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世界女王は、彼にだけ勝てない  作者: てへろっぱ


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28/44

第二十八話 最強を決めないまま、勝つ


残り時間、三分。


勝利条件は撃破数のみ。


中央制圧は止まった。


資源端末も意味を失った。


盤面を広く使う必要はない。


戻る場所を作り、時間を稼ぎ、別の勝ち筋へ切り替えることもできない。


誰かを倒す。


誰かが倒される。


その数だけが、勝敗になる。


現在の撃破数。


Crownless、一。


Rogueチーム、一。


同点。


そして月城ユイは、低い体力のままRogueの目の前にいた。


Rogueの全体チャット。


Rogue。


冠なしでも、一番強い女王は誰だ?


星野ミカの胸が熱くなる。


自分だと言いたくなる。


射撃なら。


この距離なら。


Rogueを捉えられる場所まで戻れれば。


自分が一番強いと、弾で証明できる。


反対側では、黒瀬レナが敵二人に止められている。


近距離ならレナが強い。


一人を抜ければ、Rogueへ届く。


ユイも弱くはない。


戦闘力だけで比べれば、ミカやレナに劣る。


だが、三人の中で最も多くの盤面を見ている。


誰が一番強い。


その問いは、答えようと思えばいくらでも答えられる。


射撃ならミカ。


近距離ならレナ。


盤面ならユイ。


では、この三分では。


誰が一番、価値がある。


誰が最も倒せる。


誰を守るべきか。


Rogueは、それだけを考えさせようとしている。


ユイの声がディスコードに入った。


ユイ。


撃破条件を確認。

現在同点。

私の体力が最も低いです。


レナ。


見ればわかる。


ミカ。


ユイさん、戻れますか?


ユイは一瞬だけ黙った。


背後には緊急ルール変更端末。


正面にはRogue。


左右は狭い。


戻ろうとすれば、Rogueに狩られる。


ユイ。


難しいです。


Rogueが一歩前へ出た。


攻撃。


ユイは横へ避ける。


完全には避け切れない。


体力がさらに削れる。


あと一発。


実況が声を上げる。


月城選手、残り体力わずか! このままではRogue選手に先行撃破を許します!


解説。


星野選手と黒瀬選手は敵二人に止められています。救援は間に合うか!


Rogueの全体チャット。


Rogue。


ユイ。

二人に守ってもらう?


ユイの指が揺れる。


Rogue。


一番弱い君を。


ミカの胸が冷たくなる。


弱い。


それは、今のルールでは否定しにくい。


純粋な戦闘。


撃破数だけ。


その条件なら、ユイは三人の中で最も狙われやすい。


Rogueはそれを言葉にした。


ユイ。


説明したいです。


ミカ。


受け取りました。

説明はしません。


レナ。


弱いかどうかは後。

今は落ちるな。


ユイ。


はい。


Rogueが再び攻撃する。


ユイは避ける。


端末の裏へ。


逃げ道はない。


ミカは中央の敵一人へ射線を置いていた。


この敵を倒せば、Crownlessが先行する。


だがユイは落ちる。


一対一交換。


撃破数は二対二。


その後の復帰位置と残り時間で勝負。


計算上は悪くない。


いや。


ミカなら、目の前の相手を先に落とせる可能性がある。


ユイが落ちるより早く。


撃ちたい。


倒したい。


ユイを助けるためではない。


撃破数を先に取るため。


ミカ。


撃ちたい。


ユイ。


受け取りました。


レナ。


私も殴りたい。


敵二人は、ミカとレナの前にいる。


倒せる。


Rogueは、それもわかっている。


だからユイを急いで落とそうとしない。


一撃で終わる距離なのに、わざと追い詰める。


ミカとレナに選ばせるため。


ユイを守るか。


自分の前の敵を倒すか。


誰の撃破を優先するか。


ユイが静かに言った。


ユイ。


私を守らないでください。


ミカ。


ユイさん。


レナ。


また一人で残る気?


ユイ。


違います。


Rogueが迫る。


残り時間、二分四十四秒。


ユイ。


私の体力を託します。


ミカは一瞬、意味がわからなかった。


体力を託す。


ユイ。


Rogue選手は、私をいつでも倒せます。

ですが、すぐには倒していません。


レナ。


こっちに選ばせたいから。


ユイ。


はい。

私の残り体力は、Rogue選手をここへ留める圧になっています。


ミカは息を止めた。


ユイが落ちそうだから。


Rogueはユイの前から離れない。


確実な一撃を持っているから。


ミカとレナが助けに来ることを期待しているから。


ユイ自身が、Rogueを留めている。


いや。


残りわずかな体力を、二人へ託している。


ユイ。


私はRogue選手を留めます。

二人は、前の二人を落としてください。


レナ。


でも、ユイが落ちたら同点。


ユイ。


先に二人落とせば、三対二です。


ミカ。


二人とも?


ユイ。


はい。


ミカは中央を見る。


自分の前に一人。


レナの前に一人。


同時に落とせば。


Crownless、三。


Rogueチーム、一。


その後ユイが落ちても、三対二。


一つ有利。


だが、簡単ではない。


相手二人も、時間を稼げばいい。


Rogueがユイを落とすまで。


ミカ。


ユイさんは何秒持ちますか。


ユイはRogueの攻撃を避けながら答えた。


ユイ。


十秒。


レナ。


短い。


ユイ。


十分ですか。


レナが少し笑った。


レナ。


十分にする。


ミカ。


私も。


ユイ。


では、託します。


ミカ。


受け取ります。


レナ。


受け取った。


十秒。


ミカは目の前の敵を見る。


射撃寄り。


ミカの射線を警戒し、遮蔽物を使っている。


普通に撃ち合えば、数秒では落とせない。


レナの前の敵も、防御重視。


Rogueチームは時間を稼ぐための配置へ変わっている。


なら。


二人がそれぞれ一人を倒す必要はない。


ミカは思った。


最強を決める必要はない。


撃破を一人ずつ所有する必要もない。


ミカ。


レナさん。


レナ。


なに。


ミカ。


相手、交換できますか。


レナは一瞬で理解した。


レナ。


できる。


ユイ。


意図を共有してください。


ミカ。


私がレナさんの相手を動かします。

レナさんは、私の相手を急がせてください。


ユイ。


受け取りました。

実行してください。


ミカは自分の前の敵から照準を外した。


レナの前。


防御を固めている相手の足元へ、遠距離から一発。


相手が反応する。


レナからではない射撃。


ミカの射線。


相手はミカを警戒して、遮蔽物の反対側へ動く。


そこは、レナの間合い。


レナは殴らない。


一歩前へ。


相手にカウンターを意識させる。


相手の判断が遅れる。


同時に、レナはミカの前にいる敵へ圧を見せた。


近づいていない。


それでも、中央へ抜ける進路へ姿を出す。


相手は焦る。


ミカと撃ち合っている間に、レナが来る。


そう思い、遮蔽物から出る。


ミカの射線へ。


ミカ。


見えました。


レナ。


こっちも。


二人が同時に攻撃する。


ミカは、自分の前の敵へ。


レナは、自分の前の敵へ。


だが、その攻撃を作ったのは互いだった。


ミカの弾が当たる。


レナの一撃が入る。


敵二人の体力が大きく減る。


倒れない。


あと一撃。


ユイ。


残り五秒。


Rogueがユイへ攻撃。


ユイは避ける。


壁に追い詰められる。


Rogue。


二人とも倒せないね。


ミカは聞かない。


レナも。


二人の敵が下がろうとする。


別方向へ。


ミカとレナを引き離すため。


ミカ。


レナさん、私の方を取ってください。


レナ。


ミカはこっち。


二人は、自分の相手を追わなかった。


交差する。


ミカはレナが削った敵へ射線を移す。


レナはミカが削った敵へ踏み込む。


相手は一瞬、反応できない。


誰が自分を倒すのか。


その予測が外れる。


ミカの一発。


撃破。


レナの一撃。


撃破。


ほぼ同時。


画面に表示が並ぶ。


ROGUE TEAM PLAYER DOWN

ROGUE TEAM PLAYER DOWN


会場が爆発した。


実況。


二人同時撃破! Crownless、星野選手と黒瀬選手が相手を入れ替えて取り切りました!


解説。


自分の対面を自分で終わらせなかった! 互いに作った撃破を、最後だけ交換しています!


撃破数。


Crownless、三。


Rogueチーム、一。


ユイ。


取得しました。


ミカ。


ユイさん!


Rogueはすでに攻撃動作へ入っていた。


ユイは避けられない。


最後の一撃。


ユイのキャラクターが倒れる。


TSUKISHIRO_YUI DOWN


撃破数。


三対二。


Crownless、一つ有利。


ユイの復帰まで二十秒。


残り時間、二分二十秒。


Rogueはユイを落とした。


だが、表情は笑っていなかった。


全体チャット。


Rogue。


ユイを見捨てて、二人取った。


ミカの胸が揺れる。


見捨てた。


違う。


ユイが託した。


でも、倒れたユイを見ると、痛い。


自分たちは二人を倒した。


ユイは落ちた。


結果だけなら、Rogueの言葉にも見える。


レナ。


ユイ。


ユイの返事はすぐに来た。


ユイ。


戻ります。


ミカ。


戻り場所を作ります。


レナ。


二十秒持たせる。


Rogue。


本当に?

君たちが撃破を取っている間に、ユイは落ちた。


ミカ。


説明したいです。


ユイ。


保留してください。


倒れているユイ本人が止める。


ユイ。


私は体力を託しました。

二人は受け取りました。


レナ。


でも落ちた。


ユイ。


はい。


ユイの声は静かだった。


ユイ。


だから、戻ります。


見捨てられたとは言わない。


自分が託した。


結果として落ちた。


その二つを分ける。


ミカの胸が少し戻る。


Rogueは中央へ動く。


味方二人は復帰待ち。


今はRogue一人。


Crownlessはミカとレナの二人。


人数有利。


しかも撃破数も一つ上。


Rogueを追う必要はない。


二十秒逃げ切り、ユイを戻す。


その後、残り時間を守ればいい。


だがRogueは、それを許さない。


全体チャット。


Rogue。


今なら二人で僕を倒せるよ。


ミカの指が動く。


Rogueを倒せる。


一人。


こちらは二人。


ここでRogueを落とせば、四対二。


ほぼ決まる。


レナも同じことを考えている。


レナ。


殴りたい。


ミカ。


撃ちたい。


ユイ。


二人とも、何のためですか。


短い問い。


ミカは止まる。


何のためにRogueを倒したい。


勝つため。


本当に?


一部は違う。


Rogue本人を倒したい。


黙らせたい。


ユイを落としたRogueを取り返したい。


最強だと証明したい。


レナ。


ムカつくから。


ミカ。


ユイさんを落としたから。


ユイ。


では、勝利条件ではありません。


レナ。


でも倒せば有利。


ユイ。


はい。

だからこそ、Rogue選手は待っています。


Rogueは中央で、わざと姿を見せている。


二人のどちらからも攻撃できる場所。


だが周囲には、復帰する味方二人の進路。


ミカとレナがRogueを追えば、その背後から挟まれる。


ユイの復帰場所も狩られる。


Rogueは自分を餌にしている。


ミカ。


撃ちません。


レナ。


殴らない。


Rogueの笑みが少し薄くなる。


二人はRogueを追わず、左右へ分かれた。


ユイが戻る場所を作る。


ミカが復帰地点へ射線を置く。


レナが中央と復帰地点の間で圧を出す。


Rogueは一人で中央へ立つ。


全体チャット。


Rogue。


逃げるんだ。


レナ。


殴りたい。


ミカ。


撃ちたい。


二人同時に言う。


だが、今度は笑っていた。


レナ。


でも殴らない。


ミカ。


撃ちません。


残り復帰時間、十秒。


Rogueチームの一人が先に復帰する。


ミカの射線を避け、中央へ。


もう一人も復帰。


三対二。


ユイはまだ戻っていない。


人数が逆転する。


Rogueチームが一斉に動く。


狙いはミカ。


世界女王。


撃破数を多く取った一人。


Rogueは、ミカを落として同点にするつもりだ。


Rogue。


ミカ。

今、一番点を取っているのは君だ。


ミカは気づく。


表示上、二撃破。


レナ、一撃破。


ユイ、ゼロ。


個人スコア。


この特殊ルールでは、それも大きく表示されている。


星野ミカ、二撃破。


黒瀬レナ、一撃破。


月城ユイ、ゼロ撃破。


誰が一番強い。


数字が答えを作っている。


Rogue。


君を落とせば、Crownlessの一番強い女王が消える。


三人がミカへ来る。


逃げ道は狭い。


ミカの体力も全快ではない。


レナが間に入ろうとする。


ミカ。


レナさん、来ないでください。


レナ。


でも三人。


ミカ。


私が一番強いから狙われているわけではありません。


ユイの復帰まで五秒。


ミカはマップを見る。


三人が自分へ寄っている。


つまり。


ユイの復帰地点が空いた。


レナの周囲も空いている。


自分が狙われているのは、個人スコアが高いから。


Rogueにとって、意味のある標的に見えるから。


なら、その意味を利用する。


ミカ。


三人を託します。


レナ。


三人も?


ミカ。


はい。

私が連れていきます。


ユイ。


受け取れません。

ミカさんが落ちます。


ミカ。


落ちる前提ではありません。


Rogueチームが迫る。


ミカは走る。


中央から遠ざかる。


ユイの復帰地点と反対方向へ。


Rogueたちは追う。


二撃破のミカ。


落とせば、最強を倒したように見える。


会場も注目する。


実況も声を上げる。


星野選手が追われる! Rogueチーム三人が集中しています!


ミカは狭い通路へ入った。


逃げ道は一本。


一見、追い詰められた。


だがミカは、そこを選んだ。


三人を一直線に並べるため。


ミカ。


レナさん。


レナ。


見える。


レナは中央から、通路の出口を見ている。


ミカが三人を引いてきた先。


ユイも復帰する。


右入口。


戻り場所には、誰もいない。


復帰。


ユイのキャラクターが戻る。


ユイ。


戻りました。


レナ。


おかえり。


ミカ。


おかえりなさい。


ユイ。


ただいま。


三対三。


だが配置が違う。


Rogueチームは、ミカを追って狭い通路に固まっている。


レナは出口。


ユイは側面。


ミカは奥。


Crownlessが三方向。


Rogueチームが一直線。


ミカは振り返った。


射線を置く。


先頭の相手が止まる。


後ろの二人が詰まる。


レナが出口から圧をかける。


退路がない。


ユイが側面から支援を置く。


Rogueたちの動きが遅くなる。


実況。


これは挟んだ! Crownless、追われていた星野選手を起点にRogueチームを狭い通路へ閉じ込めています!


Rogueの全体チャット。


Rogue。


ミカ。

自分を餌にした?


ミカは答えない。


餌ではない。


三人の意識を託された。


受け取って。


運んだ。


それだけ。


レナ。


殴りたい。


ユイ。


止めたいです。


ミカ。


撃ちたい。


三人の欲が並ぶ。


Rogueは笑う。


Rogue。


さあ。

誰が僕を倒す?


また。


最後の一撃。


誰の手柄。


誰が最強。


三人はRogueを狙える。


だが、Rogueチームの残り二人もいる。


ここでRogueだけを狙えば、横から抜けられる。


ユイが静かに言った。


ユイ。


Rogue選手を見ません。


ミカ。


はい。


レナ。


了解。


Rogueの笑みが止まる。


三人はRogue本人から視線を外した。


ミカは最後尾の一人へ射線。


レナは先頭の一人へ圧。


ユイは中央にいるRogueの動きを止める支援。


倒す相手を分ける。


いや。


倒すためではない。


三人全員を動けなくするため。


Rogueが中央から抜けようとする。


ユイが止める。


先頭の敵がレナへ攻撃。


レナが半歩下がる。


最後尾の敵が反転。


ミカが撃つ。


通路の中で、Rogueチームの動きがぶつかる。


Rogue。


僕を倒さないのか。


ユイが全体チャットへ、二度目の返事をした。


ユイ。


あなたが一番強いかどうかは、勝敗に関係ありません。


Rogue。


このルールは撃破だけだ。


ユイ。


はい。


短い返答。


ユイ。


だから、誰を倒しても同じ一点です。


会場がどよめいた。


Rogueを倒しても一点。


他の選手を倒しても一点。


人気。


因縁。


心理戦。


最強。


すべてを剥がせば、同じ一点。


Rogueは中心ではない。


勝利条件から外した時と同じ。


ミカは最後尾の敵を撃つ。


レナが先頭を殴る。


二人が同時に下がる。


Rogueが中央で動く。


ユイの支援を破る。


速い。


Rogueはユイへ向かわない。


ミカへ。


個人スコア一位。


最強に見える相手。


ミカはRogueを見た。


撃てる。


今度こそ。


だが、撃たない。


Rogueの横。


レナが削った先頭の敵へ、一発。


撃破。


Crownless、四。


Rogueチーム、二。


同時に、レナがミカの削った最後尾へ踏み込む。


一撃。


撃破。


Crownless、五。


Rogueチーム、二。


残るのはRogue一人。


味方二人の復帰まで二十秒。


残り時間、一分三秒。


勝敗はほぼ決まった。


だが、Rogueは止まらない。


ミカへ迫る。


Rogue。


二人を倒して、僕を残す。


Rogue。


怖いのかな?


ミカの胸は、もう揺れなかった。


怖くないとは言わない。


Rogueは強い。


一対一なら負ける可能性もある。


でも、倒す理由がない。


逃げる理由もない。


ミカは射線を置く。


レナは横へ。


ユイは後ろへ。


三人がRogueを囲む。


今度は、先ほどと違う。


敵の復帰まで二十秒。


撃破数は三つ有利。


Rogueを倒さなくても勝てる。


Rogueを倒せば、会場は最高潮になる。


物語としては美しい。


Crownlessが、最後にRogueを倒す。


ミカか。


ユイか。


レナか。


誰が最後の一撃を取る。


全員がそれを見ている。


実況も声を張る。


Rogue選手、三人に囲まれた! Crownless、ここで因縁の相手を落とせるか!


会場が期待する。


コメント欄も。


おそらくNoNameも見ている。


ミカは撃ちたい。


レナは殴りたい。


ユイは止めたい。


三人はそれを共有した。


ミカ。


撃ちたいです。


レナ。


殴りたい。


ユイ。


止めたいです。


そして、三人とも動かなかった。


Rogueが少しだけ目を細くする。


Rogue。


来ないのか?


ユイ。


行きません。


レナ。


倒す必要ないし。


ミカ。


私たちは、もう勝っています。


まだ時間は残っている。


敵二人も復帰する。


確定ではない。


だが、三人はRogueへ攻撃しなかった。


代わりに距離を取る。


復帰地点を見られる位置へ。


残り時間を守る配置。


Rogueは一人で中央に残された。


会場がざわめく。


派手な決着を期待していた。


Rogueを倒すところを見たかった。


だがCrownlessは、その物語を選ばない。


Rogueを倒すことを、勝利条件にしない。


Rogueの全体チャット。


Rogue。


僕を倒さずに勝つつもり?


ユイ。


はい。


Rogue。


それで満足?


レナ。


勝つから。


ミカ。


十分です。


Rogueは一瞬、黙った。


そして笑った。


今までで一番、純粋な笑い方だった。


Rogue。


それは強いね。


敵二人が復帰する。


残り時間、三十秒。


Rogueチームは最後の攻撃へ出る。


三方向。


ミカを狙う。


レナを押す。


ユイを分断する。


だが、Crownlessは追わない。


倒そうとしない。


時間を使う。


ミカが射線で動かす。


ユイが退路を作る。


レナが判断を急がせる。


いつもの形。


特殊ルールでも。


撃破だけの世界でも。


三人は自分たちの役割へ戻った。


残り十五秒。


Rogueがレナへ踏み込む。


レナは待つ。


攻撃を避ける。


ミカが足元を撃つ。


ユイが戻り場所をずらす。


残り十秒。


敵の一人がユイへ届く。


ユイが一発受ける。


体力は残る。


レナが助けに行こうとする。


ユイ。


保留。


レナ。


了解。


残り五秒。


Rogueがミカへ射線を向ける。


ミカもRogueを捉える。


撃てる。


互いに。


Rogueが撃つ。


ミカも撃った。


ただし、Rogueではない。


横の遮蔽物。


破壊。


Rogueの射線がずれる。


残り三秒。


二。


一。


試合終了。


WINNER

CROWNLESS


一瞬。


会場が静かになった。


そして。


この日一番の歓声が、会場を揺らした。


実況の声が響く。


決着! 最終撃破数、Crownless五、Rogueチーム二! CrownlessがQUEENS' CROSS BATTLE初戦を制しました!


解説。


最後までRogue選手を倒しませんでした! 個人の因縁ではなく、チームの勝利条件だけを見続けました!


ミカは画面を見つめた。


勝った。


本当に。


最終試合。


Rogueを倒さずに。


最強を決めずに。


Crownlessが勝った。


レナが最初に声を上げた。


レナ。


勝った!


ユイ。


はい。


ミカ。


勝ちました。


声が震えた。


嬉しい。


第一試合よりも。


世界大会で勝った時とも違う。


自分一人の最後の一発ではない。


誰が最後を取ったかも、よくわからない。


ミカが二人落とした。


レナも二人落とした。


ユイの撃破数は、最後までゼロ。


表示上はそうなっている。


だが、ユイがいなければ。


体力を託さなければ。


道を作らなければ。


Rogueを止めなければ。


一つも成立していない。


Rogueが全体チャットに、最後の一文を打った。


Rogue。


誰が一番強かった?


ミカは個人スコアを見る。


自分とレナ。


二撃破ずつ。


ユイ、ゼロ。


数字なら、ミカとレナ。


だが、答えはもう決まっている。


ミカ。


決める必要はありません。


レナ。


三人で勝った。


ユイ。


それが結果です。


Rogueの返事は、少し遅れた。


Rogue。


なるほど。


さらに少し間。


Rogue。


NoNameが君たちを選んだ理由が、少しわかったよ。


ミカの胸がざわつく。


最後に師匠を持ち出す。


だが、以前とは違う。


NoNameの影だとは言われていない。


NoNameに作られたとも。


選んだ理由。


それでもミカは、静かに返した。


ミカ。


今日は、私たちが選びました。


Rogueの返事はなかった。


試合画面が閉じる。


会場の大型スクリーンに、Crownlessの三人が映る。


観客が立ち上がっている。


歓声。


拍手。


名前を呼ぶ声。


ミカ。


ユイ。


レナ。


Crownless。


冠なしの三人。


三人はヘッドセットを外した。


外の音が、一気に入ってくる。


大きい。


眩しい。


胸が苦しいほど嬉しい。


レナが立ち上がる。


ユイも。


ミカも立つ。


三人は顔を見合わせた。


最初にレナが手を出した。


拳。


ミカも拳を合わせる。


ユイは少しだけ迷ってから、同じように拳を合わせた。


レナ。


三人で勝った。


ユイ。


はい。


ミカ。


三人で。


その時。


ディスコードに通知が来た。


NoName。


良い勝利です。


三人は同時に画面を見た。


いつもの言葉。


何度も求めた言葉。


でも、今日は少し違って見えた。


その下に、もう一文が続く。


NoName。


誰が一番強かったかは、私にも判断できません。


レナが笑った。


レナ。


ノーがわかんないって言った。


ユイ。


珍しいですね。


ミカ。


本当に。


NoName。


三人とも、別の場面で最も強かったです。


ミカの目の奥が熱くなった。


三人とも。


別の場面で。


最も強かった。


それでいい。


それがCrownlessだ。


レナ。


ノー。


NoName。


はい。


レナ。


ちゃんと見てた?


NoName。


見ていました。


ユイ。


最後まで?


NoName。


はい。


ミカは少しだけ指を震わせながら打った。


ミカ。


師匠。


NoName。


はい。


ミカ。


ただいま。


ユイも続けた。


ユイ。


戻りました。


レナ。


戻った。


NoNameの返事は、少し遅れた。


ほんの数秒。


でも、三人は待った。


そして届く。


NoName。


おかえりなさい。


短い一文。


その瞬間。


ミカは、ようやく勝った実感を受け取った。


会場の歓声より。


大型スクリーンの勝利表示より。


実況の叫びより。


その一言が、一番深く届いた。


Crownlessは勝った。


誰が一番強いかを決めないまま。


誰かを不要にしないまま。


Rogueを物語の中心に置かないまま。


そして三人は。


自分たちの戻る場所へ、帰ってきた。


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