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嗤う道化は殺されない  作者: からう
笑わぬ子供は憧れる
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笑わぬ子供の変化の日・Ⅵ

ラクーンの口調が安定しないのは仕様です。

 大穴からアガルタ内に入ったラクーンは、ブリューデンとセイデンに見つかり、戦闘が始まろうとしていた。


「ラクーン。大人しく捕まれ。俺達二人には勝てないぞ」

「確かに二人に勝つのは難しい」

「だったら大人しく捕まれ」

「けど、一人は殺すさ。一人でも殺しておけば、捕まった後、脱出するのが楽になる」

「そうか……残念だ」


 心底残念そうな顔をしたブリューデンは、血の魔法で大剣を作り出し、構える。

 セイデンは無表情で腰に携えたサーベルを抜き、構える。

 ラクーンは血の魔法でサーベルを右手に作り、左手に魔力武装で針を作る。


「それがセイデンの武器? 僕と同じか。父上は大剣か……合ってるね。これなら全力で楽しめそうだ」

「楽しむ? 俺達二人をなめてるのか?」

「いやいや。なめてないから楽しめそうだと思ってるんだよ。今までに無く本気で戦っても勝てるかどうか分からない相手と全力で戦えるんだ。楽しみじゃない訳ないだろ?」

「ふん。楽しむ隙もなく捕まえてやる。いくぞセイデン」

「勿論です」


 三人が武器を構え、戦闘態勢が整うと、数秒誰も動かず、見合う。

 最初に動き出したのはセイデン。セイデンが動くと、ラクーンは左手に持っていた針をブリューデンに投げる。セイデンの後ろから攻撃しようと考えて動こうとしたブリューデンは、ラクーンが投げた針を防ぐために動きが止まり、出遅れる。ラクーンが針を投げた隙に、セイデンはラクーンに近づき、サーベルを振る。


「ふっ!」


 ラクーンは、近づいてきたセイデンが振ったサーベルを、右手に持ったサーベルで防ぐ。ラクーンとセイデンの持ったサーベルがぶつかり、ギリギリと音を立てながら鍔迫り合いになる。しかし、力はセイデンの方が上の為、徐々に押されていく。


「チッ!」


 力負けすると察したラクーンは、左手をセイデンの腹の近くに構えて、魔法を発動するふりをする。ラクーンの左手が近づいた事に気づいたセイデンは、体勢を低くしながらラクーンから見て右方向に飛ぶ。セイデンが右に避けると、セイデンに隠れて近づいていたブリューデンが大剣を構えていた。ブリューデンが体重を乗せて、大剣を振り下ろす。


「<ショット>」


 ラクーンは構えていた左手の向きを変え、大剣の腹に向けて、威力に特化した魔法を撃ち、大剣の軌道を変える。


「うおっ!」


 大剣の腹に魔法を受けて大剣はラクーンから見て右に逸れる。大剣が逸れた先にはセイデンが居る。ラクーンは好機と思い、セイデンに向かってサーベルで突きを放つ。

 普通ならセイデンは、ブリューデンのカバーの為にラクーンに近づきながら大剣を躱す。しかし、ラクーンが突きを放った為に、ラクーンが居る方へ回避出来ず、ラクーンから距離を離す様に回避する事を余儀なくされた。セイデンが離れるように回避したのを見たラクーンは、逸れた大剣が地面にぶつかった事で大きな隙を見せているブリューデンの首に向かってサーベルを振る。ラクーンの持っているサーベルが、自分の首に近づいているのを見たブリューデンは、大剣から手を離してサーベルを回避する。ブリューデンが大剣を手放した事を見たラクーンは、大剣の持ち手部分を蹴り大剣の向きを変える。


「ふっ!」

「くっ!」


 大剣の向きを変えた事で、ブリューデンは大剣を回収する事が出来ず、大剣は血に戻ってしまう。大剣を失ったブリューデンを攻撃しようとしたラクーンだったが、セイデンがブリューデンの前に立ち、カバーに入った為、攻撃を止める。セイデンがカバーに入ったタイミングで、ブリューデンは血で大剣を作り直す。

 ブリューデンが大剣を構え、セイデンがサーベルの先をラクーンに向け、構える。ラクーンは左手に血の針を二本作り、サーベルを構える。

 数秒見合い、先に動いたのはセイデン。セイデンはブリューデンの前に立ち、サーベルの護拳に指を掛け、サーベルを回転させながら向かってくる。セイデンを盾にして、ブリューデンも向かってくる。


「<魔糸>+<固定>」


 ラクーンは二本の針を魔糸で繋ぎ、片側の針を持ってセイデンに投げる。クルクルと回転しながら飛んだそれは、セイデンが回転させているサーベルに当たり、魔糸が巻き付く。回転したいたサーベルに、回転している物がぶつかり、絡まった事でサーベルが大きくぶれ、セイデンの手から離れる。手から離れたサーベルは回転しながら右に飛び、転がり、離れた場所で止まる。


「セイデン、良く此処まで接近してくれた。後は俺が捕らえる!」

「お任せします」

「ラクーン、俺はお前を見誤っていた。お前の強さは俺の想像を超えていた。だから、最悪殺す覚悟で挑む。これが俺の覚悟だ!」


 ブリューデンは全身に血の魔法で筋肉を作り、一撃の威力を上げる。ブリューデンは、昼にセイデンの元に駆けつける為、血のストックをほぼ使い果たしていた。残りのストックも大剣を作る為に使い切っていた。全身に血の筋肉を纏わせるには大量の血を使う。全身に纏わせると全血液量の三分の一程血を使う。普通であれば気絶してもおかしくない量の失血だが、気合と慣れで耐え抜き、全身に血の筋肉を纏わせ、全力の一撃を放つ。

 血の筋肉で強化された脚力でラクーンに近づき、全体重をのせて大剣を振り下ろす。


「うおおおおおおおおおおおおおお!」


 ラクーンには回避する時間は無い。しかしそのまま受けると死んでしまう。

 ラクーンは地面に片膝を付き、手と手の間に何本もの血の糸を作り、大剣が振るわれる所で糸を張り、何本もの糸で大剣を防ぐ。血には柔軟性を持たせて切れにくく、柔らかさは最低で大剣を受けれるようにし、大剣を受ける。


「ぐううううううううぅぅぅううう!」


 ズドンと音を立て、大剣と糸がぶつかる。全体重を乗せ、血の筋肉で強化し、元々の力も上の大剣を、血の筋肉で強化していないラクーンで受け止められる筈もなく、大剣の威力に圧され地面に倒れるラクーン。


 ガリリリリリガリガリガリと音がする。ラクーンは地面に倒れたが、血の糸で大剣を受け止め続け、大剣がラクーンに直接当たってはいなかった。


「見事だ。ラクーン。しかし、上に居るのは俺だ。純粋な力も俺だ。このまま押し込んでやる!」


 最初の衝撃にはなんとか耐えたが、その後の力押しにラクーンが勝てる筈が無く、どんどん押されていく。ブチブチと音を立てて血の糸が切れていく。血の糸が切れるごとに大剣がラクーンに迫る。


「これで終わりだ! ラクーン!」


 大剣が血の糸を圧し、止まらず、ゆっくりと倒れているラクーンの右肩に近づいていく。


「怪我はセレスに治させるから安心しろ。安心して捕まれ」


 大剣がついにラクーンの右肩を切り始める。右肩が切られ始めた事で力が入らなくなったか、血の糸を持った右手に力を入れ続けれず、血の糸が手から離れる。


「これで終わりだ!」


 大剣がラクーンの右肩を半分切る。


「終わりぃ? ……一人は殺すって言っただろ? まだ……殺して……無いぞ!」

「もう何もできないさ。もう終わりだ」

「……おらぁ! ……?」


 ラクーンは右腕を切られながら左手でブリューデンの頭を狙い魔貫通魔法を使用する。しかし一切効果は無く、不発に終わる。

 理由を考えるが一つしか思いつかず、それを信じて発動するしかない。


「あれ? 効かない? まあ良いや。じゃあ<魔力武装・槍>」


 ラクーンが狙ったのは目。ラクーンは血の筋肉が魔貫通魔法を防いだと考え、目を狙って槍を作る。狙い通り作られた槍はブリューデンの目を貫通し生成される。片方の視覚を奪え、脳にも近い所に槍を作り出せたのは非常に有利に働く。それに槍がストッパーになりブリューデンの動きを止める事が出来る。


「があああああああああああぁ!」


 後頭部には血の筋肉がある為、貫通する事は無かった。


「ぐぅぅぅっ! ……これを……狙っていたのか」

「その通り」

「しかし、この程度では死なないぞ」

「……知ってる? 魔力が過度に圧縮されると爆発するんだよ」

「それがどうし……まさか!」

「そのまさかだ! 槍の穂先に大量の魔力を流し、圧縮すれば……脳に爆発が届くよなぁ!」


 ラクーンは左手で槍を握り残った魔力を槍に流し、槍の穂先より少し手前に魔力を集め、圧縮していく。


「さあ、後何秒で爆発するかな?」

「……どうやら、まだ覚悟が足りなかったようだ……お前を殺す覚悟はしたが、俺が死ぬ覚悟をしていなかった……血の筋肉解除! このまま槍を貫通させて爆発を躱す!」

「……そう来ると思ったぜ……だから魔力は手前に集めておいた……これで終わりだ!」

「させませんよ!」


 サーベルを回収したセイデンがラクーンの槍を切る。

 魔力の圧縮は、魔力の持ち主が手元でしか行えない。爆破魔法は、術式を展開する事で遠くでも行えるが、ラクーンは術式を使っていない。魔力武装で造りだした槍が術式の変わりになっていた為、魔力の圧縮が行えたが、槍が折れた事で圧縮を行えなくなる。


「セイデン!」

「お待たせいたしました。主様。……これで終わりです。ラクーン様」

「残念だ……殺せないとは……けど……何も成果なしでは終われない! この戦いはまた起きる戦い。負けても死なない戦い。なのに何も成果無しじゃ、狩人として半人前だよなぁ! せめて回復不能な傷の一つくらい不利な状況でもつけなきゃなぁ!」


 ラクーンは左手でブリューデンの頭を握る。


「再起不能になってろ。ブリューデン」


 セイデンが即座にラクーンの左腕を切り落とす。


「ちょいと遅かったな……爆発しろ!」


 ドンと爆発音がした瞬間、ラクーンは意識を失う。



ここまで読んで下さってありがとうございます。

面白いと思って頂けたら嬉しいです。

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