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嗤う道化は殺されない  作者: からう
笑わぬ子供は憧れる
16/35

笑わぬ子供の変化の日・Ⅳ

 ラクーンがドワーフ街に入った頃、屋敷の一室………


「まだ捕まえられないのか!」

「主殿、そんなにすぐ捕まえる事は出来ないでしょう。わたくしを倒すほどです、上手く逃げいるのでしょう。しかし、消耗はしている筈です」

「確かに、消耗はしているだろう。しかし、時間が経てば経つほど我々が不利になるのだ。魔力も体力も回復されてしまう」

「確かにそうですが、逆にヒントでもあります」

「確かにヒントにはなる。だが絞れない。話を聞く限り、頭よく戦ってくるのだろう?だから読めない。合っているのかわからない」

「確かに話だけでは分からないでしょう」

「セイデン、お前は分かるのか?」

「完全には無理です。しかし一端なら」

「では聞かせてくれ」

「わかりました。予想ですがラクーン様が最終的に目指しているのはドワーフ街です」

「ほう、何故そう思う?」

「ラクーン様の戦闘力。それを考えると冒険者に戦闘を教わったと見ていいでしょう。そして、ラクーン様はドワーフや獣人を人と対等に扱っている事話してみてがわかりました。そしてアガルタは冒険者が入れるのはドワーフ街までと言う決まりがあります。だからラクーン様はドワーフ街に居る冒険者に会いに行こうとしてるのだと思います」

「なるほど。ではお前は今後ラクーンはどう動くと思う?」

「一度繁華街方面に向かうと考えます」

「なるほど。欺くためか。納得できる考えだ」

「せ、セイデンさん、何故そんな事が………確かに騙す戦いをラクーン様はしていましたけど、戦闘以外の事に関しては分からないのでは?」

「いえ、ラクーン様は罠を張りますよ。あれだけ計画性のある作戦を実行したのです。普段から色々考えていたのでしょう」

「しかし、一旦別の方に向かうのは非効率では? 一直線にその冒険者の元に向かうのでは?」

「いや、非常にいい手だ。セイデン説明してやれ」

「わかりました」

「ありがとうございます。お願いします」

「ラクーン様の作戦の利点は我々が気づかなければかなり時間が稼げ、作戦に気づいても対処のしようがあるのです。どんな手を使われても何れ勝てる手です。ラクーン様を追って繁華街に入れば人混み紛れてドワーフ街に向かわれ、繁華街で待ち続けたら我慢勝負になり、追手を雇っている我々は不利です。追手達の士気が下がり、職務を放棄されるかもしれません。その為待ち続けられたら勝てないのですよ」

「なるほど……納得しました」

「わかったようでなによりだ。ではセイデン、俺達はどう動くべきだと思う?」

「状況が動くまでは待つしかないですね。下手に動いて事態が大変な方に転ぶかもしれませんから。その為繁華街側を……」


 その時、ドタドタと言う足音が聞こえてくる。


「主殿!」


 セイデンはすぐに主の前に立ち、拳を構える。


「ブリューデン様! 大変です」

「なんだ!」

「そ、それが……ラクーン様を追っていた追手の一班が……全員殺されたようです」

「まだそんな力が残っていたのか」

「どこら辺で殺されていたのです?」

「貴族街の端で殺されていたようです。死体の向きから、ラクーン様はドワーフ街に向かったと思われます!」

「なに! ドワーフ街に向かった?どういう事だ」

「ひぃ」


 ブリューデンがどなった事で、報告しに来た者は怯えてしまう。このままでは情報が得れないと判断したセイデンがブリューデンに話しかけ、情報を持ってきた者からブリューデンの注意を自分に持ってくる。


「主殿、ラクーン様の目的地は人側のスラム街かもしれません。そこなら冒険者崩れが居るかもしれません」

「なるほど。ではドワーフ街に追手を放て。ドワーフ街の中で捕まえろ!」

「お待ちください。主様」


 この時セイデンは少し焦っていた。自分が怪我をした事でブリューデンは怒り、冷静な判断が出来なくなっていると感じていた。通常時であれば先ほどの会話からドワーフ街に入っての捜索は危険と判断した筈だ。しかし今はドワーフ街に入って捜索しようとしていた。それではラクーンの思い通りになってしまう。その為少し焦りながらも極力冷静にブリューデンに提案をし、暴走して大変な事態にならぬよう努めていく。


「何故だ!」

「ドワーフ街に入ったと見せかけて、繁華街に向かった可能性もあります。なので追手の残り七割をドワーフ街の入り口に待機させ、三割を貴族街内の捜索をさせましょう」

「なるほど、一理ある。ではそうしよう。おい、お前!」

「は、はい!」

「追手の七割をドワーフ街の入り口に待機させ、残りの三割は貴族街の捜索をしろと命令してこい」

「わ、わかりました。しかし報酬はどうしますか?」

「報酬は最後に捕まえた奴に金貨二十枚にしろ!」

「わかりました。それでは失礼します」


 報告に来た男が出て行った後、ブリューデンとセイデンはもう一度落ち着いて話し合いを始める。


「しかし、スラム街か……予想外だな……」

「わたくしもさすがに予想外でした。申し訳ございません」

「何を謝っている? 予想を外した事か? だったら問題ない。大体は合っていたのだからな」

「ありがとうございます。……これで解決すれば良いのですがね……」

「そうだな」

「わたくし達も出ますか? わたくし達が出れば確実に捕まえれるでしょう」

「確かにそうだな。では俺達も出るとしよう。此処は任せたぞ、ランズ」

「お、お任せください」

「そう緊張しなくていいですよ。ランズ、貴方なら何とでも出来るでしょう」

「あ、ありがとうございます」


 ブリューデンとセイデンは屋敷を出て、ドワーフ街の入り口に向かう。


「かなり部下に慕われているようだな」

「それも仕事ですから」

「頼もしい限りだ」

「それはありがとうございます」


 そんな会話をしながらドワーフ街の入り口に向かう


 ドワーフ街の入り口に着く。


「ブリューデン様、セイデン様、何故ここに?」

「確実に捕まえる為にな。それでどうだ? ラクーンは居そうか?」

「ドワーフ街に就いている警備兵が怪我をして何かに追われている風な子供を見ているようですからドワーフ街に入ったのは確実でしょう。その後ドワーフ街から出た者は居ないそうなので、まだ居ると思われます」

「そうか。わかった。では貴族街を捜索させている者達も集めろ」

「わかりました」


 ラクーンがドワーフ街にほぼ確実に居る事がわかった。残りの追手も集め、確実に捕まえる準備を整え、後は出てくるのを待つだけの為、最後の仕上げとして追手全員に直接命令を与え、全員の士気も上げておく。


 貴族街を捜索していた者達が合流するとブリューデンは士気が下がりかけている事に気づく。何とかしなければと思い、頭を働かせる。その結果、大して考える必要は無く、少し報酬を上げればどうとでもなる事に気づく。ブリューデンにとって金貨二十枚から多少上がった所で痛手では無い。それどころかラクーンを捕まえれるのなら安い出費だろう。そんな事に気づかなかった自分は焦りで冷静で無かった事に気づく。

 一度落ち着き、追手達に向かって報酬を上げる事を告げ、士気を上げる事を決める。


「全員聞け!」


 全員の注目が集まったのを確認すると続きを話す。


「ラクーンはドワーフ街に居る。此処まで来れば後少しだ! 此処からは待ちだ。ラクーンが出てくるまで待つ時間だ。そして出て来た所を捕まえるぞ! 最後に此処からどの位時間が掛かるかわからない。だから報酬を金貨二十枚から二十五、いや、三十枚にする!!」

「うおおおおぉぉおおぉぉぉおぉおおぉ!」「よっっしゃあああっぁぁぁああああああああ!」「絶対捕まえるぞおおおおおおおおおおおおおおおぉおおぉぉぉおぉぉぉお!」


(単純だな。この程度で士気がここまで上がるとは。まあラクーンを確実に捕まえれるのであれば問題ないだろう。これで追い詰めたぞ。ラクーン)


 ラクーンがドワーフ街に隠れて四十分程経ち、ブリューデン達がドワーフ街の入り口に着いてから三十分が経った。


(まだ出て来ないか。しかし待っていればいずれ来る。何としても捕まえるぞ、ラクーン)


 さらに二十分後……。


(そろそろ出て来ても不思議では無い筈……いや、我慢比べで諦める訳には行かない)


 さらに二十分経つ……。


(おかしい……何故出て来ない? まさか目的の人物はドワーフ街に居る? 我々の深読みを誘っておいて本当は目的を達成している? どういう事だ……。いや、焦りはよくない。一度頭を整理しよう)


「セイデン、ちょっと来い」

「はい」


 セイデンと少し離れた場所に行き、話し合う。


「セイデン、どう思う? あまりにも遅すぎないか? もっと急いでると思ったんだが……」

「確かに、急いでいるのは確実でしょう。そもそもの話、急いでいないのなら夜に屋敷を出ればいいのです。それなら確実ですから」

「やはりそう思うか。では何故こうも待っていられる?」

「一度持っている情報を口に出して整理した方が良いかもしれませんね」

「そうだな。そうしよう」

「では、挙げていきましょう。まずはラクーン様の目的ですね。予想は冒険者に会う事でしょう。ラクーン様の行動から繁華街、歓楽街、スラム街に居ると思われます。居住区の可能性は低いでしょう」

「そうだな……それ以外に関係ありそうな情報は……」

「関係無くても気になっている情報を探してみては? 意外と繋がるかもしれませんよ」

「そうだな……気になっている事か……それだと、やはり鳥をどう………はっ!」


 一つの可能性を考える。自分の常識では考えていなかった事。アガルタの人間であれば誰も考えない様な事。しかしラクーンであれば考えておかしくは無い、一つの可能性。


「どうされましたか?」

「目的地は……地上!」

「なんですと! どういう事です?」

「ずっと気になってはいたのだ……ラクーンがどうやって鳥を狩っていたのか……もしラクーンが地上に出ていたとしたら? それにアガルタに入る冒険者は少ない。けど地上ならばあり得る。腕に自信のある冒険者ならありえる。それにドワーフ街だ……ドワーフ街なら地上への出口がある」

「――! ……それなら説明は出来ます。しかしどうやって地上に言っていたのでしょうか?」

「大穴だ……そこなら警備は居ない。魔法を使えば出れるかもしれない」

「なるほど……納得できる理由ですな……ではその線で探しましょう」

「そうだな……」


 ドワーフ街の入り口に集まっている追手達の元に戻り、次の命令を下す。


「聞いてくれ。ラクーンの目的が地上の可能性が出て来た。その為、半数を残して地上への出口に向かう」

「なっ!」「地上に? まさか」「地上だと!」

「驚いている時間は無い。すぐに行くぞ。すぐに残る班と向かう班を決めろ!!」


 三分で班を分けて行動を開始する。全速力で地上への出口に向かう。


「こ、これは……」


 地上への出口に着くと、首を剣で刺されたであろう警備兵三人の死体があった。


「当たりだ……」

「なっ!」「こんなに簡単に……」「武器を構えて死んだであろう人が一人しかいない……」

「ぶ、ブリューデン様、どうするのです?」

「許可なく外に出る事は大罪だ。地上に追手を出す訳にもいかない。くそっ!此処までか!」

「いえ、お待ちください」

「なんだセイデン」

「ラクーン様はアガルタに戻って来ますよ」

「何故そう思う?」

「ラクーン様は荷物を持っていませんでした。アガルタを出て、他の国に向かっても、途中で死んでは元も子も無い。ならば、食料やその他消耗品を買いに戻ってくると予想します」

「ドワーフからお金を奪っている可能性は?」

「無いでしょう。そんな事件が起こっていたら、もっとドワーフ街は騒がしくなっているでしょう」

「なるほど。ではもう一度待つか……」

「作戦は、此処まで連れてきた追手は此処に残し、主様とわたくしは貴族街内で待つ。入り口に置いてきた追手はそのままに」

「俺とお前が貴族街に戻る理由は?」

「大穴の警戒と、この出口が突破され、ドワーフ街の入り口にラクーン様が来た時の対策です」

「なるほど。……わかった。そうしよう」


 セイデンと話、すぐに今後の行動を決め、追手達に命令を下す。


「聞け! お前達にはここに残り、ラクーンが戻ってこないか見張っていてもらう。いいな!」

「そ……はい…」「はい」

「よろしい。では任せた」


 貴族街に戻り、大穴を警戒する。


 そして夜。闇に紛れて大穴から何かが落ちてくる。ブリューデンとセイデンはそれを見逃さず、すぐに落下地点に向かう。落下地点に着くと同時に何かも地面に着く。その何かは人で、ラクーンだった。


「見つけたぞ。ラクーン」


ここまで読んで下さってありがとうございます。

面白いと思って頂けたら嬉しいです。

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