↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界女王は、彼にだけ勝てない  作者: てへろっぱ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
76/98

第七十六話 失敗した自分まで、置いていかない



 開始音と同時に、八人が真正面からぶつかった。


 これまでの三回とは違う。ZEROは中央を取ってから捨てることも、最初から別の目的へ散ることもせず、四人全員がCrownlessの四人へ向かってくる。


 ミカの正面にはFIRST。レナにはSECOND、ECHOにはTHIRD。そして中央でユイを待っていたのはORIGINATORだった。


 まるで最初から組み合わせを決めていたように見える。


 けれどユイは、そう考えかけた自分をすぐに止めた。


 彼らは前の一点から答えを持ち越さない。


 なら、この一対一にも「狙いがあるはずだ」と決めつけるべきではない。


「今回は私ですか」


 ユイがORIGINATORとの距離を測りながら尋ねる。


「今はね」


「次は違う?」


「わからない」


「でしょうね」


 ORIGINATORが笑った直後、先に動いたのはユイだった。


 相手が何を選ぶか待たない。


 中央へ踏み込み、保持を始める。ORIGINATORが止めるなら対応し、止めないならそのまま一点を取る。それだけの判断だった。


 ところがORIGINATORは、ユイではなく左側を見た。


 FIRSTとミカがすでに撃ち合っている。


「余所見ですか」


「うん」


「では、いただきます」


 保持カウントが二秒、三秒と進む。


 それでもORIGINATORは動かない。


 ユイはその横顔を見ながら、妙な違和感を覚えた。


 NoNameも試合中に他人を見る。


 けれど、NoNameの視線には必ず次がある。相手の選択を知り、味方の癖を知り、数秒後に起きることへつなげるための観察だ。


 ORIGINATORは違う。


 本当に見ているだけに見える。


「何を見ていますか」


「FIRSTが、今どっちを選ぶかなって」


「その結果を使うために?」


「いや。気になったから」


 ユイの眉がわずかに寄った。


 中央の保持は五秒を超えている。勝利を優先するなら、そろそろ止めなければ間に合わない。


 それなのにORIGINATORはまだFIRSTを見ていた。


          ◇


 左では、ミカとFIRSTが互いに残り体力を削り合っていた。


 FIRSTは先ほど、資源を取りかけて途中で捨てた。


 その行動を次の答えにはしない。


 ミカもそれは理解している。


 だからこそ、目の前にいるFIRSTだけを見る。


 一発目を撃つ。


 FIRSTは回避する。


 二発目も避けた。


 三発目。


 今度は避けない。


 直撃を受け、そのままミカへ踏み込んでくる。


「近距離ですか」


「今やりたくなった」


「そうですか」


 以前なら、自分の得意距離から外れた瞬間に下がっていただろう。


 しかし今のミカは違う。


「では、付き合います」


 後退せず、さらに一歩前へ出た。


 FIRSTの目が少しだけ開く。


「射撃の人なのに?」


「射撃が得意なだけです」


 至近距離でミカが撃つ。


 FIRSTも攻撃する。


 ほぼ同時に被弾し、二人の体力が危険域へ落ちた。


 一撃。


 次に当てた方が勝つ。


 FIRSTが笑う。


「楽しいね」


「はい」


 ミカも否定しなかった。


 FIRSTが右へ。


 ミカは照準を追わせる。


 撃てる。


 だが、FIRSTもそれを読んでいる。


 なら撃たない。


 そう判断しかけた瞬間、ミカは自分の中にあるものへ気づいた。


 これは過去の経験から出た答えだ。


 相手に回避されるなら撃たない。


 撃たないことで次を取る。


 NoNameと戦い続けて身につけた、自分の大切な選択の一つ。


 だからといって、毎回それを選ぶ必要はない。


 ミカは撃った。


「っ」


 FIRSTが予想よりわずかに遅れて回避する。


 弾丸が肩をかすめ、体力がほとんど消える。


 FIRSTの攻撃も同時に飛んだが、ミカは避けずにもう一発撃った。


 命中。


 PLAYER DOWN.


 FIRST.


 Crownless側に歓声が上がる。


 ミカ自身も小さく息を吐いた。


 今の勝ち方は、昔の自分とも、最近の自分とも少し違う。


 撃たないことを覚えたからこそ、撃つことをもう義務にも逃げ道にもせず、自分で選べた。


「ミカ!」


 レナの声が飛ぶ。


「見えています」


 FIRSTを倒した。


 だから次に助けへ行く。


 そう決める前に盤面を見る。


 右ではレナとSECONDが激しくぶつかり、後方ではECHOとTHIRDが互いの動きを探っている。


 中央。


 ユイ。


 保持カウントは――八秒。


「取れます」


 ミカはどこにも行かなかった。


          ◇


 中央保持、九秒。


 そこでORIGINATORがようやくユイへ向き直った。


「そろそろ行こうかな」


「遅いと思います」


「そうかも」


 ORIGINATORが中央へ入る。


 十秒目に届く直前、競合状態になってカウントが止まった。


 あと一秒にも満たない。


 ユイは思わず笑った。


「間に合いましたね」


「間に合ったね」


「最初から計算していましたか」


「してないよ」


「本当に?」


「FIRST見てたから」


 あまりにも自然に言うので、ユイには嘘だと思えなかった。


「それで一点を失っていたら?」


「次の一点をやる」


「反省は試合後」


「そう」


 ORIGINATORが一歩近づく。


「だから今は、あなたとやる」


 ユイも構えた。


「では私も、今はあなたを中央から出します」


 二人がぶつかった。


 ORIGINATORの技量は高い。派手な速さや圧倒的な火力ではないが、距離の変え方が異常なほど滑らかだった。


 遠距離へ下がると思えば途中で止まり、ユイがその停止へ合わせた瞬間には近づく。次も同じ変化をすると考えれば、今度は最後まで下がる。


 読めないのではない。


 一つ一つには理由がある。


 ただ、その理由が次の一手を縛らない。


 ユイは数度の交錯だけで理解し始めた。


「なるほど」


「何が?」


「NoNameさんが嫌がる理由です」


 ORIGINATORが吹き出した。


「今のあいつ、俺のこと嫌がってる?」


「昔の話です」


「なら合ってる。昔はすごく嫌そうだった」


「想像できます」


「本人に言うと怒るよ」


「今なら、困った顔をするだけだと思います」


 その答えにORIGINATORの動きが一瞬だけ止まった。


 ユイは見逃さない。


 中央から押し出す。


 保持カウントが再開した。


 一、二。


 ORIGINATORはすぐ戻れる位置にいる。


 しかし今度は戻ってこなかった。


「来ないんですか」


「今、聞きたいことがある」


「試合中ですが」


「知ってる」


 また同じ流れだ。


 ユイは警戒しながら中央を保持する。


「何でしょう」


「NoNameが間違えたら、どうする?」


 ユイの目が細くなった。


「内容によります」


「チームにとって致命的な判断だったら」


「止めます」


「聞かなかったら?」


「もっと強く止めます」


「それでも駄目なら?」


 ユイはほとんど迷わなかった。


「失敗してもらいます」


 ORIGINATORの表情が変わる。


「その後は?」


「必要なら怒ります。反省もしてもらいます」


「追い出さない?」


「なぜですか」


「チームを壊すような失敗でも?」


 ユイはようやく、ORIGINATORが何を聞こうとしているのか理解した。


 昔。


 NoNameは正しさを証明しようとして試合に勝ち、その代わりにチームを失った。


 この人は、その逆側にいた。


「一度の失敗で決めることではありません」


 ユイは静かに答える。


「私たち自身も、何度も間違えていますから」


「でも、あいつの間違いで全員が負けたら?」


「その時は」


 中央保持が九秒へ届く。


 ユイはORIGINATORを見た。


「四人で負けたことにします」


 十秒。


 CENTRAL HOLD.


 CROWNLESS.


 THREE.


 三対一。


 得点が入ると同時に、マップが白く光った。


 全員が初期位置へ戻される。


 ORIGINATORは再開地点で、しばらくユイを見ていた。


 それから、少しだけ笑った。


          ◇


「三対一!」


 レナは再開地点で嬉しそうに声を上げた。


「今のはいいじゃん!」


 ユイは頷いたものの、スコアだけを見て安心はしなかった。


「はい。ただし、次とは関係ありません」


「わかってる。でも二点リードは二点リードでしょ」


「それはその通りです」


 ECHOがTHIRDを見る。


 先ほどの衝突では、結局どちらも倒れなかった。


「次はどうしますか」


「まだわからない」


 THIRDが答える。


「あなたは?」


「私もです」


「いいね」


 ミカもFIRSTを見る。


 先ほど自分が倒した相手。


 FIRSTは悔しそうにも、警戒しているようにも見えない。


「先ほどは負けました」


 ミカから声をかけると、FIRSTは頷いた。


「うん。負けた」


「次は近距離へ来ませんか」


「わからない」


「私に撃たせたことは覚えていますか」


「覚えてるよ」


「では、それを避けようとは?」


「今は思ってない」


 ミカは少し考える。


「失敗したことと、次に同じことをしないことは別ですか」


「そう」


 FIRSTは当たり前のように答えた。


「同じことをしたくなったら、またする」


「また負けるかもしれません」


「負けるかもね」


「怖くありませんか」


「怖いよ。でも、一回失敗したくらいで好きなことまで禁止したら、次から自分で選べるものが減るでしょ」


 ミカは言葉を失った。


 ZEROが捨てているのは、失敗そのものではない。


 失敗から作られる禁止事項だ。


 これをやって負けた。


 だからもうやらない。


 この判断は間違っていた。


 だから次は必ず逆を選ぶ。


 そうやって自分の選択肢を狭めない。


「なるほど」


 ECHOが小さく呟いた。


 三人が見る。


「何がですか」


 レナが聞く。


「彼らは失敗した自分を、次の自分から排除しません」


 ユイも理解する。


「答えは持ち越さない。しかし、失敗した事実も、その選択をした自分自身も否定しない」


「だから同じこと、もう一回できる?」


「はい」


 レナはFIRSTを見る。


「それ、結構怖いね」


「何がですか」


「普通、やらかしたら次ちょっと怖くなるじゃん。同じことしてまた負けたらって」


 ミカが頷く。


「ZEROにも恐怖はあるそうです」


「でも、怖いからって選択肢から消さない」


「はい」


 ユイは一度、観戦席のNoNameを見そうになった。


 けれど途中で止める。


 今の答えは、NoNameにもらうものではない。


「私たちにも必要ですね」


 ユイが言った。


 レナが首を傾げる。


「何が?」


「失敗した時に、その人の選択そのものまで否定しないことです」


「それ、もうやってない?」


「かなりできるようにはなりました。ただ」


 ユイは自分自身を思い返す。


「私はまだ、失敗した選択を次に避けようとしすぎるところがあります」


 ミカも少し苦笑した。


「私もです。一度外した射線を、次は使わないように考えることがあります」


 ECHOも。


「私は、失敗すると役割を変えたくなることがあります」


 レナは三人を見てから、自分の胸を指差した。


「私は?」


 三人。


 少し考える。


 ユイが答えた。


「同じ失敗を何度もします」


「ひどくない!?」


 ミカが口元を押さえて笑う。


「ですが、今回に限っては長所かもしれません」


「今回に限ってって何!」


 ECHOも真顔で頷いた。


「適性があります」


「ECHOまで!」


 決勝中なのに、四人の間に笑いが広がった。


 ZERO側からSECONDがそれを見ている。


「楽しそうだな」


 レナが答えた。


「そっちもでしょ」


「まあね」


 ORIGINATORも三人を見た。


「次、どうする?」


 FIRSTが肩をすくめる。


「さっきと同じことしたい」


 ミカが少し驚く。


「本当に?」


「うん。今度は最後まで近距離やりたい」


 SECOND。


「私は中央行こうかな」


 THIRD。


「ECHOと話す」


 ORIGINATORは少し考える。


「俺は、まだ決めてない」


 作戦としては成立していない。


 それでも三人は誰も修正しない。


 ORIGINATORもまとめない。


 ユイはその光景を見ながら、ふと気づいた。


「レナ」


「何?」


「ZEROは、NoNameさんが昔壊したチームの反対側へ行ったのではないかもしれません」


「どういうこと?」


「NoNameさんがすべて決めていたから、今は誰も決めない――それだけなら、まだNoNameさんへの反発で形を作っています」


 ECHOが続ける。


「でも、違う」


「はい。彼らはもう、昔のNoNameさんへの反対をしているわけではありません」


 ミカもZEROを見る。


 彼らはNoNameを倒すためにこの戦い方を作ったのではない。


 そんな段階は、とっくに過ぎている。


「自分たちに合うところまで続けた結果、今こうなった」


「おそらく」


 だから強い。


 昔のNoNameへの答えではなく。


 今の自分たちの答えですらなく。


 ただ、その瞬間に選ぶ四人になった。


 次の開始カウントが始まった。


          ◇


 四回目。


 スコアは三対一でCrownlessがリード。


 残り九分を切った。


 START.


 宣言通り、FIRSTはミカへ一直線に向かった。


「本当に来ましたね」


「来た!」


「近距離?」


「近距離!」


 FIRSTが楽しそうに距離を詰める。


 ミカも今度は最初から下がらなかった。


「では、もう一度」


 二人がぶつかる。


 右ではSECONDが中央へ向かう。


 しかしレナは追わなかった。


「行かないの?」


 SECONDが聞く。


「今、THIRDの方行きたい」


「なんで?」


「ECHOと何話すのか気になる」


「試合中だよ?」


「知ってる!」


 レナがECHOとTHIRDの方へ走る。


「黒瀬レナさん」


 ECHOが気づく。


「何しに来たんですか」


「見に来た!」


「帰ってください」


「ひどい!」


 THIRDが笑う。


「本当に面白いね、この人」


「持っていきますか」


 ECHOが真顔で聞く。


「返品不可だよ」


「師匠にも断られます」


「勝手に返品すんな!」


 三人が騒いでいる間に、SECONDは一人で中央へ入った。


 一、二、三。


 ユイは見ている。


 止められる。


 しかし、すぐには行かない。


 ORIGINATORがまだ動いていないからだ。


「私を見ていますか」


 ORIGINATORが聞く。


「はい」


「NoNameみたいだね」


「それは褒めていますか」


「半分」


「残り半分は?」


「昔のあいつみたいになったら嫌だなって」


 ユイは目を細める。


「心配しているんですか」


「少し」


「では、ご安心ください」


「なぜ?」


 ユイは中央のSECONDを見る。


 保持五秒。


 それでも、まだ動かない。


「私が間違えた時は、三人が勝手に動きます」


 ORIGINATORが一瞬だけ笑った。


「それは安心だ」


 六秒。


 ユイは中央へ走った。


 ORIGINATORは追わない。


 七秒。


 SECONDがユイを見る。


「来た」


「はい」


 八秒。


 ユイが中央へ。


 競合。


 保持停止。


「惜しかった」


「二度目ですね」


「何が?」


「一点まであと少しで止められるのが」


 SECONDは首を傾げる。


「そうだっけ」


「……覚えていない?」


「覚えてる。でも、今それ関係ある?」


 ユイは少し笑った。


「いいえ」


 二人が中央でぶつかる。


 その瞬間。


 ORIGINATORが初めて大きく動いた。


 向かった先は中央ではない。


 ミカとFIRST。


 二人。


 激しく近距離戦を続けている。


「FIRST」


「何!」


「混ぜて」


「いいよ!」


 ORIGINATORがミカへ入る。


 二対一。


 ミカの表情が変わる。


「珍しいですね」


「何が?」


「助けるんですか」


「違う」


 ORIGINATORがミカの射線をかわす。


「俺も今、これやりたい」


「……なるほど」


 FIRSTを助けるためではない。


 ミカを倒すことがチームに必要だからでもない。


 ただ、二人の戦いを見て参加したくなった。


 その結果として。


 二対一。


 ミカが押される。


「ミカ!」


 レナが気づく。


 今なら助けに行ける。


 ECHOも。


 ユイも。


 だがミカが先に言った。


「来なくて大丈夫です」


 レナが止まる。


「二人だよ!」


「はい」


「持てる?」


 ミカはFIRSTの攻撃をかわし、ORIGINATORの一撃を受けた。


 体力が半分を切る。


「わかりません」


「なら」


「でも」


 ミカは息を整えながら笑った。


「今、もう少しやってみたいです」


 レナの口元が上がる。


「了解!」


 助けない。


 放置でもない。


 本人がやりたいと言ったから任せる。


 ECHOもTHIRDへ向き直った。


「続けます」


「うん」


 ユイもSECONDとの中央争いへ戻る。


 それぞれ。


 自分の場所。


 ミカ。


 二対一。


 厳しい。


 FIRST。


 正面。


 ORIGINATOR。


 横。


 一発。


 二発。


 ミカ。


 避ける。


 三発目。


 被弾。


 体力二割。


 FIRST。


 踏み込む。


「今度こそ!」


 ミカ。


 撃つ。


 FIRST。


 受ける。


 体力三割。


 ORIGINATOR。


 さらに横へ。


 ミカ。


 逃げ道。


 狭い。


 NoNameなら。


 ここで。


 相手の選択を削る。


 ORIGINATORは。


 違う。


 次。


 何をする。


 ミカには。


 わからない。


 それでも。


「わからなくても」


 小さく呟く。


 FIRST。


「何?」


「戦えます」


 ミカがORIGINATORではなくFIRSTへ踏み込んだ。


 近距離。


 撃つ。


 FIRSTも撃つ。


 相打ち。


 PLAYER DOWN.


 MIKA.


 PLAYER DOWN.


 FIRST.


 会場が大きく沸く。


 ミカは倒れた。


 それでも。


 一人。


 持っていった。


 ORIGINATORだけが残る。


「……強くなったな」


 その声はミカには届かない。


 ORIGINATORはすぐに別の場所を見る。


 中央。


 SECONDとユイ。


 右。


 ECHOとTHIRD。


 レナ。


 自由。


 次に。


 どこへ。


 行きたい。


 一瞬だけ。


 考える。


 そして。


「中央」


 走る。


 ユイが気づいた。


「二人になります」


 SECOND。


「来るんだ」


「今は」


 ORIGINATORが笑う。


「取りたい」


 SECONDも笑った。


「じゃ、取ろう」


 二対一。


 ユイ。


 押される。


 レナ。


 今度。


 迷わない。


「ユイ、行く!」


「お願いします!」


 レナが中央へ。


 四人。


 衝突。


 ECHOとTHIRDは。


 まだ。


 二人。


 右。


 THIRDが中央を見る。


「行く?」


 ECHOが聞く。


「今は行かない」


「私もです」


「じゃあ続けよ」


「はい」


 中央。


 ユイ。


 レナ。


 対。


 SECOND。


 ORIGINATOR。


 完全。


 二対二。


 誰も。


 指揮。


 しない。


 それでも。


 レナとユイ。


 互い。


 見える。


 ユイが一歩下がれば、レナが前へ出る。


 レナが追いすぎれば、ユイが中央へ残る。


 言葉。


 少ない。


 でも。


 関係。


 積み上がっている。


 一方。


 ZERO。


 SECOND。


 ORIGINATOR。


 その瞬間。


 初めて組む。


 それでも。


 噛み合う。


 SECONDが前へ出る。


 ORIGINATORは。


 後ろ。


 ではない。


 横。


 ユイの退路。


 入る。


 レナがSECONDへ。


 ユイがORIGINATORへ。


 四人。


 交差。


 一瞬。


 空いた。


 中央。


 SECOND。


 先。


 踏む。


 一。


 レナ。


 戻る。


 二。


 ORIGINATOR。


 レナ。


 止める。


 三。


 ユイ。


 SECONDへ。


 四。


 SECOND。


 耐える。


 五。


 レナ。


 ORIGINATOR。


 抜く。


 六。


 中央。


 あと。


 少し。


 ユイ。


 入る。


 七。


 競合。


 止まる。


 ORIGINATOR。


 後ろから。


 ユイ。


 攻撃。


 被弾。


 ユイ。


 体力。


 一割。


 SECOND。


 前。


 ユイ。


 挟まれる。


 レナ。


 間に合わない。


 PLAYER DOWN.


 YUI.


 中央。


 ZERO。


 二人。


 一。


 二。


 レナ。


 一人。


 突入。


 SECOND。


 受ける。


 ORIGINATOR。


 横。


 三。


 レナ。


 二対一。


 押される。


 四。


 五。


 ECHO。


 通信。


「レナ」


「何!」


「行きます」


 THIRDが驚く。


「今?」


「はい」


「私との話は?」


「今は中央が欲しいです」


「そっか」


 THIRDは追わなかった。


 ECHO。


 中央。


 六。


 七。


 レナ。


 被弾。


 体力。


 三割。


 八。


 ECHO。


 あと。


 少し。


 九。


 ORIGINATOR。


 ECHOを見る。


 止めに。


 行ける。


 でも。


 SECOND。


 中央。


 自分。


 レナ。


 目の前。


 一瞬。


 選ぶ。


 ECHOへ。


 向く。


 その一瞬。


 レナ。


 SECOND。


 押す。


 SECOND。


 中央から。


 出る。


 保持。


 停止。


 ECHO。


 到着。


 競合。


 得点。


 入らない。


 会場。


 歓声。


 四人。


 中央。


 混戦。


 リスポーン。


 ミカ。


 あと三秒。


 ユイ。


 あと六秒。


 誰も。


 動き。


 読めない。


 その時。


 THIRD。


 一人。


 右。


 中央を。


 見ていた。


「……楽しそう」


 小さく。


 笑う。


 そして。


 中央へ。


 走る。


 ZERO。


 三人。


 対。


 Crownless。


 二人。


 レナ。


「増えた!」


 ECHO。


「はい」


 THIRD。


「私も混ぜて」


 レナ。


「嫌!」


「敵だもんね」


 三対二。


 今度こそ。


 押される。


 ECHO。


 体力。


 半分。


 レナ。


 二割。


 中央。


 SECOND。


 再び。


 踏む。


 一。


 二。


 ミカ。


 復帰。


「戻りました」


 レナ。


「ミカ!」


 ミカ。


 中央。


 見る。


 走る。


 三。


 ORIGINATOR。


 ミカ。


 見る。


 四。


 THIRD。


 ECHO。


 止める。


 五。


 SECOND。


 保持。


 六。


 ミカ。


 射程。


 入る。


 撃つ。


 SECOND。


 回避。


 中央。


 少し。


 外れる。


 保持。


 停止。


「っ!」


 SECOND。


 笑う。


「止められた」


 ミカ。


「はい」


 レナ。


 ORIGINATORへ。


 突撃。


 ECHO。


 THIRD。


 押す。


 三人。


 また。


 散る。


 しかし。


 その瞬間。


 左資源。


 誰も。


 いない。


 ORIGINATOR。


 見る。


「SECOND」


「何?」


「左、取りたい?」


「今は中央」


「了解」


 ORIGINATOR。


 一人。


 左へ。


 行く。


 レナ。


「また勝手!」


 追う。


 ORIGINATOR。


 振り返る。


「来る?」


「行く!」


 二人。


 左。


 中央。


 SECOND。


 ミカ。


 右。


 THIRD。


 ECHO。


 ユイ。


 復帰。


 盤面。


 また。


 ばらばら。


 誰も。


 予定していない。


 それでも。


 試合。


 続く。


 残り。


 七分二十一秒。


 スコア。


 三対一。


 Crownless。


 まだ。


 二点。


 リード。


 だが。


 ユイは復帰地点から全体を見て、初めてはっきり感じた。


 ZEROは。


 まだ。


 勝ち方を。


 選んでいない。


 それでも。


 少しずつ。


 盤面を。


 奪い始めている。


 そして。


 もっと。


 厄介なこと。


 見えた。


 Crownlessは。


 ZEROの戦い方を理解するほど。


 相手に。


 近づいている。


 答えを持ち越さない。


 今の自分を見る。


 失敗した選択も捨てない。


 それは。


 確かに。


 学ぶべきもの。


 でも。


「違う」


 ユイが小さく言った。


 ECHOが聞く。


「何がですか」


「私たちは、ZEROになってはいけません」


 一瞬。


 三人。


 聞く。


 ユイは走りながら続ける。


「彼らから学ぶことはできます。でも、彼らと同じになれば、私たちが積み上げてきたものまで捨てることになります」


 ミカが理解した。


「私たちは、持ち越すものがある」


「はい」


 レナ。


 ORIGINATORを追いながら叫ぶ。


「何!」


 ユイは三人を見る。


「誰が何をしたか。誰が失敗したか。誰が何を好きなのか」


 ECHO。


「関係」


「はい」


 ZEROは答えを持ち越さない。


 Crownlessも、答えに縛られる必要はない。


 でも。


 一緒に積み上げてきた時間まで。


 毎回。


 ゼロへ。


 戻す必要はない。


 ミカが笑った。


「では、使いましょう」


「何を」


 レナ。


 ミカは即答した。


「全部です」


 レナが一瞬止まり、次に笑った。


「それなら得意!」


 ECHOも頷く。


「受け取ります」


 ユイは盤面を見る。


 前の一点から答えを作らない。


 けれど。


 過去の四人を。


 捨てない。


 ミカが撃たなかったことも、撃ったことも。


 レナが前へ出たことも、止まれたことも。


 ECHOが役割を探していたことも、自分で選べるようになったことも。


 自分が全部を決めていたことも、任せられるようになったことも。


 全部。


 今の四人に。


 残っている。


「次」


 ユイが言った。


「私たちのやり方で取ります」


 三人から返事が来る。


「はい」


「了解!」


「受け取ります」


 その声を聞いたORIGINATORが、左資源へ向かいながら一度だけCrownlessを見た。


 そして、少し嬉しそうに笑う。


「そう。それが見たかった」


 ユイの目が鋭くなる。


「何をですか」


「昔の俺たちじゃないもの」


 ORIGINATORはそれ以上説明せず、左資源へ手を伸ばした。


 レナがそこへ飛び込む。


「だったら!」


 拳を構える。


「最後まで見て!」


 ORIGINATORも構えた。


「そのつもりだよ」


 残り七分。


 Crownless、三。


 ZERO、一。


 決勝はまだ半分以上残っている。


 ここからようやく、ZEROから学ぶ試合ではなく、ZEROとは違うCrownlessとして戦う試合が始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。