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世界女王は、彼にだけ勝てない  作者: てへろっぱ


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12/42

第十二話 煽り屋は、怒りを撃たせる

Rogueという名前を見た瞬間、黒瀬レナの機嫌は目に見えて悪くなった。


配信者としても、元プロとしても、実力者としても、彼は有名だった。


ただし、良い意味だけではない。


相手を煽る。

挑発する。

試合前から心理戦を仕掛ける。

勝てば大きく笑い、負けても相手の弱点を切り抜きで拡散する。

炎上を恐れず、むしろ炎上を数字に変える。


そういう男だった。


レナはディスコードに貼られたRogueのプロフィールを見ながら、低く打った。


こいつ、嫌い。


ミカ。


かなりはっきり言いますね。


レナ。


嫌いなものは嫌い。


ユイ。


気持ちはわかります。

ただ、実力は本物です。

過去の大会成績も、混合形式での適応力も高い。


NoName。


はい。

Rogue選手は強いです。


レナ。


師匠が強いって言うの、ちょっと嫌なんだけど。


NoName。


事実です。


レナ。


もっと嫌。


星野ミカは画面の前で、Rogueの過去映像を見ていた。


派手な選手だった。


撃ち合いも強い。

近距離の押し引きも上手い。

盤面を見る力もある。

そして何より、相手の苛立ちを利用するのが上手い。


試合開始前から、相手の癖を口にする。


君は勝ち急ぐ。

君は守りたがる。

君は味方を信用していない。

君は自分が主人公だと思っている。


それを笑いながら言う。


相手は当然、反応する。


怒る。

否定する。

冷静でいようとする。

無視しようとする。


その全部を、Rogueは見ている。


怒った相手が前に出るなら、そこを狩る。

冷静を装う相手が待つなら、待たせたまま別の場所を壊す。

無視しようとする相手には、チームメイトへ話題を振る。


一人だけを煽るのではない。


チーム全体の温度をずらす。


ミカは唇を引き結んだ。


嫌な相手ですね。


NoName。


はい。


ユイ。


Rogue選手は、相手の怒りを直接狙うというより、怒りによって変わる判断を狙っています。


NoName。


その通りです。


レナ。


つまり、怒ったら負け?


NoName。


怒ること自体は負けではありません。

怒りを自覚しないまま動くと負けます。


レナ。


刺さる。


ミカ。


私も刺さります。


ユイ。


私もです。


Rogue対策の初日は、映像分析から始まった。


NoNameは、Rogueの試合を三本用意していた。


一本目は、海外大会の決勝。


Rogueは序盤から相手チームのリーダーを煽っていた。


君の指示は遅い。

味方は君を信じすぎている。

崩れたら誰も動けない。


ミカはその言葉を見て、ユイの方を思った。


本人も同じことを思ったのだろう。


ユイの返信が少し遅れた。


嫌な言葉ですね。


NoName。


刺さる相手に刺さる言葉を選んでいます。


ユイ。


私にも刺さります。


NoName。


はい。


ユイ。


否定してほしかったです。


NoName。


事実なので。


レナ。


この男、ほんと容赦ない。


映像の中で、Rogueの相手チームは少しずつ崩れていった。


リーダーが焦る。


指示が増える。


指示が増えるほど、味方が待つ。


味方が待つほど、リーダーがさらに指示を出す。


そして全体が遅くなる。


Rogueはそこを突いた。


正面からではない。


斜めから。


一番守られていない、けれど崩れると全体に響く場所。


そこを小さく壊した。


結果、相手チームは大崩れした。


ユイは映像を止めた。


ここで、相手リーダーが自分の指示量を減らすべきでした。


NoName。


はい。


ユイ。


ただ、あの状況で減らすのは難しいです。

煽られた直後に指示を減らすと、自分が動揺したように見える。


NoName。


Rogue選手は、そこまで見ています。


ミカ。


嫌なところまで見てる。


レナ。


殴りたい。


NoName。


その気持ちは記録してください。


レナ。


なんで。


NoName。


Rogue選手と当たると、必ずそう思います。

今のうちに自覚しておいた方がいいです。


レナはしばらく返事をしなかった。


たぶんノートに書いている。


ミカは少し笑いそうになった。


レナは最近、何だかんだでちゃんと書くようになっている。


二本目の映像。


今度は個人戦寄りの特殊形式だった。


Rogueは、相手のエースに向かって言った。


君は最後、自分で決めたがる。

ヒーローになりたいんだろ。


ミカの胸が少しだけ鳴った。


それは、自分にも刺さる。


世界大会決勝。


最後の一撃を撃った時。


自分で決めたい気持ちが、なかったとは言えない。


NoNameがすぐに言った。


星野ミカさんは、ここを見てください。


ミカ。


はい。


映像の相手選手は、Rogueの言葉に反応しないようにしていた。


表情は冷静。

動きも大きく崩れていない。


だが、最終局面で少しだけ選択が変わった。


味方を使えば安全に勝てる場面。


エースは、自分で決めに行った。


決められそうだった。


だがRogueは待っていた。


そのエースが、自分で決めに来ることを。


結果、カウンター。


逆転負け。


ミカは無言で映像を見つめた。


痛い。


これは痛い。


レナ。


ミカ、大丈夫?


ミカ。


大丈夫です。

でも、かなり嫌です。


ユイ。


Rogue選手は、相手の自己像を攻撃していますね。

君はこういう人間だ、と決めつける。

相手は否定したくなる。

しかし否定しようとする行動が、逆にその像へ寄ってしまう。


NoName。


はい。


ミカ。


ヒーローになりたいって言われたら、私はたぶん違うって思います。

でも、その後で自分が決めに行くと、言われた通りになる。


NoName。


そうです。


ミカ。


じゃあ、どうすればいいんですか。


NoName。


まず、違うと証明しないことです。


ミカは手を止めた。


違うと証明しない。


NoName。


Rogue選手は、相手に否定させます。

否定した瞬間、相手の行動はRogue選手の言葉を中心に回ります。


ユイ。


無視ではなく、受け取って横に置く必要がありますね。


NoName。


はい。


レナ。


横に置くって何。


ユイ。


言われた内容を、正しいか間違いかで即判断しない。

その言葉によって自分が何をしたくなるかを見る、という意味だと思います。


NoName。


はい。


ミカはノートに書いた。


違うと証明しない。

言葉で動かされた自分を見る。


三本目の映像。


Rogueがチーム全体を煽った試合だった。


彼は試合前にこう言った。


お前たち、仲良しチームだろ。

互いを信じてるって顔してる。

でも、誰か一人がミスした時、本当に許せるのか?


その言葉の後、Rogueは徹底的にミスを誘った。


誰か一人を集中攻撃するのではない。


全員に少しずつ負荷をかける。


小さな判断ミス。

小さな被弾。

小さな遅れ。


それを積み重ねて、チーム内に微妙な空気を作る。


味方を責めるほどではない。


でも、少しだけ気になる。


あの人、今遅れた。

あの人、さっきも見落とした。

私がカバーした。

次もカバーするのか。


それが、数分後に大きなズレになる。


ミカは背筋が寒くなった。


私たちにも、やってきそうですね。


ユイ。


間違いなく。


レナ。


やられたらムカつく。


NoName。


そこが狙いです。


ユイ。


私たちはまだ組み始めたばかりです。

連携の信頼はありますが、実戦での蓄積は浅い。

Rogue選手からすれば、崩しやすい対象でしょう。


ミカは少しだけ悔しくなった。


組み始めたばかり。


その通りだ。


ミカはユイとレナを信頼している。


でも、長年のチームメイトではない。


試合中に誰かがミスした時、自分がどう感じるか。


まだわからない。


自分がミスした時、二人がどう思うかも。


わからない。


そこをRogueは突いてくる。


NoName。


今日の課題は、Rogue選手に言われたら一番動かされる言葉を出すことです。


レナ。


最悪の宿題来た。


ミカ。


嫌です。


ユイ。


必要ですね。


レナ。


ユイ、強いな。


ユイ。


嫌ですが、必要です。


NoName。


まず、星野ミカさん。


ミカは心臓が跳ねた。


いきなり自分。


少し考える。


Rogueに言われたら嫌な言葉。


いくつもある。


世界女王なのに、師匠頼り。

最後は自分で決めたいだけ。

NoNameがいなければ勝てなかった。

チームの力ではなく、話題性だけ。

女王ごっこ。


ミカはペンを握った。


一番嫌なのは、たぶんこれだ。


私は、師匠がいなければ勝てなかっただけ、って言われたら動くと思います。


送信。


チャットが少し静かになる。


NoName。


理由は。


ミカ。


悔しいからです。

私の努力も、チームの努力も、全部師匠のものにされる気がします。

それを否定したくなります。


NoName。


では、言われたらどうしますか。


ミカは考えた。


たぶん、証明したくなる。


NoNameに頼っていないと。

自分で強いと。

自分で勝てると。


その結果、前に出る。


撃ちに行く。


Rogueが待っている場所へ。


ミカ。


自分で決めに行きたくなります。


NoName。


良いです。

それを自覚してください。


次に、月城ユイ。


ユイは少し長く沈黙した。


そして打った。


あなたの指揮は、味方を自分の駒にしているだけだ。

そう言われると、動かされると思います。


ミカは画面を見つめた。


それは、かなり深いところだと思った。


レナもすぐには茶化さなかった。


NoName。


理由は。


ユイ。


私は、味方の負担を減らすために配置を組んでいるつもりです。

でも、それが本当に味方の意思を尊重しているのか、迷うことがあります。

だから、駒にしていると言われると、否定したくなる。


NoName。


言われたらどうしますか。


ユイ。


指示を減らしすぎるかもしれません。

味方に任せようとして、必要な指示まで控える可能性があります。


NoName。


良いです。


ユイ。


良い、ですか。


NoName。


自覚できています。


ユイは少しだけ息を吐いたようだった。


最後に、黒瀬レナ。


レナ。


私は簡単。

お前、NoNameに構ってほしいだけだろって言われたらキレる。


ミカは咳き込みそうになった。


ユイの返信も少し遅れた。


かなり率直ですね。


レナ。


だってムカつくじゃん。


NoName。


理由は。


レナ。


知らない。


NoName。


考えてください。


レナ。


……勝ちたい気持ちを、別のものにされるのが嫌。

NoNameに勝ちたいのは本当だけど、それを構ってほしいだけとか言われたら、全部馬鹿にされた気がする。


ミカは黙った。


レナの言葉は、荒いけれど正直だった。


ミカにもわかる。


自分の感情を、誰かに勝手に小さくされるのは嫌だ。


NoName。


言われたらどうしますか。


レナ。


殴りに行く。


NoName。


はい。


レナ。


はいじゃない。


NoName。


Rogue選手もそう思います。


レナ。


腹立つ。


NoName。


その怒りを、見せ札にしてください。


レナはしばらく黙った。


レナ。


つまり、キレたように見せて、本命は別にする?


NoName。


はい。


ユイ。


三人とも、言われて嫌な言葉を見せ札にするということですね。


NoName。


そうです。


ミカ。


できるかな……。


NoName。


最初から完全にはできません。

なので、準備します。


NoNameは、新しい資料を共有した。


Rogue対策。


一、言われて嫌な言葉を事前に決める。

二、それを言われた時に出る初動を記録する。

三、初動をそのまま出す場合と、見せ札にする場合を分ける。

四、三人のうち誰かが動かされた時、残り二人が拾う。

五、Rogueの言葉に反論しない。試合内容で処理する。


ミカは黙って読んだ。


Rogueの煽りに、返事をしない。


言葉で否定しない。


試合で処理する。


それは、難しい。


でも、NoNameらしい。


レナ。


言い返しちゃ駄目?


NoName。


駄目です。


レナ。


一言も?


NoName。


試合中は。


レナ。


配信外なら?


NoName。


試合後にしてください。


レナ。


よし。


ユイ。


するんですね。


レナ。


勝ったら言う。


ミカは少し笑った。


レナらしい。


でも、たぶんそのくらいでいい。


完全に怒りを消す必要はない。


怒る自分を知って、使えばいい。


次にNoNameは、古い対戦ログを開いた。


三人が同時に反応する。


ミカ。


これは?


NoName。


私とRogue選手の過去ログです。


チャットが止まった。


レナ。


見せるの?


NoName。


はい。

Rogue選手対策に必要です。


ユイ。


NoNameさんの試合ログを見るのは、初めてですね。


ミカは画面の前で息を止めた。


NoNameの試合ログ。


負け試合ではない。


それでも、NoNameの過去が少しだけ見える。


映像が始まった。


古いゲームだった。


タクティカルアリーナ系。

今度の企画に近い形式。


Rogueは当時からRogueだった。


試合前チャットで、相手を煽っている。


お前、名前ないの?

NoNameって、負けた時に逃げるための名前?

勝っても誰かわからない。負けても誰かわからない。

便利だな。


ミカは眉をひそめた。


嫌な言葉だった。


しかしNoNameは、何も返さない。


試合が始まる。


Rogueは序盤からNoNameを探るように動いた。


煽りながら、距離を測る。


攻めるふり。

退くふり。

味方を動かすふり。

本命を隠す。


強い。


Rogueは、確かに強かった。


派手なだけではない。


相手の意識を動かすのが上手い。


NoNameは、それにほとんど反応しなかった。


淡々と位置を取り、Rogueの誘導を外し、必要な場所だけを潰していく。


レナ。


うわ、地味に嫌な潰し方。


ユイ。


Rogue選手の煽りに反応せず、行動の変化だけを見ていますね。


ミカ。


師匠、全然動かされてない。


NoName。


この時は、そう見えます。


ミカは、その言い方に引っかかった。


そう見えます。


つまり、実際は違う?


映像は終盤へ進む。


Rogueが不利になる。


それでも彼は笑っている。


試合内チャットで打つ。


お前、つまらないな。

勝つだけのプレイヤーか。

誰にも見られない場所で、誰にも知られずに勝つ。

それで満足なら、機械と同じだ。


ミカの胸が少し痛んだ。


これは。


NoNameに刺さるのだろうか。


NoNameは、また返さない。


だが、次の動きが少し変わった。


ほんの少しだけ、前に出た。


それまでより、直接的にRogueを取りに行った。


ユイがすぐに気づく。


ここ、動きが変わっています。


NoName。


はい。


レナ。


煽られた?


NoName。


少し。


三人が黙った。


NoNameが、少し煽られた。


それは驚きだった。


NoNameも動かされる。


NoNameも人間なのだと、当たり前のことを思った。


映像の中で、NoNameはRogueを倒した。


勝った。


だが、その直後、別の場所で味方BOTが崩れた。


NoNameがRogueを取りに行った分、盤面の一部が薄くなっていた。


結果として、勝ちはしたが、かなり危ない形になっている。


NoName。


ここがRogue選手の上手いところです。

負ける状況でも、相手の次の負け筋を残します。


ミカ。


次の負け筋。


NoName。


この試合、私は勝ちました。

ですが、この後もう一戦していたら、危なかったと思います。


レナ。


NoNameでもそうなるんだ。


NoName。


なります。


ユイ。


Rogue選手は、勝敗だけでなく、次戦へ感情や癖を持ち越させる。


NoName。


はい。


ミカはノートに書いた。


Rogueは、負けても次の負け筋を残す。


これは厄介だ。


一試合勝てば終わりではない。


むしろ、勝った後こそ危ない。


Rogueに勝ったことで、感情が動く。


黙らせたと思う。

証明したと思う。

次も勝てると思う。


そこを次に突かれる。


NoName。


Rogue選手に対しては、勝った後も検証対象です。

勝利で終わらせないでください。


ミカ。


はい。


ユイ。


承知しました。


レナ。


勝っても殴り足りないと思うけど、気をつける。


NoName。


良いです。


映像が終わった。


三人はしばらく黙っていた。


NoNameの過去ログ。


そこには、絶対に動かされない最強の男ではなく、少しだけRogueに煽られ、それでも勝った男がいた。


ミカはその方が、前よりNoNameを近く感じた。


完璧な人ではない。


でも、完璧ではない自分を知っている人だ。


だから強い。


だから、自分たちにも負け方を見ろと言う。


ミカはディスコードに打った。


師匠。


NoName。


はい。


ミカ。


ログ、見せてくれてありがとうございます。


ユイ。


私からも。

非常に参考になりました。


レナ。


ちょっとだけ安心した。

あんたも煽られるんだって。


NoName。


煽られます。


レナ。


素直。


NoName。


事実です。


ミカは少しだけ笑った。


NoNameは続けた。


Rogue選手対策のまとめです。


一つ。

言われて嫌な言葉を、事前に自覚すること。


二つ。

否定しようとしないこと。


三つ。

怒りや悔しさを消さず、見せ札にすること。


四つ。

誰かが動かされたら、残り二人が拾うこと。


五つ。

勝った後も終わったと思わないこと。


三人はそれぞれノートに書いた。


その時、レナが打った。


NoName。


NoName。


はい。


レナ。


Rogueに言われて、一番嫌だった言葉って何。


ミカは息を止めた。


ユイも返事を止めた。


NoNameは、しばらく沈黙した。


長かった。


今までで一番長い沈黙かもしれない。


そして、短く返した。


誰にも見られない場所で勝って、それで満足なのか。


ミカは画面を見つめた。


Rogueの言葉。


機械と同じだ。


それがNoNameに刺さった。


なぜか。


NoNameが表に出ない理由と関係があるのか。


誰にも見られない場所で勝つこと。


それを彼自身が、どこかで気にしているのか。


レナは、いつもの勢いで茶化さなかった。


ユイも、分析を返さなかった。


ミカも、何も言えなかった。


NoNameが続けた。


今日はここまでです。

次回は実戦形式でRogue選手対策をします。


レナ。


わかった。


ユイ。


お疲れさまでした。


ミカ。


お疲れさまでした。


NoNameがオフラインになった。


その後も、三人は少しだけ残っていた。


レナが最初に打った。


あいつ、やっぱ面倒くさいね。


ユイ。


はい。

かなり。


ミカ。


でも、少しわかった気がします。


レナ。


何が?


ミカは少し考えた。


NoNameが出たくない理由。

出ない理由。

それでも、私たちを見てくれる理由。


言葉にはできなかった。


だから、別のことを打った。


師匠も、負け方を持ってるんですね。


ユイ。


そうですね。


レナ。


じゃあ、いつかそれも使わせる。


ミカは笑った。


レナらしい。


でも、同じことを思った。


NoNameの負け方。


いつか、それを見る。


そして、NoName自身がまだ使えていないものがあるなら。


今度は、こちらが見つけたい。


三人の女王は、それぞれのノートを閉じた。


次の相手はRogue。


煽り屋。


強者。


NoNameを表へ引きずり出そうとする男。


だが、三人はもう知っている。


怒りは消さなくていい。


悔しさも消さなくていい。


証明したい気持ちも、黙らせたい気持ちも、守りたい気持ちも。


全部、見ればいい。


見た上で、使えばいい。


Rogueは怒りを撃たせる。


なら、その怒りで別の場所を撃てばいい。


ミカはノートの最後に一文を書いた。


言葉で動かされた自分を、先に見る。


その下に、もう一文。


師匠も、人間。


書いてから、少しだけ頬が熱くなった。


それはなぜか、誰にも言わないことにした。


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