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嗤う道化は殺されない  作者: からう
笑わぬ子供は憧れる
17/35

笑わぬ子供の変化の日・Ⅴ

長くなりました。すみません。

 森の中を進み、いつもの場所に着くと、ロビンが少し不機嫌そうに待っていた。


「やあ、ロビン。かなり待たせたね」

「……本当に待ったぜ。……随分と楽しそうだな? 何があった?」

「いや……試練が明日に決まったから伝えようと思ったんだけど……」

「だけど……?」

「ちょっと本気の戦闘になった」

「もうちょっと詳しく説明してほしいな……」


 簡単に経緯を話す。


「なるほど……つまり、屋敷を出ようとしたら止められて、止められたから戦闘になって、戦闘で怪我人を出した結果、追手が掛かって逃げたと……こういう事だな?」

「大体そんなものだ」

「にしても何でそんなに楽しそうなのかね?普通、家と喧嘩になったらもっと焦ったりするもんだと思うんだが……」

「そりゃ楽しいでしょ。漸く本気で戦って、殺していいんだよ? 楽しく無い訳ないじゃん。個人的にはブリューデン……あ、僕の父親ね。それと戦いたいな。絶対僕より強いもん。それと本気でどこまで戦えるのか気になるし、絶対に楽しくなりそうだ」

「……お前さんは……戦闘狂っぽいな」

「戦闘狂?」

「たまに居るんだ……戦闘が楽しくて楽しくて仕方ないって奴が。戦って強い奴を殺したくて殺したくて仕方ない奴が。お前さんはそんな感じだ。……似てるな……」

「似てる? 誰にだ? 前に言っていた弟か?」

「そうだ……俺が殺してしまった弟だ」

「へぇ……どんな奴だったのか聞かせてくれよ」

「普通はもっと気を使う所だと思うんだがな……」

「気を使って欲しかったのか?」

「いいや、要らない。……長くなるぞ」

「いいさ。すぐにアガルタに戻る訳じゃ無い」

「そうか……じゃあ話すとするか」

「その前にポーション貰って良い?」

「……傷を回復させるのと魔力を回復させるの、どっちだ?」

「魔力を回復させる方」

「ほらよ」


 ロビンは青い液体の入った瓶を投げ渡してくる。


「ありがと」

「それじゃ、話すか。……俺には二つ下の弟が居た。名前はフッドだ」


 アルカディアで生まれたロビンとフッドは仲の良い兄弟として、村では有名だった。

少し臆病で落ち着いた雰囲気の有るロビンと明るく元気なフッド。そんなロビンとフッドがそれぞれロビンが十二歳、フッドが十歳の時に大きな事件に巻き込まれ、大きく成長し、大きく変わる。


 大好きだった両親が森から帰ってこなかったのだ。両親は引退してはいたが、アヴァロンで戦ってきた冒険者だった。そんな自分達にとって英雄であった両親が帰ってこなかったのだ。村の住人達が探してくれたが見つからなかった。村の大人は三日は探してくれたが、四日目からは探さなくなった。ロビンとフッドは勿論大人に探してくれと頼んだが、大人は動かなかった。


「なんで探すの止めたんだよ! まだ森で迷ってるかもしれないのに!」

「もう三日も探した。しかし居なかった。もう死んでるだろう。わかってくれフッド。お前の両親はこの村の中で一番強かった。しかし帰ってこない。森の中には我々では勝てない存在が居るかもしれん。そうなれば村を捨てる準備をしなくてはならない。我々としても苦渋の決断なのだ。わかってくれ」


 村長のルールンは爺さんだ。村の存続の為なら非常な判断を出来る、優秀な人物ではある。


「わかるかよ! なんで! どうして!」


 フッドは元気で、少し好戦的だった。村の子供の中では一番力が強く、誰も恐れない性格だった。

 最初はその辺りがラクーンに似ているとロビンは思っていた。


「わかってくれ」

「ずっと助けられてたくせに! いざとなったら捨てるのかよ! この……」

「待てフッド。殴っても解決しない。無駄な事は止せ」


 ロビンは冷静というか冷めてるというか、そんな性格をしていた。両親が死んでいるかもしれないのに、大して動揺しなかった。フッドがかなり動揺しており、それを見たせいで落ち着いたのもあるだろう。


「待てってなんだよ! 待ってても変わらないだろ」

「待ってても変わらないが、殴っても変わらないぞ。フッド。この爺さんは殴られた程度じゃ変わらない。殺されかけても変わらない。この爺さんは村が壊滅しないと変わらない」

「おい! 村長に向かって失礼だぞ!」

「ちょっとサガンさん、怪我してるんですから落ち着いてください」

「チッ……」


 サガンは青い服を着た体格の良い男だ。父さんと母さんが居なくなった日の捜索で怪我をしたらしい。


「フッドも落ち着け」

「じゃあどうしろって言うんだよ!」

「一度帰ろう。此処に居ても変わらないなら、動いて変えるしかないだろ?」

「でも! ……いや、兄ちゃんがそう言うなら、そうする」

「帰るぞ」

「わかった」


 誰も居ない家に帰ったロビンとフッドは、ロビンの部屋に行き、話をする。


「兄ちゃん……これからどうしよう?」

「まず村を動かすのは無理だ。あの爺さんは動かない」

「じゃあ僕達で探しに行く?」

「それも無理。父さんと母さんが勝てない相手に僕達が勝てる訳が無い」

「じゃあどうするの?」

「どうもしない。動いても動かなくても変わらないなら、動かない。何かチャンスが来るまで動かない」

「それじゃどうしようもないじゃないか!」

「今できるのは父さんと母さんの部屋から本を出して、戦う力を付ける事だ。何かあった時に必ず計算通りみたいな顔をしてた母さんの事だ、こうなる事を見越して何か用意してるだろ。いつも新しい戦いの技術を追い求めてた父さんの事だ、その力をフッドに継承させようとしていただろう。そんな本とかを読んで練習する事が今できる事だ」

「わかった。兄ちゃんがそう言うなら、そうする」

「じゃあ二人で探そう」


 両親の部屋に入り、本を探し、読んでいく。


「兄ちゃん、母さんの本は難しくてわからないよ」

「母さんの本は僕が読むからいいよ。父さんの本を読むと良い。僕には感覚的すぎてわからないから」

「わかった、兄ちゃん」


 それから一週間が経ち、漸く両親を探すチャンスが訪れた。村長が村を捨てて、新たな村を作る事が決定した為だ。その為に森に入り食料を集めるのだ。


「兄ちゃん……」

「わかってるさ、フッド。今日実行しよう」

「けど一週間も経っちゃったよ。生きてるかな?怖いよ、兄ちゃん」

「生きてるかはわからない。けど、生きてると信じて探そう」

「うん」

「計画は立てた。準備もした。後は覚悟を決めて進むだけだ」

「うん」

「計画は覚えてるな?」

「うん。皆で森に入ったら、一度分かれて行動して、大人達の目が離れた時に森の奥に入る」

「待ち合わせの場所は?」

「森の少し奥にある岩の近く」

「なんでその場所に集まるの?」

「岩の下に武器を隠してるから。父さんと母さんが用意してくれた、僕達が使える武器を隠したから」

「その後の行動は?」

「二人で一緒に行動する。母さんの日記に森の何処まで行く予定か書いてあったから、その場所を中心に探していく」

「生きていたら?」

「父さんと母さんが生きていたら、道を案内して村に帰る」

「死んでたら?」

「死んでたら……死んでたら、死体の一部だけでも運ぶ!」

「村に帰った時の言い訳は?」

「えと……えと……」

「はぁ……食料になりそうな物が無かったから奥に入ってしまった。そしたら死体を見つけた。だろ」

「そうだった。うん、わかった」

「よし、じゃあ行こう」

「うん。兄ちゃん。行こう。見つけようね」

「当然だ」


 家を出て、村の中心に行き、村長の話を聞き、森に入る。そこからは計画通りに岩のある場所まで移動する。


「兄ちゃん、お待たせ」

「いい。行くよ」

「うん」


 岩の下に隠した武器を取り出す。ロビンは弓を、フッドは剣を。両親が向かった場所は森の奥の奥。危険なモンスターが居る可能性は高い。警戒しながら進んで行く。

 両親が向かった場所まであと半分くらいの場所で不審な所を発見する。土を掘り返した跡がある。不自然、あまりにも不自然。近くに似た様な後は無い。だから掘り起こす事にした。


「兄ちゃん、掘り起こして意味があるのかな?」

「ある。これは何かある。もしかしたらヒントになるかもしれない」

「わかったよ、兄ちゃん」


 スコップなんて無いから、剣を使ったり、手で掘ったりして、掘る。掘った先には……両親の死体が在った。


「に、兄ちゃん、こ、これって……」

「間違い無い。父さんと母さんの死体だ」

「そんな……そんな……」

「泣いて良いよ」

「うわああぁぁぁぁぁああぁぁああぁぁぁあああああぁぁぁあああああん」


 大声で泣くフッド。それを見て自分が泣く機会を失ってしまったロビン。泣きたかったが、今は泣いても仕様がないと思い、努めて冷静にこの後を考える。


「ねぇ、フッド。これはモンスターの仕業だと思う?」

「ぐすっ……モンスターの……ぐすっ……仕業じゃ無いの?」

「僕は違うと思う。綺麗に埋められてるし、食べられた後も無い。それにこの傷は牙や爪じゃ無い。多分農具の類だ」

「けど、こんな事モンスター以外しないよ」

「母さんの持っていた本に書いてあったんだ……モンスターなら、殺した相手は絶対に食料にするって。けど父さんと母さんの死体は喰われてない。それにモンスターは死体をこんなに綺麗に埋め無い筈だ」

「じゃあ一体誰が……父さんと母さんを……」

「近くに何かヒントがあるかもしれない。探そう」

「わかった」


 近くを探すが何もない。


「ダメだ……何もない。死体の一部だけでも持ち帰ろう」

「わかったよ、兄ちゃん」

「じゃあ死体を穴から出そう」

「わかった」


 死体を掘り起こす。すると一つ不自然な点が存在した。それは母親の手がかなり強く握られている事だ。


「ここ、変だ。母さんは魔法を使って戦うのに、武器を持ってる父さんよりも強く手を握ってる」

「そんなに変かな? 僕にはそこまで……」

「フッド。剣を貸してくれ」

「兄ちゃん? 何するの?」

「手を開かせるのは無理だ。硬すぎる。どちらにしても死体の一部は切って持ち帰るんだ。指を切って何を握ってるのか確認する」

「けど……」

「母さんの事だ、何かヒントを残してるかもしれない」

「わ、わかったよ、兄ちゃん。はい」

「ありがとう」


 フッドから受け取った剣で母さんの指を切る。

指を落として、手の中を見ると重大なヒントが隠されていた。


「こ、これは………」

「に、兄ちゃん、これって………」

「あぁ、見つけたぞ。これで犯人がわかる」

「けど……これって……なんで……」


 手の中に隠されていたのは青い、青い服の一部だった。


「あぁ、こんな服を着てるのはサガンだけだ」

「じゃあサガンさんが犯人?」

「それだけじゃ無い。村が犯人だ」

「サガンさんだけじゃ無いの?」

「サガン一人だったら父さんと母さんは負けない。手におえない人数で攻撃したんだ。サガンは怪我をしてただろ? 多分だけどあれは父さんと母さんの反撃の結果かもしれない」

「けど捜索してる時に怪我したって……」

「村全体が犯人なら、口裏を合わせて隠蔽できる」

「じゃ、じゃあ……犯人は……」

「村だ」

「そんな……なんで……」

「それは分からない。けど今それを考えても仕方ない。今後を考えないといけない」

「兄ちゃんは泣かないね。悲しくないの?」

「悲しい。けど今は泣いてる時じゃ無い」

「兄ちゃんは強いな……」

「フッド……これからどうする?」

「どうするって?」

「何も見なかった事にして村に戻るか、これから二人で森で生きていくか」


 この時ロビンは迷っていた。正直にいうのであれば一人は森で暮らし、一人は村で暮らすのが最適だった。たった二人で村人全員を相手にしたら勝てる訳が無い。これがアヴァロンで最強の存在だったら別だろう。相手が何人であろうと簡単に制圧して見せるだろう。しかしロビンやフッドにそんな力は無い。その為に森で暮らし、実践で培った経験が必要だった。母親の本から得た、見ただけの知識ではなく、実践で使い、自分に合わせた作戦を考えなければ勝てないと予想していた。


「……兄ちゃんは……どっちも最適じゃ無いと思ってるんでしょ?」

「……やっぱり隠しきれないか……」

「僕は兄ちゃん程頭が良くないからわからないけど、兄ちゃんには有るんだろ?どうするかって作戦が……僕は分からないから、兄ちゃん教えてよ。僕は何をしたら良い?」

「……その為には聞いておきたい。フッドは村をどうしたい?」

「父さんと母さんを殺したんだろ? 許せない」

「じゃあ、村と同じになれるか?」

「村と……同じになる?」

「村は理由は分からにけど父さんと母さんを殺した。僕達が村の人を殺したら、村と同じ事をしてるような物だ……だからその覚悟はある?」

「父さんと母さんを殺した村を許せない。犯罪者になっても良い。だから父さんと母さんの仇を討ちたい」

「わかった。じゃあ今とれる多分最適な手段を使おう」

「うん。おしえて、兄ちゃん」

「その為には…………」


 ロビンが考えた作戦はこうだ。まずロビンかフッドのどちらかが村に戻り、もう片方は森で生活して、力を付ける。村に戻った方は村人に悟られずに両親を殺した実行犯の情報を集め、森に入った方は実践を繰り返して力を付ける。定期的に連絡を取り、情報を交換し、力が付いたら合流して仇討ちを始める。そんな作戦…………問題は一つ。


「どちらが村に帰るか? どうする?」

「僕は剣を使った戦いをする。だから村でも鍛えられるけど、兄ちゃんは鍛えられない。だから僕が戻るよ」

「辛い事だぞ……」

「大丈夫……耐えてみせる」

「わかった。じゃあここで別れよう」

「わかった……兄ちゃん、頑張ってね…」

「勿論だ……フッド! 抱え過ぎるなよ」


 それから五年。フッドが成人になってから計画を進めた。村の位置は変わったが、フッドから情報を得ているから問題なかった。漸く計画が始まったが、もっと早く計画を始めるべきだったと後になって後悔する事になる。


「久しぶり。兄さん」

「久しぶり。フッド。……じゃあ計画を始めようか」

「やっと始まるんだね……やっと殺せる……それで? 誰から殺すの?」

「確実に実行犯なサガンか絶対に協力者の村長の狙いやすい方から」

「いつ始める?」

「今夜」

「わかった。準備しておこう」

「頼んだ。暗くなったら此処で集合だ」

「わかった」


 暗くなり、村が静まってから行動を開始する。


「フッド。どっちを狙う」

「村長かな……サガンより簡単だと思う」

「じゃあそうしよう」


 村の近くの森から出て、村に入り、村長の家の前に行く。


「此処だ」

「できるだけ静かに素早く終わらせよう」


 村長の家に入り、村長が居る部屋を探す。どうやら寝室に居るようだ。


「誰だ!」

「こんばんは」

「なんだフッドか……どうした?」

「俺を忘れないでくれよ、村長」

「お、お前は……ロビン! 死んだと思っていたが……生きていたのか……」

「さてそれじゃさっそく始めようか」

「わかった」

「何だ?」

「一つ聞きたい事があるんだ」

「何だ」

「父さんと母さんを殺すのに強力した人物、全員言え」

「――! なんの話だ……」

「早く言った方が良いよ……言わないと村人全員殺す事になるから」

「し、知らん」

「仕方ない。フッド! サガンを連れて来てくれ」

「わかった」


 数分経ってサガンを引きずってフッドが戻ってきた。


「何だ !何をする! フッド!」

「うるさい! ……連れて来たよ兄さん」

「兄さん? だと……」

「久しぶり。サガン」

「ロビン! これはどういうことだ」

「聞きたい事があるんだ」

「な、何だ?」

「父さんと母さんを殺した村人は誰?」

「――! し、知らない」

「そうか……静かに終わらせたかったけど仕方ない。フッド」

「わかった」


 フッドは剣を取り出し、サガンの指を切断する。


「がぁぁああぁあああああぁ!」


 サガンの人差し指を切断した時にフッドが笑った気がした。


「早く言え。お前が関わってる事は分かってるから、言った所で死ぬ事に変わりは無いけど」

「ぐう! ……ふ、復讐か? ……そんな事して何になる?」

「少し心が晴れる。それは俺達にとって大事な事だ。だから意味はあるよ。俺達の心が晴れるって意味が」

「そんな事の為に殺すと言うのか!」

「そうだよ」

「そんな事の為に犯罪者になるというのか!」

「お前らに言われたくないな……。それにアルカディアでは人殺しは自由だから、父さんと母さんを殺したお前らを殺すのも自由だろ? フッド」

「じゃあ二本目!」

「ぎゃああああああぁぁぁあぁあぁ!」

「早く言えよ。そしたら早めに殺してやるから」

「……知らない……」

「そうか……仕方ない。フッド! 村人の虐殺だ。こいつ等拘束するぞ」

「な! 犯人で無いかもしれん者まで殺すと言うのか!」

「疑わしきは殺せ。情けは掛けるな。行くぞフッド」

「……わかった……言う…」

「残念、もう遅い。もう虐殺は決定した」

「そ、そんな……村だけは……死なせるわけには……」

「村長……お前は決断が遅すぎた」

「なんでも言う事を聞く。だから一人は残してくれ」

「……仕方ない。良いだろう」

「に、兄さん」

「それじゃ話して貰おうか」

「計画を立てたのは儂だ……実行したのはサガンと男十人だ……」

「そうか……フッド! サガンの目を切り、片腕を切断しろ。後は放置だ」

「わかった。……漸く一人目だ。この時を待ってたぜ!」


 剣を横に振ってサガンの目を切り、縦に何度も剣を振り下ろし腕を切断する。


「ぎゃあああああああああああああぁぁああああああああぁああああああああぁ!」


「じゃあルールンも殺そうか」

「それはまだだ」

「なんで!」

「動機を聞いておこう。あと村人が死んで逝く所を見せよう」

「それは……いい考えだ!」

「…………あぁ、それじゃあ始めよう」


 この時ロビンは少し困惑していた。確かに昔から好戦的ではあった。しかしこれほど罪悪感無く、それどころか楽しそうに人を傷つけるとは思っていなかった。


「うん!」


 村長の家を出る。


「そこで大人しくしとけ」

「まずは誰から?」

「遠い所から一人ずつ」

「わかった」


 村人の家に入り、寝ている村人を無理やり引っ張り、村長の前に持ってくる。


「そ、村長! こ、これは……それにロビンも……」

「やあ。じゃあ始めようか。復讐の虐殺を」

「え? 虐殺って……」

「じゃあね」


 フッドが剣を降り、首に剣が刺さる。


「あれ? 落とせなかった?」

「首を落とすのは以外と難しいから仕方ないさ」

「そうなんだ。……じゃあ次持ってくる」


 村人の残りが半数を切り、村長の心が完全に折れたと判断したロビンは両親を殺した動機を聞くことにする。


「何故父さんと母さんを殺した」

「あいつ等はお前らを産んだ後、狩りに出なくなった。それまでは積極的に森に入り、狩りをして村を守っていたのに。お前らを産んだ後……特にフッドを産んだ後森に入らなくなった。しかしそれはまだ許せた。だが様々な物を要求するようになってきた。それがどんどんエスカレートしていった。毎年毎年要求する食料の量は増え、仕事である狩りはしなくなり、傲慢になっていった。だから殺したのだ!」

「他の村人は子供ができたら仕事をしなくなるのに、何故父さんと母さんはダメだったんだ?」

「それは村で数少ない狩りが出来る人間だったからだ。狩りが出来るからには動物を狩り食料を集め、モンスターを狩り村を守って貰わなくては困るのだ」

「それはお前らのエゴだろ? 自分勝手な理由を他人に強要し、他人が許されている事を許さない。理由は狩りが出来るから。あまりにも勝手が過ぎるんじゃないか?」

「何を言う! 村で唯一狩りが出来る人材なのだぞ。そんな技能を持った人物が子供が産まれた程度の理由で休まれては困るのだ。そうなれば村が困るのだ!」

「……ゴミが……。やはり村に復讐をして正解だったな。お前らみたいなゴミに生きる価値など無い。もっと絶望してから死ぬといい」

「何だと!? 儂が間違っていると言うのか! 儂は村の為を思って行動したのだ! その行動が間違いの筈無いだろ!」

「村の為を思えば全てが正しいのか? だったら俺達が正義だな。俺達は世界の為を思って行動してるんだから」

「屁理屈を言うな! 儂は村を思っているのだ! だから儂は正しいのだ! 村を思って行動している儂に村人が逆らってはいけないのだ!」

「フッド。残りの村人を連れてこい」

「こんな事をして許される筈が無い。今に見てろよお前ら。儂を……儂を……」

「ふっ!」

「がっ!」


 短剣でルールンの舌を切り、喉を、声帯を少しだけ切る。これで煩い声が聞こえなくなるだろう。

 その後は煩い人物も黙り、次々と村人を殺していく。


「後、二人だ」

「……ヒュゥヒュゥ……」


 ルールンが喋ろうとするが、声帯が切られている為、声では無く息しかでない。


「何だ? ああ、村人を一人は残す約束な。守るから安心して死を待ってろジジイ」

「どっちを殺すの?」

「決まってるだろ? 両方だ」


 ルールンが暴れるが気にせず殺す。


「兄さん。良かったの?」

「あんな奴との約束なんて守る価値も無いし、それどころか約束を破ってすらないんだから問題ないだろ」

「約束を破ってない?」

「約束は村人を一人は残す事だろ? だったら此処に二人残ってるだろ? 俺とフッドが」

「確かにそうだね。兄さん。それじゃあ後は村長を殺すだけだね」

「そうだ。それで終わる」

「それじゃあね。村長。地獄で頑張るといいよ」


 フッドの振った剣が村長の首を切断する。


「終わったな。フッド……」

「楽しかったぁ。けどまだ殺したりないなぁ」

「フッド?」

「そう思わない?兄さん」

「どうしたんだ……? フッド……? 疲れたからか? 疲れてるからだ」

「どうしたの? 兄さん。二人でもっと殺して回ろうよ」


 ロビンは困惑していた。ロビンとしては復讐を果たしたし、殺しは終わりにするつもりだった。しかしフッドは変わっていた。フッドはずっと仇と生活し、ずっと恨みが溜まって行く一方だった。その恨みを晴らした事で殺しの快楽に目覚めてしまったのだ。


「復讐はもう終わったんだ。もう殺す必要なんて……」

「楽しいじゃん。殺すのって気持ち良いんだね。もっと殺したら、もっと気持ちよくなれるかな? どう思う? 兄さん。……兄さん?」


 ロビンは怖くなった。フッドが本当に楽しそうにしているから。純粋に殺しを楽しみを見つけた様な顔をしていたから。ロビンはフッドを怖がり、恐怖した。だから勝手に手が動いた。

 ずっと森の中で生活し、自分より強いモンスターや獣と戦ってきたから、恐怖で動けなくなるのでは無く、咄嗟に攻撃してしまう。


「に、兄さん? ……なん……で……?」


 ロビンは咄嗟に背負っていた弓を構え、矢を放っていた。放たれた矢はフッドの心臓に刺さり、致命傷を与える。


「に……兄……さん…………」


フッドは倒れ、死んでしまう。


「ふ、フッド?」


 すぐに駆け出し、フッドの元に駆け寄る。


「フッド? フッド!」


 フッドに声を掛けるが返事は無く、一切の反応を示さない。


「フッド……」


 何度声を掛けても返事も反応も無く、漸く死んだのだと理解する。


「これが俺の過去話だ」

「なるほど……そんなに似てるか?」

「似てるさ……今はもっと似てる。……さて長くなったな」

「そうだな。もう暗い」

「お前さんはこれからどうするんだ?」

「もう少し暗くなったら一度アガルタに戻って、明日荷造りして、アガルタを出て他の国にでも行く予定だ」

「そうか……じゃあ俺も明日出るとするよ」

「何処に向かうんだ?」

「俺は伝説眠る島ジパングを目指して旅をしてる。だから情報を仕入れる為にエルドラドに行くよ」

「そうか。僕はとりあえずアルカディアにでも行くよ」

「そうか。楽しめよ、ラクーン」

「あぁ、存分に楽しむさ」


 こうしてロビンと別れ、大穴の近くで待機し、もっと暗くなるのを待つ。


 三時間後、雲は無く月が出ているがこれ以上待っても暗くならないと考えたラクーンは、魔法で作られた縄を伝って大穴を下りる。

 下りると同時に二つの気配を感じる。


「見つけたぞ。ラクーン」

「あらら……まさか此処で見つかるとは」

「覚悟しろラクーン。絶対に捕まえる」

「今度は逃がしませんぞ。ラクーン様」

「セイデンも居るのか……」


ここまで読んで下さってありがとうございます。

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