第三十七話 最後に残るのは、役割ではない
延長戦。
復帰なし。
勝利条件は二つ。
中央端末へ触れ、五秒間維持する。
あるいは。
相手チームを全滅させる。
六人の体力は、そのまま引き継がれている。
ミカ、六割。
ユイ、七割。
レナ、五割。
相手一、六割。
相手二、七割。
相手三、五割。
戦術ポイントも。
中央制圧率も。
ここからは意味を持たない。
たった一つの端末。
たった一度の命。
誰か一人でも倒れれば。
人数差が、そのまま最後まで残る。
中央端末が起動した。
両チームが。
同時に踏み込む。
ミカは左。
ユイは中央後方。
レナは右。
相手一も左。
相手二は中央後方。
相手三は右。
また。
同じ役割同士が向かい合う形。
しかし。
もう誰も。
鏡とは思わなかった。
相手一は。
自分で撃つ対象を選ぶ時、速い。
相手二は。
二人を生かすためなら、自分を盤面の外へ置く。
相手三は。
支援がなくても前へ出る。
それぞれの選手。
現在の相手。
端末まで。
あと十メートル。
相手一が最初に撃った。
狙いはミカではない。
レナの足元。
相手三が前へ入る道を作るため。
ミカ。
相手一、レナさんを動かします。
レナ。
見えてる。
レナは射線から逃げなかった。
逆に前へ。
弾の着弾位置を越える。
相手三も踏み込む。
二人が端末の右で衝突する。
ユイは相手二を見る。
支援を置く位置。
中央端末の周囲ではない。
相手一の射線と。
相手三の退路。
二つを繋ぐ場所。
自分は守らない。
ユイ。
相手二、自分の戻り場所を作りません。
ミカ。
受け取りました。
相手二の支援が完成する。
同時に。
ユイも支援を置いた。
端末の後ろ。
ミカとレナ。
どちらからも一歩で戻れる。
だが。
ユイ自身からは遠い。
レナ。
ユイ、自分の場所ないよ。
ユイ。
はい。
ミカ。
相手二と同じになります。
ユイの指が一瞬止まる。
二人のため。
自分を外へ。
相手二の強さを見た直後。
無意識に。
同じ判断へ入ろうとした。
ユイ。
整えたいです。
レナ。
受け取った。
ミカ。
ユイさんも入れる場所にしてください。
ユイ。
戻ります。
ユイは支援の端を一つ削った。
完成した範囲が狭くなる。
代わりに。
自分の足元へ続く細い道を残す。
完璧ではない。
三人全員が、ぎりぎり使える。
戻れる未完成。
相手二の支援より。
見た目は弱い。
だが。
ユイも盤面の中にいる。
端末まで。
あと五メートル。
ミカと相手一が撃ち合う。
一発。
互いに避ける。
ミカは相手一を狙わない。
相手二の支援装置。
だが。
相手一が先に撃つ。
ミカの弾道上。
遮蔽物を破壊。
射線が切れる。
自分を守る射撃ではない。
味方の支援を守る射撃。
以前なら一拍遅れた。
今は速い。
ミカ。
相手一、守る判断の遅れを消しています。
ユイ。
はい。
レナ。
もう昔の癖ないね。
相手三の踏み込みも。
左肩が下がらない。
フェイントもない。
最短。
レナへ一撃。
レナは避ける。
反撃。
相手三も避ける。
互いに。
癖を読ませない。
自分自身の動きを。
その場で削っている。
レナ。
面倒。
ミカ。
強いです。
ユイ。
はい。
端末。
両チームが同時に範囲へ入る。
三対三。
競合。
取得開始しない。
ここから。
誰かを範囲外へ出すか。
倒す必要がある。
相手二が最初に動いた。
ユイへ支援。
自分と同じ役割。
ではない。
ユイが三人の間を繋いでいるから。
その細い戻り道へ。
支援を重ねる。
ユイの未完成を。
完成した相手二の範囲で押し潰す。
ユイ。
戻り道を切られます。
ミカ。
撃ちます。
レナ。
私が前出る。
二人が動こうとする。
だがユイが止めた。
ユイ。
保留。
ミカ。
一人で受けますか。
ユイ。
いいえ。
相手二の支援だけを見ない。
相手一はミカへ。
相手三はレナへ。
二人とも。
ユイを助けさせない位置にいる。
相手二は。
自分一人でユイを押しているのではない。
三人で。
ユイを一人に見せている。
ユイ。
三人を見ます。
相手二の支援が前へ。
ユイは下がらない。
自分の支援を維持したまま。
横へ。
相手二の範囲から外れ。
相手一と相手三の間へ近づく。
危険。
二人から狙われる位置。
だが。
相手一がユイを撃てば。
ミカへの射線が消える。
相手三がユイへ向かえば。
レナの前が空く。
ユイ。
私を託します。
ミカ。
受け取ります。
レナ。
受け取った。
ユイが端末の中央へ。
三方向から狙われる。
相手二が支援。
相手一が照準。
相手三が一歩。
三人の意識がユイへ寄る。
その瞬間。
ミカが相手一の退路を撃った。
レナが相手三の足元へ圧。
二人を。
端末の外へ。
相手一が一歩下がる。
相手三も横へ。
端末内。
Crownless三人。
CROWNED一人。
取得開始。
五。
四。
相手二が一人で端末へ残る。
支援を自分へ。
初めて。
自分を守る場所。
ユイがそれを見る。
相手二は変わった。
二人のためだけではない。
自分が残らなければ負ける。
だから自分を守る。
正しい。
ユイ。
相手二が自分を支援しています。
レナ。
押す?
ユイ。
いいえ。
ミカ。
倒しますか。
ユイ。
いいえ。
三秒。
相手一と相手三が戻ってくる。
二秒。
三対三へ戻る。
取得停止。
相手二を押し切れなかった。
だが。
端末維持時間は。
二秒進んだ。
残り三秒。
延長戦の端末は。
一度離れても進捗が消えない。
先に合計五秒。
Crownless、二秒。
CROWNED、ゼロ。
実況が叫ぶ。
Crownless、端末を二秒維持! あと三秒で勝利です!
解説。
ただし復帰なし。ここからはCROWNEDも強く出てきます!
相手一の射線が変わった。
ミカを倒しに来る。
自分で撃つ対象を決めた時の速さ。
一発。
ミカが避ける。
二発目。
足元。
ミカを端末外へ。
ミカは前へ避ける。
相手一に近づく。
前の試合。
壁際から距離を詰めて勝った動き。
相手一は知っている。
すぐに下がる。
距離を維持。
ミカの前進を読んでいる。
ミカ。
前は待たれています。
ユイ。
次は?
ミカは見る。
後ろ。
相手一の射線がある。
左。
遮蔽物なし。
右。
相手二の支援。
どこも。
相手一が準備している。
まだ使ったことのない動き。
もう。
すぐには見つからない。
相手一が撃つ。
ミカは避けた。
いつもの右。
読まれている。
二発目。
被弾。
体力、四割。
ミカ。
戻りたいです。
ユイ。
端末後方。
レナ。
私が相手一見る。
ミカ。
受け取ります。
ミカが下がる。
相手一が追う。
レナが相手三との対面を捨て。
相手一へ圧を向ける。
近距離役が自分へ来る。
相手一の射撃が一瞬止まる。
ミカが端末後方へ。
ユイの未完成支援。
ミカ。
戻りました。
ユイ。
おかえりなさい。
レナ。
おかえり。
しかし。
レナが相手三から目を離した。
相手三が前へ出る。
速い。
ユイへ。
相手二の支援も重なる。
二対一。
ユイが押される。
端末外へ。
CROWNED三人が端末内。
Crownlessはミカとレナだけ。
CROWNEDの取得開始。
五。
四。
ユイ。
私が外です。
ミカ。
戻せます。
レナ。
行く。
二人がユイへ道を作ろうとする。
相手一がミカを射線で止める。
相手三がレナへ。
相手二は端末を維持。
CROWNED、残り三秒。
ユイは端末外。
支援も届かない。
正面から入れば。
相手三の攻撃。
相手一の射線。
相手二の支援。
ユイ。
戻れません。
ミカ。
別の場所を作ります。
レナ。
どこ。
ユイ自身が見る。
端末へ戻る場所ではない。
ミカとレナの間。
二人の後ろ。
一歩下がれば入れる場所。
勝利条件から遠ざかる。
だが。
今、端末へ無理に戻れば落ちる。
ユイ。
後ろへ戻ります。
ミカ。
受け取ります。
レナ。
道空ける。
ユイが下がる。
CROWNEDの端末取得は進む。
残り二秒。
ユイは勝利条件から離れた。
代わりに。
ミカとレナの背後へ。
ユイ。
戻りました。
ミカ。
おかえりなさい。
レナ。
おかえり。
三人が端末外。
CROWNED三人が中。
残り二秒。
このままでは負ける。
ユイ。
次は戻りません。
ミカ。
はい。
レナ。
止める。
三人で端末へ。
正面。
相手一が撃つ。
相手二が支援。
相手三が前。
ミカは相手一を撃たない。
相手二の支援装置。
一発。
破壊できない。
耐久が残る。
ユイも支援。
同じ装置へ干渉。
レナが。
装置そのものへ踏み込む。
相手三が止める。
レナは攻撃しない。
身体で装置への支援経路を遮る。
ミカの二発目。
破壊。
相手二の支援が消える。
ユイが端末へ一歩。
相手一の射線。
ミカが間へ。
被弾。
体力、二割。
それでも。
ユイが端末内へ。
競合。
CROWNED取得停止。
残り二秒。
会場が大きく沸く。
実況。
月城選手が戻った! CROWNED、あと二秒から進めません!
ミカは低体力。
相手一が狙う。
次の一発で落ちる。
レナも。
相手三との衝突で体力三割。
ユイは五割。
相手側。
相手一四割。
相手二五割。
相手三三割。
六人とも。
一度のミスで落ちる。
そして。
復帰はない。
相手二が全体チャットへ一文を送った。
CROWNED。
次に落ちた人は、帰れない。
短い。
挑発ではない。
事実。
レナ。
知ってる。
ユイ。
返答は不要です。
ミカ。
はい。
次に落ちた人は戻れない。
なら。
落ちないために下がるか。
勝つために残るか。
第一試合。
三人は勝利条件へ残り。
同時に落ちた。
第二試合では。
一人ずつ戻った。
今度は。
戻れない。
一度の命。
相手一がミカを見る。
相手二がユイ。
相手三がレナ。
また。
同じ役割同士。
最も勝率の高い相手。
CROWNEDの正解。
ユイ。
相手を交換しますか。
レナ。
待たれてる。
ミカ。
戻しても対応されます。
ユイ。
はい。
では。
交換しない。
同じ相手と。
正面。
それも読まれている。
正解がない。
NoNameなら。
負け筋を分解する。
だが。
答えは渡さない。
三人で見る。
ミカは。
相手一の照準を見る。
自分へ。
迷いなし。
ユイは。
相手二の支援を見る。
自分へ。
レナは。
相手三の姿勢を見る。
踏み込み。
全員。
自分に似た役割を狙っている。
でも。
鏡ではない。
なぜ。
最も適した相手だから。
なら。
その正しさを。
崩す必要はない。
使う。
ユイ。
全員、自分の相手を見てください。
レナ。
倒す?
ユイ。
いいえ。
ミカ。
何を。
ユイ。
相手が私たちだけを見る時間を作ります。
ミカは理解する。
相手一はミカ。
相手二はユイ。
相手三はレナ。
それぞれ。
自分の相手へ集中する。
三つの一対一。
誰も。
端末そのものを見ない。
ユイ。
端末を、誰にも託しません。
レナ。
じゃあ誰が取る。
ユイ。
取れる人が取ります。
決めない。
端末役を作らない。
三人とも。
自分の相手と戦う。
その中で。
最初に相手を動かした人が。
端末へ触れる。
ミカ。
受け取りました。
レナ。
受け取った。
三つの対面。
相手一が撃つ。
ミカが避ける。
相手二が支援。
ユイが支援で押し返す。
相手三が踏み込む。
レナが横へ。
六人。
端末周囲。
ミカは撃つ。
相手一の足元。
相手一が避ける。
端末外へ。
だが。
ミカも射線を避けるため外へ。
二人とも端末から離れる。
ユイと相手二。
支援同士。
互いに押す。
どちらも端末内。
競合。
レナと相手三。
近距離。
互いに一撃。
二人とも端末外へ。
中央に残ったのは。
ユイと相手二。
二人。
相手二がユイを見る。
ユイも。
戦略役同士。
支援の速度では相手二が上。
相手二が足元へ。
ユイは避ける。
端末外へ出れば。
相手二一人。
CROWNEDの取得が始まる。
残り二秒。
避けられない。
なら。
ユイは支援から出なかった。
被弾。
移動阻害。
体力が減る。
四割。
三割。
それでも端末内。
競合を維持。
ユイ。
整えたいです。
ミカ。
受け取ります。
レナ。
何を整える。
ユイ。
二人が戻るまでの一秒だけ。
完成ではない。
端末。
一秒だけ。
ミカとレナが戻る場所。
ユイは自分の支援を。
端末後方へ。
相手二の攻撃を受けながら。
二人への道を作る。
ミカが戻る。
相手一も追う。
レナも。
相手三も。
再び三対三。
ユイの体力、二割。
最も危ない。
相手二が気づく。
相手一も。
相手三も。
三人の狙いが。
ユイへ寄った。
全滅ではない。
一人落とせば。
三対二。
復帰なし。
ほぼ決まる。
ユイ。
三人、私を見ます。
ミカ。
離れてください。
レナ。
私が前出る。
ユイは。
下がろうとした。
だが。
後ろには。
自分が作ったミカとレナの戻り道。
二人が使っている。
自分が下がれば。
道が重なる。
三人まとめて狙われる。
ユイ。
戻り場所がありません。
昔の自分と同じ言葉。
相手二に対して見つけた弱点。
二人のために作り。
自分の場所がない。
今。
ユイも同じ。
だが。
一つ違う。
ユイ。
作ります。
自分で。
二人に作ってもらうのではない。
端末内。
左。
相手一の射線。
右。
相手三。
後ろ。
ミカとレナ。
前。
相手二。
どこにもない。
なら。
相手二の場所。
正面。
そこへ。
ユイは前へ出た。
支援を受けるのではなく。
相手二へ近づく。
相手二が驚いたように、一歩下がる。
戦略役が。
近距離へ来る。
想定外。
ユイは攻撃しない。
相手二を押すだけ。
身体が触れる距離。
相手二が端末外へ一歩。
ユイも前へ。
相手二のいた場所を。
自分の戻る場所にした。
ユイ。
戻りました。
ミカ。
おかえりなさい。
レナ。
おかえり。
ユイ。
ただいま。
CROWNED三人の照準がユイへ。
だが。
ユイは相手二のいた位置。
相手一と相手三の攻撃線が。
味方の相手二と重なる。
撃てない。
相手二自身も。
近すぎて支援を置けない。
一瞬。
ユイが守られる。
相手の配置によって。
ミカ。
今です。
ミカが相手一へ。
レナが相手三へ。
二人が同時に前。
相手一と相手三を端末外へ動かす。
端末内。
Crownless三人。
CROWNED相手二だけ。
Crownless取得再開。
残り三秒。
相手二が踏みとどまる。
三対一。
それでも下がらない。
二人が戻るまで。
時間を作る。
ユイは相手二を見た。
自分に戻る場所を作らなかった選手。
だが。
今は。
二人が戻る場所として。
一人で残っている。
ユイ。
強いです。
相手二から返事はない。
Crownless残り二秒。
相手一が戻る。
ミカが止める。
相手三も。
レナが止める。
相手二はユイ。
三つの対面。
また。
だが。
端末時間は残り二秒。
誰か一人。
相手を一秒止めれば。
勝てる。
ミカ。
撃ちます。
レナ。
前出る。
ユイ。
私は残ります。
三人が。
自分の役割へ。
相手一も撃つ。
相手三も前。
相手二も支援。
すべて同時。
ミカの弾。
相手一の弾。
互いに命中。
ミカ。
体力。
ゼロ。
HOSHINO_MIKA DOWN
同時。
相手一も。
OPPONENT_1 DOWN
二人が倒れた。
復帰なし。
二対二。
端末内。
ユイとレナ。
相手二と相手三。
Crownless取得。
残り一秒。
レナと相手三が衝突。
互いに攻撃。
レナの体力がゼロ。
KUROSE_RENA DOWN
相手三も。
OPPONENT_3 DOWN
残るのは。
ユイ。
相手二。
二人だけ。
ミカも。
レナも。
相手一も。
相手三も。
戻れない。
中央端末。
ユイと相手二。
一対一。
Crownlessは。
残り一秒。
CROWNEDは残り二秒。
ユイが一秒だけ残れば。
勝つ。
相手二がユイを外へ押せば。
CROWNEDの取得へ。
支援。
相手二が先。
ユイの足元。
移動阻害。
ユイの体力は二割。
避ければ端末外。
残れば落ちる。
戻る場所はない。
二人もいない。
おかえりと言ってくれる人は。
ゲーム内には。
もう残っていない。
だが。
託されたものはある。
ミカが相手一を落とした。
レナが相手三を落とした。
二人は。
ユイ一人を残すために倒れたのではない。
それぞれ。
自分の相手を止めた。
その結果。
最後にユイがいる。
相手二の支援が来る。
ユイ。
整えたいです。
返事はない。
ミカもレナも倒れている。
だが。
ディスコードは繋がっている。
ミカ。
聞こえています。
レナ。
受け取った。
倒れていても。
声はある。
ユイの胸が熱くなる。
ユイ。
一秒だけ。
ミカ。
整えてください。
レナ。
最後まで作れ。
ユイ。
はい。
ユイは避けなかった。
相手二の支援を受ける。
体力が減る。
一割。
移動速度が落ちる。
それでも。
端末内。
相手二が前へ。
直接押し出す。
ユイは自分の足元へ支援。
戻る場所ではない。
移動する場所でもない。
その場から。
一秒だけ動かないための支援。
相手二と。
支援同士が重なる。
相手二がユイを押す。
ユイの足が。
端末境界線へ。
半歩。
あと少し。
Crownless取得。
残り。
一秒。
時間が進まない。
競合人数は一対一。
相手二を範囲外へ出さなければ。
維持時間は減らないが。
完成もしない。
ユイは一人で相手二を押し出せない。
戦闘力で負ける。
支援速度でも。
相手二が上。
それでも。
一つ。
ユイには。
相手二が持っていないものがある。
相手二は。
自分のための支援を作ることを覚えた。
だが。
それは。
自分を守る完成した場所。
ユイの支援は。
未完成。
一か所。
空いている。
相手二がユイを押すため。
その空白へ踏み込む。
ユイは。
そこを閉じなかった。
待った。
相手二が入る。
そして。
支援を消した。
自分の足元の支援。
すべて。
ユイの移動阻害も消える。
同時に。
相手二が踏み込んだ空間には。
何もなくなる。
相手二の身体が。
勢いのまま前へ。
ユイの横を通る。
端末の反対側へ。
境界線。
相手二が一歩。
範囲外。
競合解除。
Crownless三人。
いや。
端末内にいるのはユイ一人。
取得再開。
残り一秒。
相手二が振り返る。
戻ろうとする。
ユイは支援を置かない。
攻撃もしない。
ただ。
そこに立つ。
一。
零。
端末維持完了。
WINNER
CROWNLESS
一瞬。
何も聞こえなかった。
画面の中央。
勝利表示。
Crownless。
第二試合勝利。
相手二は。
端末へ戻る直前。
あと半歩。
間に合わなかった。
次の瞬間。
会場が爆発した。
実況の叫びが。
遅れて耳へ入る。
決着! 最後に残った月城選手が、相手二を端末範囲外へ誘導! Crownlessが延長戦を制しました!
解説。
最後に支援を完成させなかった! 空けていた一か所へ相手を踏み込ませ、支援を消した反動で範囲外へ出しました!
ユイは画面を見つめた。
勝った。
一人で。
違う。
一人だけ残った。
けれど。
一人で勝ったわけではない。
ミカが相手一を止めた。
レナが相手三を止めた。
二人の声が。
最後まで届いた。
ユイ。
取りました。
ミカ。
はい。
レナ。
見てた。
ユイの指が少し震える。
ユイ。
二人とも。
ミカ。
はい。
ユイ。
戻れませんか。
ゲーム内では。
復帰なし。
二人のキャラクターは倒れたまま。
戻れない。
レナ。
試合終わったから戻れる。
ミカ。
役割から戻ります。
ユイは目を閉じた。
ユイ。
戻ってください。
ミカ。
戻りました。
レナ。
戻った。
ユイ。
おかえりなさい。
ミカ。
ただいま。
レナ。
ただいま。
そして。
二人から返ってくる。
ミカ。
ユイさんも戻ってください。
レナ。
一人で端末に残るの終わり。
ユイは。
自分のキャラクターを見る。
まだ中央端末に立っている。
勝利表示の中。
一人。
それを閉じる。
ユイ。
戻ります。
ミカ。
おかえりなさい。
レナ。
おかえり。
ユイ。
ただいま。
ようやく。
三人の勝利になった。
スコア表示。
CROWNED。
一。
CROWNLESS。
一。
準決勝。
最終試合へ。
CROWNEDから。
全体チャットに一文が届く。
CROWNED。
良い勝利でした。
Rogueが言った言葉ではない。
NoNameが使う言葉。
CROWNEDが。
どこで知ったのか。
ミカの目が動く。
レナも。
ユイは少しだけ止まった。
だが。
今は問いを投げない。
ユイ。
ありがとうございます。
短く返す。
CROWNED。
次は、再現をやめます。
三人が黙った。
レナ。
今までも途中からやめてたじゃん。
ユイ。
完全には捨てていませんでした。
ミカ。
最初は必ず、私たちに似た役割から始めていました。
左高所の相手一。
中央後方の相手二。
右地下の相手三。
途中で変化しても。
基準には。
ミカ。
ユイ。
レナ。
三人の過去があった。
CROWNED。
最終試合では、TRACE、GRID、RUSHを使用しません。
大型スクリーンが変わる。
CROWNEDの選手表示。
TRACE。
GRID。
RUSH。
三つのコードネームが。
消えた。
代わりに。
数字だけ。
PLAYER 1
PLAYER 2
PLAYER 3
役割表示も消える。
射撃。
戦略制御。
近距離。
すべて。
未登録。
レナ。
何でもやるってこと?
ユイ。
可能性があります。
ミカ。
私たちの過去を使わない。
CROWNED。
次は、私たち自身で戦います。
その一文。
ミカの胸が強く鳴る。
第二試合で。
ようやく現在の相手を見た。
癖。
選択。
関係。
それを見つけて勝った。
だが。
次は。
三人が自分たちの役割そのものを捨てる。
相手一は射撃役ではない。
相手二は戦略役ではない。
相手三は近距離役ではない。
誰が撃つ。
誰が作る。
誰が入る。
何もわからない。
レナ。
また一からじゃん。
ユイ。
はい。
ミカ。
でも。
二人が見る。
ミカは。
向かい側の半透明パネルを見る。
顔も。
名前も。
まだ知らない。
それでも。
一つだけ知っている。
三人は。
互いに戻る場所を作る。
誰かが欠ければ。
二人で次の形を作る。
一人を置いていかない。
勝利条件を捨ててでも。
三人へ戻ることを選べる。
役割を消しても。
それは消えない。
ミカ。
ゼロではありません。
ユイ。
はい。
レナ。
三人なのは変わらない。
NoNameから。
試合終了後、初めてメッセージが来た。
NoName。
良い勝利です。
ユイ。
ありがとうございます。
ミカ。
見ていましたか。
NoName。
見ていました。
レナ。
最後、読めた?
少し間。
NoName。
途中までは。
ユイ。
支援を消す場面は?
NoName。
読めませんでした。
ユイの胸が少し温かくなる。
NoNameが選んだ相手。
NoNameが知る。
過去の三人。
その先で。
また一つ。
彼にも読めない判断をした。
NoName。
ただし。
三人が画面を見る。
NoName。
最終試合のCROWNEDは、私にも分析できていません。
レナ。
選んだのに?
NoName。
選出時に見たことがない形です。
ミカ。
あの三人も。
ユイ。
この大会中に変わった。
NoName。
はい。
CROWNEDも。
Crownlessと戦い。
変化した。
最初は。
三人の女王を再現するために集められた。
今は。
再現をやめる。
自分たち自身で戦うと言った。
Crownlessが。
彼女たちを。
いや。
彼らを。
過去の役割から外した。
レナ。
ノーにもわからない相手。
NoName。
はい。
レナ。
じゃあ公平。
ミカ。
何がですか。
レナ。
私たちにもわかんない。
ノーにもわかんない。
ユイ。
相手自身にも、まだ完成形はわからないかもしれません。
ミカ。
両方、未完成。
ユイ。
はい。
完成した過去の三人と。
冠なしの未完成な三人。
そういう試合ではなくなった。
次は。
未完成のCrownless。
未完成になったCROWNED。
互いに。
次の一歩がわからない。
NoNameの答えもない。
最終試合まで。
残り五分。
ユイは資料を閉じた。
相手の過去映像。
第一試合。
第二試合。
すべて。
見返す時間はある。
だが。
次は同じ役割を使わない。
資料へ戻れば。
また過去を見る。
ユイ。
映像確認はしません。
ミカ。
はい。
レナ。
何する?
ユイ。
休みます。
レナ。
五分しかない。
ユイ。
だからです。
三人はヘッドセットを少し外した。
外の歓声が入る。
決勝進出を懸けた。
準決勝最終試合。
観客の熱。
実況の声。
それでも。
少しだけ離れる。
ミカは水を飲む。
ユイは目を閉じる。
レナはコントローラーを布で拭いた。
負けた時にする癖。
だが今日は。
まだ負けていない。
ミカ。
レナさん。
レナ。
何。
ミカ。
勝っているのに拭くんですね。
レナは手を止めた。
少し考える。
レナ。
次、負けたくないから。
ユイ。
それは因果関係がありますか。
レナ。
ない。
ミカは笑った。
三人とも疲れている。
でも。
怖くはない。
相手の役割がわからない。
NoNameにもわからない。
それでも。
見ればいい。
試合が始まった後。
現在の相手を。
また一から。
残り一分。
三人はヘッドセットを戻す。
CROWNEDの選手表示。
PLAYER 1。
PLAYER 2。
PLAYER 3。
役割なし。
顔なし。
名前なし。
NoNameから。
最後の一文。
NoName。
三人とも。
ミカ。
はい。
ユイ。
はい。
レナ。
何。
NoName。
今のCROWNEDは、私が選んだチームではありません。
ユイ。
意味は。
NoName。
私が選んだ時より、先へ進んでいます。
ミカの胸が鳴る。
相手も。
NoNameの知っている場所を越えた。
Crownlessと同じ。
NoName。
勝敗は予測できません。
レナ。
それでいい。
ミカ。
はい。
ユイ。
私たちが決めます。
最終試合。
三。
二。
一。
開始。
CROWNEDの三人が動いた。
PLAYER 1は。
左高所へ行かなかった。
中央後方でも。
右地下でもない。
三人全員が。
同じ場所へ。
マップの最奥。
勝利条件から最も遠い。
誰も使わない。
行き止まりへ走った。
ミカ。
三人とも奥です。
レナ。
何で。
ユイは答えなかった。
見る。
CROWNEDの三人が。
行き止まりへ到着する。
そして。
そこで。
すべての装備を交換した。
PLAYER 1が支援装置。
PLAYER 2が近距離装備。
PLAYER 3が長距離武器。
役割。
完全交換。
さらに。
三人は。
Crownlessへ向かわなかった。
互いへ武器を向けた。
レナ。
何してるの。
次の瞬間。
PLAYER 1がPLAYER 2を撃った。
味方への攻撃。
体力が減る。
PLAYER 2もPLAYER 3へ。
PLAYER 3もPLAYER 1へ。
三人が。
自分たちの体力を。
意図的に削り始めた。
九割。
八割。
七割。
実況が叫ぶ。
CROWNED、味方同士で攻撃! 最終試合開始直後から、三人全員が自分たちの体力を減らしています!
ミカは息を止めた。
全滅条件。
復帰時間。
体力差。
すべてを操るため。
あるいは。
別の目的。
ユイ。
見ます。
レナ。
止めなくていい?
ユイ。
まだです。
CROWNEDの三人。
体力。
五割。
三人とも。
完全に同じ数値で止めた。
そして。
同時に。
Crownlessへ向き直った。
役割は交換済み。
体力も同じ。
過去の再現なし。
癖も。
担当も。
誰が中心かも。
わからない。
全体チャット。
CROWNED。
これで、誰を先に倒しても同じです。
三人が。
一斉に走り出した。
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