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嗤う道化は殺されない  作者: からう
笑わぬ子供は憧れる
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笑わぬ子供の変化の日・Ⅲ

 時は戻り、屋敷から追手の掛かったラクーンは現在貴族街の端で隠れていた。


(この感じはそんなに手練れの追手じゃ無いだろうな。ロビンみたいな狩人としての技術がある人間では無く、寄せ集めの金で雇った人間が殆どだろうな……。金貨十五枚くらいかな。けどこれじゃ楽しめるほど強い相手は居ないな。……仕方ない、ドワーフ街で追手を仕留めるか。それにドワーフ街は外に通じる道があるし、一番適してるな。)


 ラクーンは貴族街の端に沿ってドワーフ街の方へ向かう。しかし、ドワーフ街に向かう途中で追手と遭遇してしまう。相手との距離はまだまだ遠く、辛うじて声が聞こえてくるくらいである。


「いたぞ!」「やったぜ! こっちに来て正解だぜ!」「賞金は俺のもんだ!」「大人しく掴まれや」


 剣を持った四人の男達が色々と言ってくる。


(程度の低い寄せ集めだな。けどこの程度なら殺しても問題ないだろ)


 ラクーンが屋敷で戦っていた時は殺す気で戦っていなかった。殺してしまえばより面倒になると予想して、殺さないように気を付けながら戦っていた。ただセイデンが予想以上に強く、結果的に面倒な事になっているのだが。


(さて、どう殺そうか。一番楽しそうなのは挑発してから近接戦かな。苦手を突く戦いじゃ無いけど、この程度の奴ならハンデが無いと楽しめなさそうだ)


 どう戦うかを決め、四人の男に突っ込んでいく。


「突っ込んで来てくれるなんてありがたいね。全員掛かれ!」

「無駄な抵抗は止めて、大人しく捕まるんだな」

「無駄な抵抗? 僕が無駄な抵抗をする訳無いでしょう?」

「じゃあ大人しく捕まりやがれ!」

「僕は無駄な抵抗はしませんが、無駄じゃ無い抵抗はしますよ? 貴方達みたいな弱い相手に抵抗するのは、僕からすれば簡単な事ですから」

「この糞ガキ! ぶっ殺してやる」

「乗るな乗るな。それに殺したら報酬が貰えないぞ」

「そもそも貴方達は僕に倒されるんだから、報酬なんて貰えませんよ。いや、怪我っていう報酬は有るかもしれませんが。なんなら僕があげましょうか? 骨折って言う報酬」

「このガキは! 絶対痛い目見せてやる」


 四人の内二人が突っ込んでくる。最初に怒った方が先に攻撃してくるようだ。

 相手が剣を一気に振り下ろす動きに合わせて少し後ろに下がり、剣を躱す。力を込めて振り下ろした剣を躱されて、勢いが止まらずに剣に引っ張られて転びそうになっている相手に、強化魔法で威力を強化したアッパーパンチを撃つ。突っ込んだ勢いと剣を思いっきり振り下ろした勢いに、下から上に向かうパンチがぶつかり、相手の顎を砕き、意識を飛ばす。意識を失った相手は剣を手放し、地面に倒れる。


「おい!」「大丈夫か!」


向かって来なかった二人の声を無視して、気絶した相手が手放した剣を拾い、向かってくるもう一人に投げる。


「うおっ! 危ねぇ! ――がっ!」


 投げた剣に驚いて怯んだ隙に一気に近づき、回し蹴りで背中を蹴って、気絶した奴の上に乗せる。

蹴られた衝撃で手放した剣を拾い、重なっている二人の胴体に突き刺す。


「がぁああぁああぁぁぁぁあああ」「ぐあああああぁあぁぁああ」


 二人の悲鳴が聞こえる。悲鳴が聞こえると刺していた剣を引き抜く。


(ヤバい。楽しくなってきた。最近は鳥も狩ってなかったし、久しぶりに殺した気がする。セイデンとの戦いも楽しかったけど、殺す事は出来なかったし、手加減されてたしで、戦いは楽しかったけど、殺した時の快楽は得られなかったからな……やっぱり殺すのは楽しいな……)


 その時のラクーンの顔は満面の笑みであった。死んでいる者達を見て恍惚とした表情を浮かべる。死体を見ながらうっとりとした笑顔を浮かべるラクーンに、残された二人は怖気づき、戦意を失ってしまう。


「ふぅ……二人は殺した……次は君達だ!」

「ひい!」「なんだよ……なんなんだよ……子供を捕まえる簡単な仕事だった筈なのに……なんで人を殺して笑ってる奴と戦う事になったんだよ」

「もうちょっと楽しませてよ!」


 残りの二人に向かって走るラクーン。まったく動かない二人を見て、戦意がもうないとラクーンは察してしまう。


「なんだ……つまんない」


 殺した二人から抜いた剣を一人の首に突き刺し、そいつが持っていた剣を奪って、もう一人の首にも剣を刺して殺す。


(最初の二人は意外と楽しませてくれたな。戦いの質はセイデンやロビンと戦った時の方が良かったけど、快楽という意味では良かったなぁ。……さて、さっさとドワーフ街に向かおう)


 その後は問題も無く、貴族街とドワーフ街を結ぶトンネルの近くに着く。ドワーフ街に向かう追手の姿は確認できない。

 ラクーンはすぐにドワーフ街に入ろうかと思ったが、追手が少しくらい来てくれた方が楽しくなると思い、体の何か所かに傷を付けて、さも重症です感を出す。


(準備は万端。後は一気に駆け込むだけ)


 右手で左腕に付けた傷を庇いながら、後ろを見て走る。


 トンネルを抜けてドワーフ街に入り、大通りを突き進む。トンネルを抜ける時に警備兵がこちらを見ていたので、こちらが重症であるという情報はいずれ追手に伝わるだろう。


 ドワーフ街に入ってすぐにある大通りを駆け抜ける。ドワーフに注目されながら大通りを進む。


(このまま大通りを進んで、何処からか裏道に入りたい所だな。さて、どの辺から……!)


 ドワーフからの視線の中に一つ異質な視線が有る。その視線を感じ取ると、すぐに止まり辺りを見回す。その他の視線が、面倒事に巻き込まれたくないと言った様な眼をしているのに、その視線はこちらを見定めるような視線であった。ラクーンは別に視線から感情を読む事が出来るわけでは無いが、何となく異質なものを感じた。他とは明らかに何か違う視線。

 辺りを見回すが視線の主は居ない。視線も消えてしまっている。


(なんだ?いったい何がしたかった?……いや、今考えても仕方ない。今は気にせず進もう)


 不思議な視線を感じた後は何も無く裏道に入る事が出来る。


(あの変な視線以外作戦は順調。後は休みながら獲物が来るのを待つだけだ)


 ラクーンは裏道から大通りを眺め、獲物が来るのを待つ。草むらに隠れ、獲物が近づくのを待ち続ける虎の様に。しかし常に気を張り続ける事は出来ず、すぐに休み始める。


 ドワーフ街に入り、裏道に入ってから四十分程経つが獲物はまだ来ない。


(随分と遅いな? なんでだ? まあ少し遅いくらいなら、魔力の回復の事も考えると良いんだが……このまま動きが無いと動くに動けないぞ)


 最悪の場合、正規の道を通る方法もあるが、この方法を使うと外に出た事が確実にバレてしまう。出来れば避けたい事だが、最悪の場合仕方ないだろう。


(そう言えばあのパーティー変だったな。全員が剣を持っていた。剣を持つのは良いんだが、短剣とか他の武器を持った奴が一人も居なかったのは何でだ? 連携もあってなかった様なものだった。まるでさっき会ったばかり……これだ! さては連携とか考えずに無理やり組ませたな。突っ込んできた二人に残りの二人は合わせる気が無かったしな。そんな奴等がここに来ないって事は、ドワーフ街の入り口辺りで僕が出るのを待ってるな。だったら仕方ない。正規の道を通るか)


 そう考え、すぐに行動を開始する。大通りに出て、貴族街とは反対方向に向かう。


(警備兵が居るはずだが、どっちに向かっても戦いになるだろ。だったら極力温存して、後から戦った方が楽しそうだ)


 大穴から出るには魔法を使わなければいけないが、正規の出口からでれば必要ない。その為、魔法を連発できる。


 大通りを進み、正規の出口の前に立つ。警備兵は三人いる。


「おや? ラクーン様。どうされましたか?」

「外に出ようと思って」

「外出許可証はお持ちですか?」

「無い」

「それでは出す訳には行きません」

「そう、残念」


 魔力武装で剣を作りだしながら、接近して、剣を降る。首を狙った一撃で会話していた一人を殺す。


「があ!」「何を!」「――!」


 他二人の警備兵が武器を構えようとしたが、遅い。


「がふっ!」

「二人目」


 二人目が槍を持ち上げている間に首を切り、殺す。

 一瞬で二人が殺された事に驚いている三人目にも近づき、剣を首に刺して殺す。


「三人目っと。すぐに終わったな」


 一瞬にして三人を殺し、地上への出口へ入る。中は螺旋階段の様になっている。


「へぇ……これは以外と凄いな」


 ずっと上まで続く螺旋階段は圧倒される物がある。その螺旋階段を上がり、地上に向かう。


 十分程登り、漸く地上に出る。螺旋階段の先は屋内になっており、人は居ない。

家からでると、一面が畑だった。


「これは………なるほど、ここで食料を作っていたのか。地上にあるとは聞いていたが……これは中々良いな………おっと、早く動かないといけないな」


 景色に圧倒されていたが、ロビンに会うと言う目的を思い出し、向かおうとするが……


「しまった、此処からの向かい方がわからない……いや、山の見え方で何とかなるかな?」


 少し遠くに見える山に向かって歩き、大穴が在る場所を一旦目指す。何度か迷いかけたが、何とか大穴にたどり着いた。


(ようやく着いた……森の中は迷い易いな……けど此処まで来れば後はいつも通りだ)


 そこから数分程歩き、いつもの場所に着くと、ロビンが少し不機嫌そうに待っていた。


「やあ、ロビン。かなり待たせたね」

「……本当に待ったぜ」


ここまで読んで下さってありがとうございます。

面白いと思って頂けたら嬉しいです。

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