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世界女王は、彼にだけ勝てない  作者: てへろっぱ


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34/42

第三十四話 師匠が選んだ、過去の私たち


準決勝。


Crownlessの対戦相手。


UNKNOWN PLAYER。


三対三の大会にもかかわらず、公開されている登録名は一つだけ。


残り二人の名前も。


所属も。


過去の戦績も。


試合開始まで非公開。


そして、運営が最後に表示した一文。


Crownlessの対戦相手は、三人全員が過去に敗北したことのある選手によって選出されています。


星野ミカは、ディスコードの画面を見つめた。


NoNameの表示はある。


オンライン。


試合も見ていた。


先ほどまで、普通にやり取りをしていた。


だが。


師匠?


そう呼びかけた後。


返事がない。


黒瀬レナも、同じ表示を見ている。


レナ。


ノー。


返事はない。


月城ユイは、すぐに問いを重ねなかった。


大型スクリーンへ表示されている文章を、もう一度確認する。


三人全員が過去に敗北したことのある選手。


個別に別々の相手へ負けた、という意味にも読める。


しかし。


一人の選手に。


三人全員が負けた。


その条件に当てはまる人物を、三人は一人しか知らない。


ミカ。


師匠ですよね。


今度も返事はない。


胸の奥に、少しだけ冷たいものが広がった。


NoNameが準決勝の相手を選んだ。


その可能性は高い。


でも。


なぜ黙っているのか。


言えない理由があるのか。


それとも。


自分たちへ隠していたのか。


Aegisとの試合前も。


試合中も。


NoNameは見ていた。


助言もした。


勝利を喜んだ。


その一方で。


準決勝に進めば、自分が選んだ相手が待っていることを知っていた。


ミカの胸に、いくつもの感情が出る。


驚き。


不安。


少しの寂しさ。


そして。


知りたい。


危険な沈黙。


ミカが黙る時は。


撃って証明したくなる時。


レナが短くなる時は。


怒りが強い時。


ユイが説明を始める時は。


すべてを整えたくなっている時。


今。


三人とも、その危険な場所へ近づいている。


最初に口を開いたのはレナだった。


レナ。


確認しますって言え。


ミカはレナを見る。


レナは画面を睨んでいる。


怒っている。


だが。


NoNameを責める言葉ではなかった。


彼が自分で決めた戻り言葉。


確認します。


それを言え。


一人で黙るな。


そう伝えている。


数秒後。


ディスコードに文字が表示された。


NoName。


確認します。


三人の空気が、わずかに緩んだ。


完全ではない。


でも。


NoNameは逃げていない。


戻るための言葉を使った。


ユイ。


受け取りました。


ミカ。


待っています。


レナ。


確認しろ。


NoNameの入力表示が出る。


消える。


もう一度出る。


普段のNoNameには珍しい。


言葉を選んでいる。


やがて。


NoName。


選出者は、私です。


ミカは目を閉じた。


予想していた。


それでも、明確に言われると胸に響く。


レナ。


やっぱり。


ユイ。


いつ、依頼を受けたのですか。


NoName。


Crownlessの出場が決定した後です。


レナ。


じゃあ最初から知ってた?


NoName。


準決勝まで進んだ場合、特別招待チームと対戦する可能性があることは知っていました。


ミカ。


可能性。


NoName。


組み合わせは、他の試合結果によって変更される予定でした。

Crownlessが必ず対戦するとは決まっていませんでした。


ユイ。


ですが、候補としては想定していた。


NoName。


はい。


レナ。


なんで言わなかったの。


NoNameの返事は、今度は早かった。


NoName。


守秘条件です。


ユイ。


対戦相手の存在そのものを伏せる契約。


NoName。


はい。

選出者であることも含まれます。


ミカは大型スクリーンを見る。


三人全員が過去に敗北したことのある選手。


ほとんど答えを言っている。


ミカ。


でも、運営は今、師匠だとわかるような説明をしました。


NoName。


はい。


文字が一度止まる。


NoName。


この表現は、私が承認したものではありません。


レナ。


怒ってる?


NoName。


はい。


短い。


NoNameが、はっきり怒っている。


珍しかった。


NoName。


選出者の情報は公開しないという条件でした。

名前を表示してはいませんが、Crownlessと私の関係を知る者には推測できます。


ユイ。


条件違反に近い。


NoName。


はい。

現在、運営へ確認しています。


確認します。


それは、自分の感情だけではなかった。


本当に運営と確認している。


レナ。


じゃあ次の試合止まる?


NoName。


止まりません。


ミカ。


大丈夫なんですか。


NoName。


大会進行を止めるほどの違反ではありません。

また、皆さんの集中をこれ以上乱す方が不利益です。


レナ。


もう乱れてる。


NoName。


はい。

申し訳ありません。


NoNameが謝った。


言い訳をせず。


運営が悪いだけとも言わず。


自分が秘密を持っていたことを認めて。


ミカの胸が少し痛んだ。


師匠が謝っている。


責めたいわけではない。


でも。


何も感じていないとも言えない。


ミカ。


私、少し寂しいです。


書いた後。


指が止まった。


重い言葉に見えるかもしれない。


試合前。


NoNameを困らせるかもしれない。


それでも。


隠さない。


NoName。


はい。


ミカ。


師匠が私たちの次の敵を知っていて、言えなかったことが。


NoName。


はい。


ミカ。


でも、言えない条件だったことも理解しています。


NoName。


ありがとうございます。


ミカ。


理解していることと、寂しくないことは別です。


NoNameの返事が止まる。


ユイが静かに続けた。


ユイ。


私も同じです。


レナ。


私もムカついてる。


ミカとユイがレナを見る。


レナ。


でも、秘密にしてたことより。


少し間。


レナ。


勝手に次のボス作ってたことに。


ミカは思わず小さく笑った。


ユイも口元を少し緩める。


重くなりすぎていた空気が、わずかに戻る。


NoName。


申し訳ありません。


レナ。


謝るのそこ?


NoName。


どちらにもです。


レナ。


じゃあ、なんで作ったの。


本題。


なぜ。


NoNameは、Crownlessの対戦相手を選んだのか。


運営に頼まれたから。


それだけではないはずだ。


断ることもできた。


NoNameは表へ出たくない。


名前も。


声も。


姿も。


組織との関係も持ちたがらない。


そんな彼が。


大会の特別招待チーム選出という役割を受けた。


理由がある。


ユイ。


運営から、どのような依頼を受けたのですか。


NoName。


Crownlessを含む上位チームへ対抗できる、特別招待チームの候補選出です。


ミカ。


私たちだけを倒すためではない?


NoName。


はい。

他チームと対戦する可能性もありました。


レナ。


でも私たち用でもある。


NoName。


はい。


否定しない。


ユイ。


選出基準は。


NoName。


三人の世界女王と、それぞれ同じ分野で正面から戦えること。


ミカ。


それなら、各競技の現役トップを選べばいいのでは。


NoName。


それでは不十分です。


NoNameから一つのファイルが送られた。


運営公開予定資料。


まだ開示時刻前のため、外部共有は禁止。


三人だけが閲覧できる。


ユイが開く。


ミカも。


レナも。


画面に、準決勝特別招待チームのロゴが表示された。


金色の冠。


その下に、チーム名。


CROWNED


レナ。


趣味悪い。


ユイ。


意図は明確ですね。


ミカ。


Crownlessに対して、Crowned。


冠なし。


冠を持つ者。


自分たちが置いたものを。


相手は掲げてくる。


選手名はまだ伏せられている。


三つのコードネームだけ。


TRACE


GRID


RUSH


その横に、簡単な役割。


射撃。


戦略制御。


近距離。


ミカ。


私たちと同じ構成。


NoName。


はい。


レナ。


それだけじゃないでしょ。


NoName。


はい。


次のページ。


映像が再生される。


最初に映ったのはTRACE。


顔は映らない。


ゲーム画面だけ。


射撃競技。


高所。


細い射線。


相手が見えた瞬間。


迷わず撃つ。


一発。


撃破。


次の相手。


撃つ。


撃破。


前へ。


さらに撃つ。


高精度。


速い。


強い。


ミカは、その動きを知っていた。


自分の世界大会。


初めて優勝した頃。


見えた敵を撃つ。


倒せる相手を必ず倒す。


射線で相手を動かすのではない。


自分の正確さで。


盤面を撃ち抜く。


ミカ。


私。


NoName。


正確には、過去の星野ミカさんの公開試合を再現できる選手です。


映像が切り替わる。


同じマップ。


別の相手。


それでも。


撃つタイミング。


高所へ入る経路。


一人を落とした後の前進。


ミカが、かつて勝ち続けた形。


似ている。


ものまねではない。


表面だけでもない。


なぜその射線を選び。


いつ撃ち。


撃破後にどこへ進むか。


判断の順番まで近い。


ミカ。


この人は、誰ですか。


NoName。


現時点では答えられません。


ミカ。


強いです。


NoName。


はい。


ミカ。


私より?


少し間。


NoName。


過去の星野ミカさんより、高い再現精度を持ちます。


胸に刺さる。


過去の自分より。


自分らしい勝ち方を。


別の選手が、より正確に使う。


だが。


不思議と、証明したいだけの感情にはならなかった。


撃ちたい。


もちろん思う。


けれど、その前に。


見たい。


今の自分から。


あの射線がどう見えるのか。


次の映像。


GRID。


複数人制御。


十二人の味方。


資源。


支援。


敵の移動。


すべてが、最適な位置へ収まっていく。


命令は短い。


迷いがない。


誰も勝手に動かない。


計画から外れない。


一つの完璧な盤面。


ユイの目が細くなる。


ユイ。


私の旧指揮。


NoName。


はい。


GRIDは、公開された月城ユイさんの大会記録とレイド記録を学習しています。


ユイ。


学習。


NoName。


人間の選手です。

映像と記録から、意思決定の規則を抽出しています。


レナ。


こんなの覚えられるの。


NoName。


この選手の強みです。


画面の中。


GRIDは、味方の小さな乱れを許さない。


一人が予定より半歩出る。


すぐに戻す。


資源が少し余る。


即座に別の場所へ割り当てる。


敵が想定外の動き。


新しい完璧な形へ修正する。


速い。


美しい。


隙がない。


ユイは長く画面を見た。


ユイ。


戻れる場所がありません。


NoName。


はい。


ユイ。


一度崩れた場合。


NoName。


次の完璧な盤面へ移ります。


ユイ。


未完成のまま残らない。


NoName。


はい。


過去のユイが求めたもの。


すべてを整える。


乱れを許さない。


誰も間違えない盤面。


それを。


別の選手が、より冷静に使っている。


ユイ。


この方は、私より説明が短いですね。


レナ。


そこ気になるんだ。


ユイ。


非常に。


ミカは少し笑った。


NoNameから、短く来る。


NoName。


月城ユイさんの危険サインを持たないためです。


説明が長くならない。


整えたい感情で動いているのではない。


最適化すること自体が、技術。


だから。


過去のユイよりも、迷いが少ない。


次の映像。


RUSH。


近距離。


開始直後から前へ。


一歩。


攻撃。


相手が避ける。


さらに前。


攻撃。


止まらない。


一度下がったように見せ。


すぐに踏み込む。


相手へ考える時間を与えない。


レナ。


私じゃん。


NoName。


はい。


レナ。


昔の。


NoName。


はい。


映像のRUSHは、速かった。


レナが一番強いと思っていた頃。


待たない。


相手を読む前に殴る。


自分が止まれば、相手へ考える時間を与える。


だから進む。


進み続ける。


だが。


昔のレナと違うところが一つあった。


RUSHには。


怒りがない。


焦りもない。


殴りたいという感情もない。


ただ。


最も速く相手の判断を壊すため。


前へ出続ける。


レナ。


こいつ、冷静。


NoName。


はい。


レナ。


私の嫌なとこだけ残して、熱くなるとこ消してる。


NoName。


表現は異なりますが、概ね正しいです。


レナ。


腹立つ。


ミカ。


戦いたいですか?


レナ。


めちゃくちゃ。


ユイ。


でしょうね。


レナは画面へ顔を近づける。


レナ。


でも。


少しだけ声が低くなる。


レナ。


待たないのが、一番速いと思ってる。


NoName。


はい。


レナ。


なら、今は見える。


以前のレナなら。


速い。


強い。


負けたくない。


それだけだった。


今のレナは。


相手が何を信じているかを見る。


待たないこと。


前に出続けること。


それが最も強いと信じている。


なら。


待たせればいい。


映像が終わる。


三人のコードネーム。


TRACE。


GRID。


RUSH。


三人はそれぞれ。


ミカ。


ユイ。


レナ。


かつての女王の勝ち方を再現する。


だが。


NoNameは言った。


NoName。


過去の皆さんだと思わないでください。


ミカ。


違うんですか。


NoName。


彼らは現在の選手です。


ユイ。


私たちの過去の戦術を使いますが。


NoName。


本人たちの判断もあります。

記録通りにしか動けない模倣者ではありません。


レナ。


強い形だけ覚えて、自分でも考える。


NoName。


はい。


ミカの胸が少し冷える。


ただの過去との戦いではない。


自分たちの古い勝ち方を。


別の強い選手が受け取り。


欠点を減らし。


三人で噛み合わせる。


CROWNED。


冠を持った三人。


ミカ。


師匠が、この三人を選んだんですか。


NoName。


はい。


ユイ。


なぜですか。


NoNameの返事は、少し遅れた。


NoName。


大会運営からは、三人の世界女王を個別に上回る可能性を持つチームを求められました。


レナ。


運営の理由じゃなくて。


NoName。


はい。


レナ。


ノーの理由。


画面が静かになる。


NoNameは、また言葉を選ぶ。


NoName。


確認します。


ミカ。


はい。


NoName。


私は、Crownlessがどこまで進めるか確認したいと思いました。


ユイ。


過去の私たちに勝てるか。


NoName。


それだけではありません。


ミカ。


では。


NoName。


私が知っている三人より、先へ進んでいるか。


三人は黙った。


NoNameが知っている三人。


彼に負けた頃のミカ。


盤面しか見ていなかったユイ。


読まれる前に殴ろうとしていたレナ。


NoNameは、その三人を誰より詳しく知っている。


だから。


その勝ち方を使う相手を選べた。


NoName。


Crownlessが、私の分析した負け筋を避けるだけのチームなのか。


少し間。


NoName。


それとも、私にも予測できない場所へ進めるのか。


Aegisとの最後。


NoNameにも読めなかった一歩。


三人が同時に止まった瞬間。


あれは。


すでに答えの一部だった。


ミカ。


私たちを試したかったんですね。


NoName。


はい。


正直だった。


ミカの胸に、また少し複雑な感情が出る。


師匠に試される。


以前なら。


嬉しかったかもしれない。


認めてもらえる機会。


勝って証明できる場。


でも今は。


少し違う。


ミカ。


勝手です。


NoName。


はい。


ユイ。


NoNameさん自身の確認のために、私たちへ対戦相手を用意した。


NoName。


はい。


レナ。


やっぱ勝手にラスボス作ってる。


NoName。


否定できません。


レナ。


反省してる?


NoName。


選出を後悔してはいません。


レナ。


してないんだ。


NoName。


秘密にした状態で皆さんへ助言を続けたことには、問題があったと考えています。


ユイ。


公平性。


NoName。


はい。

私にはCROWNEDの選手情報があります。


ミカ。


では、準決勝の対策も。


NoName。


提供しません。


三人が止まった。


NoName。


この試合について、私は対戦相手固有の分析を伝えません。


レナ。


本当に何も?


NoName。


公開映像を三人と同じ条件で見た範囲のみです。


ユイ。


選出時に知った情報は使わない。


NoName。


はい。


ミカ。


師匠の助言なしで戦う。


NoName。


はい。


それは。


いつか必要になることだった。


試合中。


NoNameはもともと指示を出さない。


三人で判断してきた。


だが準備では。


NoNameが見ていた。


弱点を言葉にした。


訓練を作った。


Rogueの危険を教えた。


Aegisの正解を外す方法も。


次は。


それがない。


NoNameが選んだ相手を。


NoNameの答えなしで倒す。


レナ。


ノーは、どっちが勝ってもいいの。


その質問に。


ミカもユイも、画面を見た。


選出した三人。


確認したい相手。


CROWNED。


そしてCrownless。


NoNameにとって。


どちらも、自分が関わったチーム。


公平に見るなら。


どちらを応援するとも言わないかもしれない。


NoNameの返事は。


ほとんど間を置かなかった。


NoName。


Crownlessに勝ってほしいです。


ミカの胸が強く鳴った。


ユイが目を少し見開く。


レナが笑う。


レナ。


選んだの向こうなのに?


NoName。


はい。


ユイ。


公平ではありませんね。


NoName。


選出は公平に行いました。


ユイ。


応援は。


NoName。


公平ではありません。


明確だった。


NoNameは。


Crownlessを選んだ。


試合の結果を操作しない。


相手の秘密も渡さない。


それでも。


勝ってほしいと思う相手は。


三人。


ミカ。


嬉しいです。


NoName。


はい。


ミカ。


でも、それだけを勝利条件にはしません。


NoName。


良いです。


ユイ。


私たちは、NoNameさんの確認のためだけには戦いません。


NoName。


はい。


レナ。


でも勝ったら、ちゃんと驚け。


NoName。


努力します。


レナ。


そこは絶対って言え。


NoName。


予測できないことを約束できません。


レナ。


面倒。


ミカは笑った。


怒りは、まだ少しある。


寂しさも。


勝手だと思う気持ちも。


全部消えたわけではない。


試合後に話すべきことも残っている。


だが。


今は準決勝。


感情を消さない。


共有して。


役割へ変える。


ミカ。


私、撃ちたいです。


ユイ。


私も、整えたいです。


レナ。


私は殴りたい。


いつもの三つ。


だが、相手が違う。


撃ちたいミカより、迷わず撃つTRACE。


整えたいユイより、感情なく完成させるGRID。


殴りたいレナより、冷静に前へ出続けるRUSH。


自分たちの古い強さを。


欠点を減らした他人が使う。


ユイ。


変換します。


ミカ。


私は、相手の射線を見ます。


レナ。


私は、前に出る理由を見ます。


ユイ。


私は、完成する前の選択を見ます。


三人が顔を上げる。


大型スクリーンの表示が変わった。


準決勝特別招待チーム。


選手情報公開まで。


残り十秒。


十。


九。


八。


観客の声が大きくなる。


CROWNEDのロゴ。


金色の冠。


Crownlessのロゴ。


冠のない円と、三本の線。


七。


六。


五。


ミカは靴紐を確認した。


ユイは資料を閉じた。


レナはコントローラーを握り直した。


四。


三。


二。


一。


選手名が公開される。


TRACE。


GRID。


RUSH。


三人とも。


実名も。


顔も。


所属も表示されなかった。


代わりに。


過去の試合映像だけが流れる。


ミカのように撃つTRACE。


ユイのように組むGRID。


レナのように攻めるRUSH。


会場がざわめく。


やがて。


対戦カードが表示された。


SEMIFINAL


CROWNLESS


VS


CROWNED


レナ。


本当に趣味悪い。


ユイ。


ですが、わかりやすいです。


ミカ。


私たちが置いた冠を、相手が持っている。


ディスコードに、NoNameから最後のメッセージ。


NoName。


この試合について、答えは渡せません。


ミカ。


はい。


NoName。


ですが。


一度、文字が止まる。


NoName。


見ています。


ミカの胸が温かくなる。


試合中の助言はない。


対策もない。


それでも。


NoNameはいる。


見ている。


三人が、彼の知っている場所より先へ進めるか。


レナ。


見てろ。


ユイ。


見届けてください。


ミカ。


師匠。


NoName。


はい。


ミカ。


私たちは、師匠が選んだ敵を倒します。


NoName。


はい。


ミカ。


でも、師匠のためだけには勝ちません。


NoName。


良いです。


三人はステージへ向かう。


CROWNEDの選手たちは。


すでに反対側の席へ座っていた。


顔を隠した三人。


言葉を交わさない。


だが。


姿勢。


手の位置。


画面の見方。


そのすべてに。


どこか見覚えがある。


自分たちに似ている。


でも。


自分たちではない。


Crownlessは、席へ座った。


ヘッドセットを付ける。


NoNameの答えはない。


三人で見る。


三人で決める。


三人で進む。


過去の自分を倒すためではない。


現在の相手へ勝つために。


準決勝開始まで。


残り一分。


冠なしの三人は。


師匠が選んだ冠を持つ三人と。


向かい合った。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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