第三十五話 過去の私たちが、三人で来た
準決勝。
CROWNLESS。
対するは。
CROWNED。
金色の冠を掲げた三人は、最後まで顔を見せなかった。
選手席を囲う半透明のパネル。
深く被られたフード。
大型スクリーンにも映されるのは、ゲーム内のコードネームだけ。
TRACE。
GRID。
RUSH。
射撃。
戦略制御。
近距離。
星野ミカ。
月城ユイ。
黒瀬レナ。
三人が、かつて最も得意としていた勝ち方。
NoNameが誰よりも詳しく知っている、昔の三人。
その強さだけを別の選手が受け取り。
感情による揺れを減らし。
一つのチームとして噛み合わせた。
試合開始まで、残り十秒。
ミカはマウスを握った。
向かい側にいるTRACEの姿は見えない。
だが。
その手が、どのタイミングで射撃ボタンへ触れるのか。
なぜか想像できる。
敵を見つけたから撃つのではない。
撃てる位置へ自分から入り。
見えた瞬間に倒す。
かつてのミカと同じ。
ユイもGRIDの初動を想像している。
開始直後から中央後方へ。
三人全員の位置を繋ぐ。
資源。
退路。
支援。
すべてが一つの盤面へ収まる場所。
昔のユイが、最初に作ろうとしていた完璧な形。
レナの前にはRUSH。
待たない。
相手の判断が終わる前に前へ出る。
迷いが生まれる前に殴る。
昔のレナが信じていた速さ。
カウント。
三。
二。
一。
開始。
CROWNEDの三人は。
予想通りに動いた。
TRACEが左高所。
GRIDが中央後方。
RUSHが右地下。
一切の迷いがない。
ミカの胸が強く鳴った。
知っている。
あの高所への入り方。
入口へ到達する直前。
一度だけ中央へ照準を向ける。
敵が中央へ走っていれば撃つ。
いなければ、そのまま高所。
ミカが何度も使っていた確認方法。
ミカ。
TRACE、中央を一度見ます。
ユイ。
受け取りました。
レナ。
RUSHは、そのまま地下から来る。
ユイ。
GRIDは中央後方へ入ります。
三人の声が重なる。
相手の初動が。
見える。
いや。
覚えている。
TRACEが中央へ照準を向けた。
ミカはその射線へ入らない。
半歩止まり。
左の低い遮蔽物へ。
TRACEの確認射撃は来ない。
そのまま高所へ進む。
ミカ。
左高所へ入りました。
ユイ。
GRID、支援設置まで二秒。
レナ。
RUSH来る。
右地下からRUSHが飛び出した。
速い。
レナが間合いへ入るより先に。
RUSHが攻撃を置く。
昔のレナなら。
その攻撃へ正面から攻撃を重ねていた。
相手より早く。
相手より強く。
一撃の交換になっても、自分が押し切る。
だが今のレナは止まった。
レナ。
殴りたい。
ミカ。
受け取りました。
ユイ。
一歩待ってください。
RUSHが踏み込む。
レナは半歩下がる。
空振り。
RUSHの攻撃が、レナの目の前を通り過ぎた。
レナ。
見えた。
反撃。
一撃。
RUSHの体力が削れる。
会場が沸いた。
実況。
黒瀬選手、RUSHの開幕攻撃を待って返した! 過去映像の黒瀬選手とは正反対の対応です!
解説。
Crownlessは相手の再現する戦い方を把握しています。これはCROWNEDにとって厳しいかもしれません!
左高所。
TRACEがミカへ射線を置く。
その角度も知っている。
高所を取った後。
最初に撃つのは、相手の現在地ではない。
退路。
一発目で動きを制限し。
二発目で本体を狙う。
ミカが昔から使ってきた形。
ミカ。
退路へ来ます。
ユイ。
左へ支援を置きません。
ミカ。
はい。
ユイが戻り場所を作らない。
ミカはTRACEの一発目を待つ。
射撃。
予想通り。
弾はミカの背後。
退路へ着弾。
ミカは下がらなかった。
前へ一歩。
TRACEが二発目を撃とうとする。
だが。
ミカはTRACE本人を狙わない。
高所から次に移動するための遮蔽物。
そこへ射線を置く。
ミカ。
動かします。
一発。
TRACEの移動先が潰れる。
相手は高所へ残るしかない。
ユイが静かに言った。
ユイ。
左高所、固定できました。
ミカ。
託します。
GRIDが中央後方へ支援を完成させようとしていた。
左高所のTRACE。
右地下のRUSH。
その両方が戻れる位置。
中央。
資源端末。
退路。
すべてへ届く。
完成すれば強い。
だが。
完成させる順番も。
ユイにはわかる。
まず右地下。
次に中央。
最後に左高所。
近距離のRUSHが最も早く被弾する可能性が高いから。
昔のユイが使っていた優先順位。
ユイ。
右支援が先です。
レナ。
見える。
ユイ。
レナさん、あと一歩だけ前へ。
レナ。
了解。
レナが前へ出る。
RUSHは攻撃を外した直後。
GRIDの支援範囲へ戻ろうとする。
その道をレナが塞ぐ。
殴らない。
ただ立つ。
RUSHは止まらない。
横へ抜けようとする。
レナが追う。
GRIDは右への支援を急ぐ。
ユイはそこへ。
完成した支援を置かなかった。
代わりに。
GRIDが右支援を置く位置と。
中央の間。
戻れるかもしれない。
だが戻り切れない。
未完成の範囲。
ユイ。
GRIDの支援経路を切ります。
支援同士が干渉する。
GRIDの右支援が、一瞬遅れた。
RUSHが範囲へ届かない。
レナ。
取る。
今度は待たない。
一撃。
二撃。
RUSHの体力が消える。
RUSH DOWN
試合開始から、二十七秒。
Crownlessが先行撃破。
会場が大きく揺れた。
実況。
最初の撃破はCrownless! 黒瀬選手が、かつての自分を思わせるRUSHの前進を完全に読み切りました!
解説。
星野選手もTRACEを高所へ固定。月城選手はGRIDの支援順まで読んでいます! CROWNEDの再現戦術が逆に情報になっています!
ミカの胸に、強い手応えが生まれた。
見える。
TRACEが何を狙っているか。
GRIDが何を作るか。
RUSHがどこまで前へ出るか。
わかる。
当然だ。
それは、自分たちが何度も使った勝ち方だから。
弱点も知っている。
ミカは撃ちすぎる。
ユイは完成させすぎる。
レナは前へ出すぎる。
今の三人は、それを直してきた。
撃たずに動かす。
戻れる未完成を残す。
待って相手を急がせる。
昔の自分たちには。
今の自分たちが見えていない。
ミカ。
行けます。
レナ。
うん。
ユイ。
はい。
ですが、撃破後を見ます。
言葉通り。
CROWNEDは動いた。
RUSHが落ちた。
二対三。
普通なら、TRACEとGRIDは下がる。
RUSHの復帰時間を作る。
あるいは、中央を捨てて安全な位置へ。
だが。
TRACEは下がらなかった。
左高所から。
ミカではなく。
中央のユイへ射線を向ける。
ミカ。
ユイさん、見られています。
ユイ。
確認しました。
GRIDも下がらない。
中央後方の支援を完成させる。
RUSHがいないのに。
右地下への支援まで。
完成した。
レナ。
RUSHいないのに右作った。
ユイ。
復帰後の道です。
ミカ。
二人で、復帰前に完成させる。
RUSHが戻った瞬間。
何も確認せず。
右支援へ入り。
そのまま攻められる。
昔のユイなら。
一人欠けた盤面を完成させようとして。
残った二人の負担を増やした。
だがGRIDは違う。
TRACEが一人で、ユイとミカを同時に見ている。
高所の強さ。
射撃精度。
その技術を信じて。
GRIDは次の形を作り切る。
ユイ。
私なら、今は完成させません。
レナ。
でもあいつは作った。
ユイ。
はい。
支援完成。
中央。
左高所。
右地下。
三点が繋がる。
RUSHの復帰まで、三秒。
ミカ。
GRIDを撃ちますか。
ユイは一瞬だけ考えた。
ユイ。
撃たないでください。
ミカ。
はい。
GRIDを撃てば。
完成させることに意識が固定された相手を動かせる。
だが。
その射線をTRACEが待っている。
昔のミカなら撃つ。
完成前のGRIDを止めるため。
だから、撃たない。
ミカは射線を残したまま。
TRACEを高所へ固定する。
レナも右地下へ入らない。
RUSHの復帰を待つ。
ユイは支援を完成させない。
CROWNEDの完成した盤面へ付き合わない。
RUSH復帰。
RUSHは右入口に現れた。
復帰と同時。
GRIDの支援へ入る。
一切止まらない。
レナ。
来る。
ユイ。
待ってください。
レナは待つ。
RUSHが前へ。
先ほどと同じ。
攻撃。
今度も空振りさせられる。
レナは半歩下がった。
RUSHの攻撃が。
来なかった。
レナ。
え。
RUSHはレナの間合い手前で止まった。
攻撃せず。
下がらず。
ただ。
レナを見ている。
昔のレナなら選ばない停止。
今のレナが使う。
相手を急がせる圧。
レナの胸が熱くなる。
RUSHは。
待った。
レナが待つことを知っている。
だから自分も待つ。
レナ。
殴りたい。
ユイ。
受け取りました。
まだです。
RUSHは動かない。
レナも。
一秒。
二秒。
互いに間合いの外。
だが。
止まっている間。
中央制圧率が進んでいた。
GRIDの支援。
TRACEの高所射線。
RUSHの圧。
三人が。
中央を囲んでいる。
Aegisのような最短の正解ではない。
だが。
CROWNEDの形は完成していた。
中央制圧。
CROWNED、十パーセント。
十五。
レナ。
中央取られてる。
ユイ。
見ています。
ミカ。
止めますか。
ユイは盤面を見る。
中央へ入れば。
TRACEの射線。
GRIDの支援。
RUSHの近距離。
三つが重なる。
昔の三人の強みを。
一つの場所へ合わせた形。
正面から入れば危険。
ユイ。
中央は保留します。
レナ。
資源?
ユイ。
次の資源を見ます。
中央制圧。
二十。
二十五。
ミカの胸に焦りが生まれる。
撃てる。
TRACEを。
GRIDを。
どちらかを撃てば。
中央の形を崩せる。
だが。
撃ちたいと思う。
それこそ。
昔のミカが選ぶ答え。
ミカ。
撃ちたいです。
ユイ。
理由は?
ミカ。
中央を止めたい。
それと。
少し止まる。
ミカ。
TRACEより、今の私の方が正しいと証明したいです。
言えた。
胸の中の感情。
TRACEは撃ち続ける。
自分は撃たずに相手を動かせる。
昔より今が強い。
それを証明したい。
ユイ。
受け取りました。
証明は保留します。
ミカ。
はい。
中央制圧。
三十。
三十五。
CROWNEDは。
何も急がない。
全体チャットもない。
挑発もない。
ただ。
三人の昔の強さを。
今の三人へ見せている。
資源端末、有効化。
左。
ミカに近い。
ユイ。
左資源を取ります。
ミカ。
私が射線を。
ユイ。
いいえ。
ミカが止まる。
ユイ。
ミカさんは中央を見てください。
左資源は私とレナさんで取ります。
レナ。
私?
ユイ。
はい。
CROWNEDは。
左高所のTRACEがミカ。
中央のGRIDがユイ。
右のRUSHがレナ。
鏡のように。
同じ役割をぶつけてくる。
なら、交換する。
ユイとレナが左資源へ。
ミカは中央を一人で見る。
CROWNEDが反応する。
TRACEは高所に残る。
GRIDが左へ。
RUSHも左へ向きを変える。
二対二。
中央制圧役はTRACE。
ミカ一人。
ミカ。
TRACEが中央を進めます。
ユイ。
止められますか。
ミカは見る。
TRACEは高所。
射線を中央へ置きながら。
制圧範囲の端に触れている。
撃てる。
一対一。
昔の自分のように撃つ相手。
ミカ。
止めます。
ユイ。
託します。
左資源。
ユイとレナ。
GRIDとRUSH。
GRIDが端末周囲へ支援を置く。
RUSHが前へ。
完成した支援。
止まらない近距離。
レナ。
RUSH来る。
ユイ。
私がGRIDを見ます。
レナさんはRUSHを。
レナ。
了解。
RUSHが踏み込む。
今度は待たない。
レナが待つことを見たから。
RUSHは。
待つふりから。
最短で攻撃へ変えた。
レナが反応する。
半歩下がる。
だが。
GRIDの支援が退路を狭くしている。
下がり切れない。
一撃被弾。
レナ。
っ。
ユイ。
戻れますか。
レナ。
戻れる。
戻り言葉ではない。
位置の確認。
レナは横へ。
GRIDの支援範囲外へ逃れようとする。
RUSHが追う。
昔のレナのように。
止まらない。
ただし。
昔のレナにはなかった支援がある。
GRIDが。
RUSHの前進に合わせて支援を移す。
一歩先。
レナの逃げ道へ。
レナ。
全部ついてくる。
ユイ。
GRIDを動かします。
ユイが支援を置く。
GRID本人ではなく。
GRIDの次の支援位置。
未完成の範囲で塞ぐ。
GRIDが止まる。
その瞬間。
RUSHの支援が切れる。
レナ。
取る。
反撃。
一撃。
RUSHが被弾。
下がる。
今度は深追いしない。
レナも追わない。
互いに。
今のレナの戦い方。
左資源は。
まだ誰も触れていない。
ユイ。
端末へ。
レナ。
行く。
ユイが支援。
レナが取得。
十パーセント。
二十。
GRIDが動く。
RUSHも。
同時。
GRIDが支援を前へ。
RUSHがレナへ。
二人。
ユイが止める。
一人では足りない。
ミカの射線が必要。
だがミカは中央。
TRACEと向き合っている。
中央。
TRACEが撃つ。
ミカの退路。
予想通り。
ミカは前へ。
二発目。
本体。
避ける。
ミカも撃つ。
TRACEの移動先。
相手が止まる。
互いに。
昔のミカと。
今のミカ。
一対一。
ミカの方が。
相手の狙いを知っている。
だが。
TRACEの射撃が、一瞬止まった。
ミカは思う。
次は高所右。
撃った後。
昔の自分なら。
射線を変える。
中央のユイ。
いや。
今ユイは左資源。
なら。
レナ。
TRACEの照準が。
左資源へ向いた。
ミカ。
レナさん、射線!
レナが端末から離れる。
TRACEの弾が着弾。
取得停止。
三十一パーセント。
左資源から遠い高所。
それでもTRACEは。
GRIDとRUSHの戦場を撃った。
昔のミカなら。
目の前の相手を優先する。
自分を止める相手を倒し。
一対一に勝つ。
だがTRACEは。
ミカを撃たなかった。
チームの勝利条件を撃った。
ミカ。
私じゃない。
胸が揺れる。
TRACEは昔の自分を再現する。
そう思っていた。
だが違う。
昔のミカの射撃精度。
前進。
撃破力。
その強さを持ったまま。
チームの判断で撃つ相手を変える。
今のミカが覚えたものまで。
使える。
ユイ。
TRACEは、模倣ではありません。
レナ。
わかってる!
RUSHも同じ。
待てる。
追わない。
支援を使う。
それでも。
昔のレナの速度を持っている。
GRIDも。
完成だけに縛られない。
必要なら支援を途中で切る。
それでも。
昔のユイより速く完璧な盤面を作る。
CROWNEDは。
昔の三人ではない。
昔の強さを持つ。
今の選手。
左資源。
CROWNEDが取得開始。
GRIDが端末。
RUSHがレナ。
TRACEが高所からユイを見ている。
十。
二十。
ミカ。
中央を捨てます。
ユイ。
左へ来ますか。
ミカは一瞬考える。
普通なら。
三人で左資源へ。
だがTRACEも高所。
全員が左に集まれば。
中央が空く。
それでも今。
資源を取られる。
ミカ。
行きます。
ユイ。
受け取ります。
ミカが左へ。
TRACEも高所から射線を移す。
ミカの進路へ。
知っている角度。
ミカは避ける。
一発目。
二発目。
TRACEは。
ミカが避ける場所も知っている。
そこへ三発目。
被弾。
ミカ。
当たりました。
体力が削れる。
それでも進む。
ユイがミカの前へ支援。
レナがRUSHを止める。
三人が左資源へ。
CROWNEDも三人。
中央は空。
資源で正面衝突。
取得率。
CROWNED、四十。
五十。
ミカはTRACEへ射線。
ユイはGRIDへ支援。
レナはRUSHへ圧。
鏡。
三対三。
それぞれが。
昔の自分の強さと向かい合う。
ミカはTRACEの射撃を知っている。
ユイはGRIDの完成順を知っている。
レナはRUSHの前進を知っている。
だから。
三人とも。
相手の次を待った。
ミカは撃たない。
ユイは支援を完成させない。
レナは前へ出ない。
過去と逆。
今の自分たちの強さ。
CROWNEDは。
止まらなかった。
TRACEが撃つ。
GRIDが完成させる。
RUSHが前へ。
それぞれ。
昔の三人の強さ。
Crownlessは待つ。
相手の弱点が出るのを。
TRACEが撃ちすぎる。
GRIDが作りすぎる。
RUSHが出すぎる。
その瞬間を。
だが。
出ない。
TRACEの射撃は。
GRIDの盤面で必要な場所だけ。
GRIDの完成は。
RUSHとTRACEが守れる範囲だけ。
RUSHの前進は。
二人の支援が届く距離だけ。
昔は弱点だった。
撃ちすぎ。
作りすぎ。
出すぎ。
三人で使えば。
弱点にならない。
ミカ。
来ない。
ユイ。
はい。
レナ。
何が。
ユイ。
私たちが知っている負け筋が来ません。
CROWNED取得率。
六十。
七十。
Crownlessは。
待ち続けた。
撃たない。
完成させない。
前へ出ない。
変わった自分たちを証明するように。
昔と逆へ。
CROWNEDは。
その間も勝利条件を進める。
八十。
八十五。
ミカの胸に焦り。
撃たなければ。
端末を止められない。
だが撃てば。
TRACEと同じ。
昔の自分へ戻るような感覚。
ミカ。
撃ちたいです。
ユイ。
理由は?
ミカ。
資源を止めるためです。
ユイ。
証明は?
ミカは息を止める。
証明。
今の自分が正しいと。
昔より成長したと。
TRACEへ見せたい気持ち。
ある。
でも。
ミカ。
あります。
ユイ。
では。
レナが割り込む。
レナ。
それでも撃て。
ミカが止まる。
レナ。
今、撃つのが正しいなら。
昔と同じでも撃て。
ユイも気づいた。
ユイ。
はい。
CROWNED取得率。
九十。
レナ。
私も殴る。
昔と同じでも。
ユイ。
私は完成させます。
三人が。
自分たちで避けていた言葉を出す。
ミカは撃つ。
TRACEではない。
端末に触れるGRID。
一発。
命中。
GRIDが端末から離れる。
取得停止。
九十三パーセント。
レナが前へ出る。
RUSHが待つ。
カウンター。
レナは、それでも入る。
一撃受ける。
代わりに。
RUSHを端末から遠ざける。
ユイが支援を置く。
未完成ではない。
左資源周囲。
中央への退路。
ミカの射線位置。
三つを繋ぐ。
完成した支援。
Crownlessの形。
ユイ。
完成させました。
レナ。
遅い。
ユイ。
はい。
ミカ。
でも、間に合いました。
三人が端末へ。
Crownless取得開始。
十。
CROWNEDが戻る。
速い。
TRACEがミカへ。
GRIDがユイへ。
RUSHがレナへ。
また鏡。
だが。
今度のCrownlessは。
過去と逆へ動こうとしない。
ミカは撃つ。
必要なら。
ユイは完成させる。
必要なら。
レナは前へ出る。
必要なら。
変わったことを証明するために。
昔の強さを捨てない。
ミカの射撃がTRACEを動かす。
ユイの完成した支援がGRIDの進路を切る。
レナの前進がRUSHを端末から離す。
取得率。
二十。
三十。
四十。
会場が沸く。
実況。
Crownless、ここで戦い方を変えました! 星野選手が積極的に撃ち、月城選手が大きな支援範囲を完成。黒瀬選手も正面から前へ出ています!
解説。
CROWNEDが再現する過去のスタイルを避けるのではなく、同じ強みをぶつけています!
ミカの胸が熱い。
撃つ。
敵を倒すため。
勝利条件を止めるため。
相手を動かすため。
理由は一つではない。
昔の自分と同じ射撃。
今の自分が覚えた射線。
どちらも自分。
TRACEが撃つ。
ミカも。
弾が交差。
互いに被弾。
ミカの体力が減る。
TRACEも。
ユイとGRID。
支援が重なる。
完成した二つの盤面。
互いに押し合う。
GRIDの方が速い。
正確。
だがユイの支援には。
戻れる隙間がある。
完成している。
それでも。
一か所だけ。
崩れても戻れる空白。
GRIDの支援は。
すべて埋まっている。
一見。
GRIDが上。
レナとRUSH。
前へ。
攻撃。
互いに一撃。
RUSHの方が速い。
レナの体力が多く削れる。
だが。
レナは止まらない。
昔の自分のように。
そのまま前。
RUSHが下がる。
初めて。
RUSHの方が。
待つ側へ回った。
取得率。
五十。
五十五。
CROWNEDは。
Crownlessが過去の強さを使うことにも対応する。
TRACEはミカを倒そうとせず。
ユイの支援を撃つ。
GRIDは完成した支援を一部捨て。
レナの前進へ空間を渡さない。
RUSHは下がり。
ミカの射線へレナを誘導する。
三人が。
また役割を繋ぐ。
ミカ。
対応されます。
ユイ。
はい。
レナ。
でもさっきより動いてる。
CROWNEDが。
初めて大きく動いている。
Crownlessが昔の強さを捨てていた時。
相手は。
自分たちの形を維持するだけでよかった。
今は。
ミカの射撃。
ユイの完成。
レナの前進。
三つへ対応するため。
TRACEも。
GRIDも。
RUSHも。
役割を何度も変えている。
取得率。
六十。
六十五。
ユイ。
次の一歩を変えます。
ミカ。
はい。
レナ。
どこ。
ユイ。
役割を交換します。
ミカがGRID。
ユイがRUSH。
レナがTRACE。
一瞬。
三人が戸惑う。
自分に似た相手ではない。
別の過去。
ミカ。
GRIDを撃つ。
ユイ。
RUSHを止めます。
レナ。
TRACEまで行く。
実行。
ミカの射線がGRIDへ。
GRIDは射撃への対応がTRACEほど速くない。
支援を一つ捨てて避ける。
盤面に穴。
ユイがRUSHの前へ支援。
レナのように待つのではない。
移動そのものを遅らせる。
RUSHの速度が落ちる。
レナはTRACEの高所へ。
遠い。
だが。
TRACEはミカの射線を警戒していた。
近づくレナへの反応が、一瞬遅れる。
レナ。
見えた。
高所へ。
TRACEは下がる。
レナは殴れない。
それでも。
TRACEを高所から降ろした。
CROWNEDの三人が。
自分に似た相手と戦う前提を崩される。
GRIDはミカ。
RUSHはユイ。
TRACEはレナ。
それぞれが対応する。
強い。
だが。
完璧な役割分担から。
少し外れる。
取得率。
七十。
七十五。
ミカ。
行けます。
ユイ。
はい。
レナ。
取る。
三人が端末を守る。
CROWNEDも戻る。
役割を元へ交換しようとする。
TRACEがミカ。
GRIDがユイ。
RUSHがレナ。
その移動。
一瞬。
GRIDとRUSHの進路が重なった。
ユイ。
今です。
ミカが撃つ。
二人の足元。
GRIDが止まる。
RUSHも。
レナが前へ。
TRACEが高所から撃つ。
レナへ。
だが。
その射線へ。
ユイが完成した支援の一部を壊した。
戻れる空白。
レナがそこへ入る。
弾を避ける。
取得率。
八十。
八十五。
CROWNEDが。
焦っているようには見えない。
表情も見えない。
全体チャットもない。
それでも。
動きが速くなる。
TRACEが撃つ回数が増える。
GRIDが支援を重ねる。
RUSHが前へ出る。
昔の三人の強さ。
そして。
昔の三人の負け筋。
ほんの少しずつ。
出始める。
TRACEの一発が。
味方の移動先を狭めた。
GRIDの支援が。
RUSHの退路と重なった。
RUSHの前進が。
TRACEの射線から一歩外れた。
三人で支えていたから。
弱点にならなかった。
だが。
Crownlessが役割を交換し続け。
予定と違う相手を当てたことで。
支え合う位置がずれた。
九十。
ミカ。
あと十。
ユイ。
守ります。
レナ。
前行く。
RUSHがレナへ。
正面。
攻撃。
レナも。
互いに。
一撃。
レナの体力がゼロへ近づく。
RUSHも低い。
レナ。
戻りたい。
ユイ。
保留。
ミカ。
レナさんが前にいると、GRIDが端末へ戻れません。
レナ。
受け取った。
戻らない。
あと数秒。
TRACEがミカへ。
ミカの体力も少ない。
撃ち合い。
ミカ。
もう一度見ます。
ユイ。
おかえりは保留します。
ミカ。
はい。
ミカはTRACE本人を撃たない。
GRIDの支援装置。
一発。
破壊。
端末周囲の防御が消える。
ユイは。
完成させた支援を維持する。
GRIDが破壊しようとする。
ユイ。
整えたいです。
レナ。
今は整えろ。
ユイ。
はい。
ユイは支援を追加。
一つ。
二つ。
完成を重ねる。
昔の自分のように。
ただし。
全部は守らない。
端末周囲だけ。
勝利条件に必要な範囲だけ。
九十五。
九十六。
CROWNED三人が端末へ。
ミカ。
撃ちます。
ユイ。
お願いします。
レナ。
止める。
ミカが射線を置く。
TRACEではない。
三人の進路。
レナが前へ。
誰も殴らず。
三人の判断を急がせる。
ユイが支援。
戻り場所ではなく。
今いる場所を。
あと一秒だけ残す。
九十七。
九十八。
TRACEがミカを撃つ。
命中。
ミカの体力。
ゼロ。
HOSHINO_MIKA DOWN
同時。
RUSHがレナへ攻撃。
レナも。
KUROSE_RENA DOWN
二人が倒れた。
会場が悲鳴に近い声を上げる。
ユイ一人。
CROWNED三人。
端末取得率。
九十八。
あと二。
ユイは端末へ触れている。
CROWNEDが迫る。
GRIDの支援。
TRACEの射線。
RUSHの近距離。
すべてユイへ。
ユイは戻れない。
戻る場所もない。
二人もいない。
だが。
ミカの射線が。
最後に三人の進路をずらした。
レナの圧が。
三人を端末の片側へ寄せた。
二人が倒れる前に。
ユイへ託したもの。
あと二パーセント。
ユイ。
受け取りました。
攻撃が来る。
ユイは自分を守る支援を置かない。
端末へ。
最後の支援。
取得速度を一瞬だけ維持する。
九十九。
TRACEの弾。
ユイへ命中。
体力が減る。
RUSHが踏み込む。
GRIDが支援を切る。
百。
資源端末。
Crownless取得。
戦術ポイント、一。
直後。
RUSHの一撃。
TSUKISHIRO_YUI DOWN
三人全員。
同時に倒れた。
TEAM WIPE
画面へ警告が出る。
CROWNEDの勝利条件。
全員同時撃破。
成立。
一瞬。
会場が静まった。
ミカは倒れた画面を見つめる。
資源は取った。
百パーセント。
だが。
三人とも落ちた。
チーム全滅。
この競技では。
全員が同時に復帰待ちになった時点で。
即時勝利。
表示。
WINNER
CROWNED
第一試合。
CROWNED勝利。
歓声。
どよめき。
実況の声。
決着! Crownlessは資源端末を取り切りましたが、その直後に三人全員がダウン! 全滅条件でCROWNEDが第一ラウンドを取得しました!
解説。
紙一重です! しかしCROWNEDは最後まで三人の撃破タイミングを揃えました。資源を渡してでも全滅を取りに行った!
ミカは動けなかった。
勝利条件を取った。
でも負けた。
あと一瞬。
誰か一人でも生きていれば。
戦術ポイントを取って。
次へ進めた。
CROWNEDは。
資源を守ろうとしていたのではない。
最後。
最初から。
三人を同時に落とすことを狙っていた。
TRACEがミカ。
RUSHがレナ。
GRIDがユイ。
似た相手を倒すため。
体力を調整していた。
ミカたちが役割を交換しても。
対応して。
最後だけ元の相手へ戻った。
昔の自分を。
今の本人へぶつけ。
同じ瞬間に倒した。
レナ。
負けた。
ユイ。
はい。
ミカ。
でも、資源は。
言いかけて止まる。
取った。
だから何だ。
試合は負けた。
数字を否定しない。
資源取得は一。
勝利はゼロ。
NoNameから。
メッセージは来ない。
約束通り。
答えを渡さない。
見ているだけ。
ミカは画面を閉じず。
第一試合の最後をもう一度見る。
TRACEの射線。
GRIDの支援。
RUSHの攻撃。
三人同時。
偶然ではない。
CROWNEDは。
Crownlessの体力を揃えていた。
誰か一人を先に落とさない。
復帰時間をずらさない。
最後まで。
三人を盤面に残し。
同時に取った。
ユイ。
私たちは、相手が過去の私たちだと思いすぎました。
レナ。
最初は本当に似てた。
ユイ。
はい。
ミカ。
だから、昔と逆へ動きました。
撃たない。
完成させない。
前へ出ない。
変わった自分を証明するように。
ユイ。
その時間に、CROWNEDは勝利条件を進めました。
レナ。
途中から昔の強さも使った。
ミカ。
でも、最後は。
ユイ。
相手の目的を見ていませんでした。
資源。
九十八。
九十九。
百。
その数字だけを見た。
取れば勝ちへ近づく。
だから三人とも。
体力が少なくても残った。
戻らなかった。
CROWNEDが資源を守らず。
三人の撃破を揃えていることに。
気づかなかった。
レナ。
過去の私たちを見てた。
ユイ。
はい。
ミカ。
今の相手を見ていなかった。
静かになる。
それが答えだった。
TRACEはミカではない。
GRIDはユイではない。
RUSHはレナではない。
過去の勝ち方を使う。
だが。
現在の選手。
自分で考え。
チームで勝つ。
Crownlessは。
古い自分の弱点を探し続けた。
相手そのものではなく。
鏡に映る自分を見ていた。
レナ。
ねえ。
ユイ。
はい。
レナ。
私、昔の自分みたいに前出るの、悪いことだと思ってた。
ユイ。
私も、完成させることを危険だと思いすぎました。
ミカ。
私も撃つことを。
三人が。
変わる前に持っていた強さ。
それは。
消すべきものではない。
でも。
戻るべき場所でもない。
今の自分が。
必要な時に使うもの。
レナ。
昔と逆に動くのも、昔に動かされてるのと同じだね。
ユイ。
はい。
ミカ。
TRACEを見て撃たないと決めた時点で。
私はTRACEを中心にしていました。
ユイ。
私もGRIDを見て、完成させないと決めました。
レナ。
私はRUSH見て待った。
CROWNEDは。
そこまで狙っていたのかもしれない。
昔の姿を見せれば。
Crownlessは、変わった自分を証明しようとする。
撃たない。
作らない。
入らない。
自分から強みを捨てる。
そして。
途中から強みを取り戻した時も。
まだ相手を過去として見ていた。
ユイ。
第二試合では、コードネームを使いません。
ミカ。
では?
ユイ。
相手一。
相手二。
相手三。
レナ。
味気ない。
ユイ。
TRACE、GRID、RUSHという名前自体が、私たちの過去へ意識を向けます。
ミカ。
今いる選手として見る。
ユイ。
はい。
レナ。
私に似てても?
ユイ。
似ていても、レナさんではありません。
ミカ。
私に似ていても、私ではない。
ユイ。
はい。
三人は、もう一度画面を見る。
CROWNED。
金色の冠。
自分たちが置いたもの。
相手が持つもの。
それも。
意識しすぎていた。
冠を捨てた自分たち。
冠を持つ相手。
どちらが正しいか。
そんな試合ではない。
相手は。
ただ強い三人。
倒すべき現在の対戦相手。
ユイ。
第二試合の勝利条件を確認します。
レナ。
勝つ。
ユイ。
はい。
ミカ。
過去の自分を超えることではない。
ユイ。
はい。
レナ。
ノーを驚かせることでもない。
ユイ。
はい。
ミカ。
CROWNEDに勝つこと。
ユイ。
はい。
NoNameの表示は。
まだそこにある。
何も送らない。
三人は。
彼の言葉を待たなかった。
ミカ。
師匠。
NoNameの入力表示が出る。
だが。
ミカは続けた。
ミカ。
答えは要りません。
入力表示が止まる。
ミカ。
見ていてください。
ユイ。
次は、現在の相手を見ます。
レナ。
昔の私じゃなく。
目の前のそいつを殴る。
NoNameから。
短い返事。
NoName。
見ています。
それだけ。
休憩終了まで。
残り三十秒。
CROWNEDの三人は。
静かに機材を確認している。
第一試合に勝った。
だが。
喜びを見せない。
次の形を。
すでに作っている。
ミカはTRACEという文字を見た。
そして。
頭の中から、その名前を消した。
相手一。
左高所から撃つ選手。
ユイはGRIDを消す。
相手二。
盤面を作る選手。
レナはRUSHを消す。
相手三。
近距離へ入る選手。
昔の自分ではない。
倒すべき相手。
第二試合の表示。
ROUND 2
CROWNED
1
CROWNLESS
0
負ければ終わり。
三。
二。
一。
開始。
CROWNEDは。
第一試合と同じ初動を見せた。
左高所。
中央後方。
右地下。
過去の三人。
そう見える形。
ミカは。
左高所を見なかった。
ユイも。
中央後方を特別視しない。
レナも。
右地下の速さを自分と比べない。
ユイ。
相手一、左。
ミカ。
見えています。
ユイ。
相手二、中央。
レナ。
相手三、右。
三人は。
昔の自分を迎えるためではなく。
今の試合に勝つために。
最初の一歩を出した。
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