身代わりを用意する」

「髪を一本頂戴」


 素直に髪を一本渡す。


「これをこうして……。うん。出来た。はい」


 髪を人形の中にいれる。そして人形にラクーンと書かれた紙を貼り、紙の貼られた人形を渡してくる。


「えっと……」

「後は貴方が魔力を込めたら完成よ」

「分かりました」


 言われた通り魔力を込める。すると急に動きだし、喋り始める。


「やあ。カルードさん。こんにちは」


 その声はラクーンと同じであった。


「貴方はラクーン。これからブリューデンに従ってね」

「分かりました。メアリーさん」

「これは……」

「これが君の身代わりになる。あとはこれに夢幻魔法を掛ければ完成だ。夢幻魔法<認識錯覚> これで君の父親や屋敷の人物はこれがラクーン君だと思って疑わなくなる。最後に君にも魔法を掛けておこう。夢幻魔法<認識阻害> これで君をラクーンだと認識できる人物は限られた。では行こうか」

「はい」


 クラークやカルードに付いて行くと庭に出る。


「今日からはここで訓練をする。一日ずつ交替で教えていく。今日は魔法、明日は剣、明後日は弓、その次は魔法と言う様にな」

「では今日は夢幻魔法ですか?」

「いや今日はその前。光属性魔法と闇属性魔法から」

「分かりました」

「それじゃクラーク任せたぞ」

「任せてください」


 そうしてクラーク以外のメンバーは屋敷に入っていく。


「それでは始めましょうか」

「お願いします」

「まずは今の現状の説明から始めようか。君は光と闇の術式を知ってる?」

「知りません」

「だろうね。夢幻魔法の術式も知らないでしょ」

「知りません」

「君が発動……いや、無意識で暴発した夢幻魔法はひどく不安定なものだ。黒い人型の靄がその時の感情に任せて動いているだけで、夢幻魔法とは言えないし、どちらかと言うと闇魔法に近い感じだ。本来はどんな夢や幻を見せれる夢幻魔法が正しく発動していない。理由は三つ。一つ目は君が自覚していなかったこと。二つ目は光属性も闇属性もまだ使えないこと。三つ目は夢幻魔法の術式を使っていないことだ。一つ目の自覚についてはもう少し時間が掛かるかもしれないけど、何れ必ず自覚できるから問題ない。だから今日は二つ目の光属性と闇属性の、特に知識から学んでいこう」

「分かりました」

「君はどこまで知っている?」

「簡単な概要だけです。光属性は高い攻撃力を持つ魔法だと聞いています。闇魔法は姿を消したり出来る支援特化魔法だと聞いています」

「うん。間違ってないね。他の属性魔法は使える?」

「使えません」

「じゃあ属性魔法の術式から説明しないとね」

「お願いします」

「属性魔法の術式は属性によって形が違う。火属性はスペード、水はハート、風はクローバー、地はダイヤ、光は星、闇は普通に丸だ。術式によって形が違うから難易度も違う。光が一番難しくて、風、火、水、地、闇の順番で簡単になっていく。ちなみに夢幻魔法は丸の中に星がある形をしているよ」

「なるほど」

「強化魔法は使えるよね?」

「使えます」

「使ってみて」

「分かりました」


 言われた通りに使ってみる。少しだけ変な感じがする。


「うん。やっぱり制御できてないね」

「何か変な感じです」

「それが分かるなら良い方だね。いいかい? 属性魔法っていうのは魔蔵器官(まぞうきかん)……ああ、心臓の横にある魔力の出所ね」

「魔蔵器官って言うんですか。初めて知りました」

「魔蔵器官っていうのは四つの機能を持っているんだ。一つ目は魔力を溜める機能。二つ目は魔力を作る昨日。三つ目は魔力を放出する機能。四つ目は魔力を変換する機能。属性魔法っていうのは四つ目の魔力を変換する機能が機動すると使える様になるんだ。生物は誰でもこの器官を持っていて、色々な要因によって四つ目の機能が使える様になるんだ。けどこの器官は最初は全ての魔力を変換してしまう。それだけなら良いんだけど君は二つ属性を持っている。だからその機能が上手く稼働していない。だから強化魔法を使った時に違和感を感じるんだ」

「昨日は感じなかったのに……」

「それは自覚したからだよ。頭がその機能を自覚したから頭が勝手に使ってしまっているんだ。だからとりあえず今日はこれの制御だね」

「分かりました。……あの、一つ聞いて良いですか?」

「うん? どうしたの」

「先程身代わりに夢幻魔法を使った時術式を使ってませんよね? どうやったんです?」

「あれは私の癖だね。いつも通り術式を隠して展開してるんだ。たとえばこんな風に」


 そう言って舌を出すクラーク。その舌の上には夢幻魔法の術式が展開されている。


「なるほど」


「それじゃ話を戻して魔蔵器官の制御の話だ。とりあえず闇属性の魔力に変換出来るようになろうか。じゃあそこに座って」


 言われた通り座る。


「それじゃイメージしながら魔力を出してみよう。イメージするのは闇魔法」


 (イメージは闇。黒くて不気味な闇。先は見えず、自分の手すら見えない。何も無いかもしれなくて、何かあるかもしれない闇。イメージするのは何も見えない闇)

 

 それをイメージした瞬間、一気に魔力が変わり、放出されるのが分かる。目を開くとそこは何も見えない黒い空間だった。自分の手すら確認出来ない。


「光魔法<白夜>」


 クラークが光魔法を使う。光は一瞬闇を照らし、闇に飲み込まれ、光は消えてしまう。


「な! すぐに魔力を出すのを止めるんだ。ラクーン君」

「……」


 ラクーンは目を開け、手を少し確認した後から意識が無かった。大量の魔力を急激に放ち、魔力を制御する事が出来なくなってしまった。そして魔力は尽きかけ、意識が無くなってもまだ魔力は放出され続ける。

 反応が無い事から意識を失っていると判断したクラークは魔法を発動する。 


「光魔法<神界>」

 

 その魔法は全ての闇を消し飛ばし、一瞬世界から色が消える程の光。意識が無くなっていたラクーンが一瞬意識を取り戻す程の光。クラークはその魔法を放つと一瞬でラクーンに近づき、気絶させる。


「クラーク! 何があった!」


 ガンズが焦った様子で出てくる。


「すいません。ちょっと魔力を使いすぎました。休みながらで良いですか」

「かまわん」

「すいません」

「クラーク! 何がありました! さっきのは神界では?」

「落ち着けカルード。神界の反動は知っているだろ? 少し休ませよう」

「いえ、かまいません。かなり予想外の事態です」

「何があった?」

「ラクーン君が魔界を発動しました」

「な! あれは加護が無いと使えないだろ! お前の神界と同じ様に!」

「まさかラクーン殿が闇の神から加護を貰っていたのですか!?」

「いえ、それは無いでしょう。加護があっても発動出来ないでしょうし」

「だったら何故!」

「多分ですがラクーン君の考え方が闇の神に近く、ラクーン君のイメージした闇が彼女の居る場所に近かったのです。そして魔力が暴走して放出された事で偶々、偶然発動したのでしょう」

「それは……。少し見誤りましたかね」

「これを予想するのは無理でしょう。明日は休ませながらラクーン君の考え方などを聞くべきです。その結果次第で今後の方針を決めましょう」

「確かにそれが一番だ」

「それが良さそうですね」

「出来ればラクーン君にポーションを飲ませてあげてください。あの短時間でも魔界を発動したのです。魔力はもう無いでしょう」

「それが良いでしょうね」


 カルードはラクーンにポーションを飲ませる。


「後はこの魔法を発動した事でどんな影響が出ますかね……。最悪魔法が使えなくなりますよ」

「そうか……。しかしそれは今考えても分からない事だ。まずはラクーンをベッドに運ぼう。カルード。そっちを持て」

「分かりました」


 カルードとガンズがラクーンを屋敷に運び、クラークはその場で少し休んでから屋敷に入る。



ここまで読んで下さってありがとうございます。

面白いと思って頂けたら嬉しいです。

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