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嗤う道化は殺されない  作者: からう
笑わぬ子供は憧れる
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笑わぬ子供は道化に憧れる

書くの大変でした。ただ書いていて楽しかったです。


 サーカスが屋敷に来てから四日経った。サーカスのメンバーの怪我は腕と足を失っていた人以外完治した。その間カルードやクラーク、他のメンバーと話し、大分仲良くなった。


「カルードさん。調子はどう?」

「ヴィザの怪我も完治しましたし、アデスは片腕は失いましたが、もう動ける様なので大丈夫です。治療から食事、屋敷まで何から何までありがとうございます」

「まあ後で怒られると思うけど、それはそれで楽しみだし、今度戦ってくれるなら良いよ」

「ははは……。この調子ならもう少しでサーカスを出来そうです」

「楽しみにしておくよ」


 カルードと別れ、セイデンに会いに行く。セイデンがいる部屋に入ると久しぶりにブリューデンに会う。ブリューデンは右目に眼帯をしている。


「あれ? もう怪我は大丈夫なの?」

「……何だその言葉使いは。……聞いてはいたが変わったな」

「そう? けど今の方が楽しいよ」

「……そうか。それで? あの大量の人を屋敷に上げ、住まわせている理由はなんだ」

「多分だけどサーカスの皆さんはブリューデンより強いよ。特にガンズさん。あの人は血の筋肉を使ったブリューデンより素で身体能力が高いよ。カルードさんは力より技術が凄そうだ。他の皆さんも全員強いよ。戦ってみたすぎるでしょ。戦える時が楽しみで楽しみで仕方ないから囲っておいてるの」

「……」

「……大規模な被害は出さないでくださいよ」

「大規模な被害が出るほどの戦闘にもならないから大丈夫だと思うよ?」

「……そうですか……」

「そろそろ訓練が始まる時間かな。そろそろ行ってくる」

「……どうぞ」

「……」


 ラクーンは部屋を出て、サーカスのメンバーが訓練をしている庭を見に行く。

 庭に出るとサーカスのメンバーが数個のグループに分かれて訓練している。剣を使うグループ、魔法を使うグループ、弓を使うグループ、魔法を使うグループに分かれて練習している。ラクーンはその訓練を外から眺める。ただ見て覚える。


「そんなに集中して見て得るものはありますか?」

 

 カルードが話しかけてくる。


「ありますよ。特に剣。僕には剣の師はいませんから我流です。我流である以上、長年の重みはありません。けど我流は発想次第でどんな戦い方を、自分に合った戦い方が出来ますから。全ての動きを覚えて、使えればより強くなれますから」

「そうですか。参加しますか?」

「やめておきます。まだ貴方達の訓練に入っていって学べる程の強さでは無いので」

「そうですか」


 そう言ってカルードは訓練に戻っていく。

 その日の夜、サーカスのメンバーと食事をしていると、サーカスの日程についての話になる。


「サーカスいつやろうか」

「傷は完治したけど許可がな……」

「ああ、人がいる方での活動許可ですか? なんなら僕が話しましょうか?」

「……それには及びません。サーカスの許可は俺がとります」

「そうですか。力が必要になったら言ってくださいね」

「ありがとうございます」


 それから二日後、サーカスの日程が決まる。


「ラクーン殿、サーカスが三日後に決まりました」

「おめでとうございます。見に行きますよ、カルードさん」

「特等席を用意しますよ」

「それはもっと楽しみになってきました」

「ただドワーフ街での開催が残念です」

「まあ、人はドワーフ街に自由に入れますから、噂を聞きつけて来る人はいるんじゃないですか」

「だと良いのですが……」


 三日後……


 ドワーフ街で開けた場所に大きな赤と白のテントが張られている。テントの中は真ん中に円形の舞台があり、左右には舞台袖があり、席は舞台を囲う様に設置されている。席は後ろの方が少し高い位置にあるようだ。人は思っていたよりも入っており、すでに八割の席が埋まっている。ラクーンは一番前で真正面の席に座り、サーカスの始まりを待つ。

 

 三十分後、サーカスが始まる。席は全て埋まっている。


「お待たせしました。サーカスの始まりです。それではお楽しみください」


 カルードの始まりの簡単な挨拶が終わると、クラークがダボついたカラフルな服を着て、いつも以上に気合を入れたメイクを施して登場する。

 クラークは軽くお辞儀をし、舞台袖から三つのボールを投げ渡される。ボールの一つを一瞬掴み上に投げ、二つを受け取り、片方のボールを投げる。ボールが空中に浮いている間にもう一つボールを投げ、ボールを手から手に投げ渡し、最初に投げたボールを受け取り、またボールを投げる。そんな風にボールを回していると舞台袖からボールが投げられる。投げられたボールを上手くキャッチし、回すボールの数が四つに増える。すると今度は連続で五個もボールを投げられる。それは取りきれず、ボールを全てわざとらしく落とす。わざとらしくバランスを崩して転ぶクラーク。するとすぐに起き上がり、少しムスッとした感じをみせる。すると舞台袖から今度はナイフが投げられる。そのナイフを掴み、不思議そうな感じをしていると、ナイフを投げたのとは反対の舞台袖からリンゴが投げられる。しかしリンゴは普通に地面に落ちる。それからクラークは閃いたという感じを出す。すると先ほどと同じ舞台袖からリンゴが投げられる。そのリンゴ目掛けてナイフを投げる。ナイフはあらぬ方向へ飛んでいき、リンゴから外れる。もう一度舞台袖からナイフが投げられ、それをキャッチするクラーク。ナイフを受け取り、反対の舞台袖に狙いをつけ、ナイフを構える。しかしリンゴが投げられたのは先ほどとは違い、ナイフを渡した方だった。それに反応したクラークはナイフを投げる。するとナイフは舞台袖側から刺さっていた。投げられたリンゴは普通だった。なのに投げられたナイフは逆側に刺さっていた。舞台袖からナイフは投げられていない。おかしいと思い、もう一度リンゴを見るとナイフが刺さったリンゴが舞台に落ちる。リンゴは落ちて舞台に当たった瞬間、リンゴもナイフもクラークも舞台から消える。


(何だ!? 今の……。今のが夢幻魔法? いつ魔法を発動してたんだ? まったく分からない。面白い。使ってみたい……)


 そう思った瞬間、何か心臓の横が熱くなった気がした。


 次は何がくるのかと楽しみにしていると、またクラークが出て来て指を鳴らす。するとクラークは消え、舞台も大きく変わり、幾つかの輪があったり、何か横に細長いく少し高さのある物が置いてある舞台に変わる。舞台袖からカルードが出て来て次の演目の簡単な説明を行う。


「次は動物達が障害物を綺麗に跳ぶ動物芸です」


 舞台袖から派手な格好をした人が出て来て、軽くお辞儀をし、赤い術式を展開し、火属性魔法を発動する。発動された魔法は空中で動き回る。一通り動かすと輪などに当て、道具に火をつける。火をつけ終わると派手な格好をしたサーカスの人は舞台袖に帰り、反対から動物に乗った人が六人程登場する。動物は馬や虎がいる。


(どうやって連れて来たんだ? 不思議だな)


 まずは人を乗せた馬が火のついた物の上を飛び越える。順番に三騎飛び越えると、今度は人を乗せた虎が火がついた輪を潜り抜ける。その間に馬が二騎と一騎に分かれ、何かを挟むように移動した馬三騎が同時に何かを飛び越える。今度は虎が人を下ろし、輪を一回転して潜り抜ける。


(凄いな……)


 動物が火の中を飛んだりする芸が終わる。舞台袖からカルードが出て来て次の演目の説明を行う。


「次は空中芸です。綱渡りや空中ブランコを行います」

 

 カルードの言葉が終わるとすぐに動物芸の時に使っていた道具を片付け、上の方にロープを一本掛ける。そのロープの上を人が歩く。


(すごいバランス感覚だな……)


 見事ロープを渡ると、今度は四方から二本のロープで棒を水平にした物が宙に吊るされる。その棒に人が掴まり、腕だけで体重を支えている。


(これが空中ブランコってやつか? 凄いな……凄い握力だ。戦ってみたいな。戦いたいな)


 棒に捕まっている人は足を振り、四人全員が別々に前後に動き始める。しっかりと勢いをつけると一人が手を離し、反対側で動いていた人が受け止める。二人が後ろに行ったタイミングでもう一人が手を離し、片方が受け止める。最初に飛んだ人とそれを受け止めた人が手を離し、最初に飛んだ人は元の場所に戻る。もう片方も同じように元の場所に戻り、また勢いをつける。今度は二人が同時に手を離し、空中で手を取り合い回転したあと手を離し、場所を入れ替える。最後は四人全員で同時に手を離し、綺麗に地面に着地する。


 それが終わるとカルードが登場する。


「次が最後の演目です。最後は最も迫力のある演目です。最後までお楽しみください」


 カルードがそう言った瞬間、カルードの後ろに巨大な足が六本ある亀のモンスターが現れる。


「きゃあああ!」「ひぃ……」「こ、殺される」

「ご安心ください。これは模型ですので攻撃はいたしません」


(違う。絶対違う。無機質な感じじゃ無い。本当にそこに存在してる様な圧倒的な迫力……。なるほどこれも夢幻魔法か。凄い。ただ凄いな……)


 今まで感じた事の無い迫力。今まで感じた事の無い絶望感。絶対に勝てない、そんな存在を魔法で再現できる夢幻魔法に、クラークに凄いと言う言葉しか出なくなる。


「この亀はタラスクというモンスターの模型です。我々サーカスがタラスクと戦った時の演目が最後でございます」


 カルードがそう言い舞台袖に消えると、舞台袖から十人程が舞台に出て武器を構える。そうして全員が構えるとタラスクは動き始める。

 タラスクは六本ある足で踏みつける攻撃を繰り出す。それを上手く躱し攻撃に転じるサーカスのメンバー。剣がタラスクに届くと思ったその時、タラスクは足と頭を甲羅の中にしまい、回転する。回転する甲羅に剣がぶつかり、剣は弾かれる。すると舞台袖からまた十人程出て来て今度は魔法を撃つ。様々な属性の魔法が放たれる様子は非常に綺麗だった。魔法が当たっても回転し続けるタラスクに対し、舞台袖から黒い大剣を担いだガンズが出てくる。黒い大剣を構えタラスクに振る。黒い大剣は横に逸れる。しかしガンズはそこからタラスクを切り上げ、上に飛ばす。タラスクが飛んだ先には空中ブランコに捕まったカルードがいる。勢いをつけて空中ブランコから手を離し、タラスクに向かって飛ぶ。空中で緑色の短剣を取り出し、タラスクを切りつける。するとタラスクの甲羅が削れ、本体が見えてくる。そのまま地面に落ちるタラスク。落ちてくるタラスクを待ち構えていたガンズが黒い大剣を振り、首を落とす。首が飛ぶとタラスクは全て消えてなくなる。


「これにてサーカスは終わりです」


 舞台袖からサーカスのメンバー全員が出て来て輪になる。


「ありがとうございました」


 全員がお辞儀をし、サーカスは終わる。サーカスが終わると観客から歓声と拍手が送られる。


(凄い。次元が違う強さ。何よりも夢幻魔法の凄さ。凄い凄い凄い凄い凄い! 凄いな……。あんな魔法を使いたい。あんな道化師になりたい。全て計算通りみたいなあんな風になりたい。あんな風にいつから相手に悟られず計画を、魔法を使う道化師になりたい)


 そう思った瞬間、心臓の横は非常に熱くなる。

 

(あんな風な道化師になりたい)


 初めての感じる感情は、初めての夢は、初めての憧れは『道化師』に……


ここまで読んで下さって本当にありがとうございます。これにて一章は完結です。

面白いと思って頂けたら嬉しいです。評価や感想、ブックマークなどして頂けるともっと嬉しいです。

二章もよろしくお願いします。

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