表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女装探偵  作者: 相澤 沁
PR
72/100

大袈裟すぎる宴

数日間、仁は社長室に籠もり、何も手に付かない状態が続いていた。

片桐ファーマシーの社長として、由香の危機を間近に感じたショックは大きく、食事もろくに喉を通らなかった。

しかし、佐々木から届いた最終報告——陳偉の香港での身柄拘束、金泰浩の実刑確定、李尚浩の執行猶予付き判決と会社解散——を読み終えた瞬間、仁の顔からようやく血の気が戻った。

「これで……本当に終わったのか。」

仁は深く息を吐き、由香を抱きしめて泣き出した。

由香もパパの胸で小さく泣き、ようやく安心した笑顔を見せた。

そして、数日後。

仁は「反省会兼慰労会」と称して、片桐ファーマシーのメインホールに全員を招集した。

仁、健一、高木、佐々木、そして由香の5人。

テーブルには仁が取り寄せた高級料理が所狭しと並び、片桐ファーマシーのメインホールはまるでパーティー会場のような賑わいを見せていた。

仁はビールジョッキを片手に立ち上がり、突然大声で宣言した。

「由香! パパが決めたぞ!コスプレイベントを大々的に開催する!会場は由香に選ばせる。どんなに大きくてもいいから、貸し切ってやる!告知には広告代理店を10社以上使って、全国に宣伝するぞ!パパは本気だからな!」

由香は最初、目を丸くして戸惑っていた。

「え、パパ……? そんなに大掛かりに……?」

しかし、次第に瞳が輝き始め、両手を握りしめて立ち上がった。

「本当!? じゃあ、会場は東京ビッグサイトの展示ホール貸し切っちゃおうかな!?告知ポスターは全国の駅に貼って、ネット広告もバンバン出して……わー! やばい、超楽しみ!!」

Guardeanの面々——健一、高木、佐々木——は揃って呆れ顔になった。

健一がため息をつきながら呟く。

「由香ちゃんが助かったのが嬉しいのは解るけど……ここまでやるかね……」

高木も苦笑しながらコーヒーを飲む。

「仁さん、完全にスイッチ入っちゃったな。」

佐々木も穏やかに、しかし遠慮がちに言った。

「片桐社長……由香さんの喜ぶ顔が見られて、私も嬉しいのですが……これはもう、イベント会社レベルの予算になりますね。」

もちろん、Guardeanメンバーにもコスプレの誘いが飛んできた。

由香は目をキラキラさせて、仁に抱きつきながら言った。

「みんなでやるの! またセーラームーンやろうと思ってたけど……もっと大きく!アベンジャーズのコスプレにしよう!」

佐々木が興味深そうに首を傾げた。

「コスプレ……とは、どんなものなのですか?」

由香は目を輝かせて、精一杯説明した。

「好きなアニメや漫画、映画のキャラクターの衣装を着て、写真撮ったりイベントに出たりするんです!

みんなで同じ世界観で集まると、すっごく楽しいんですよ!佐々木さんも絶対似合うと思います!」

佐々木は静かに聞き終え、ふと立ち上がった。

そして、スーツの上着を脱ぎ、シャツのボタンを外し始めた。

「実は……私、若い頃からボディビルを趣味としておりましてですね。」

シャツが脱がれ、ムキムキの上半身が露わになった。

還暦の高齢とは思えない、鍛え上げられた筋肉が照明に照らされて輝く。

佐々木は得意げにダブルバイセップスを決め、ニヤリと笑った。

「この肉体を人前に解き放てる千載一遇のチャンスが到来したとは……!」

そこにはもう敏腕国際弁護士の影など微塵もなく、ただの筋肉自慢のオジサンが立っていた。

由香は一瞬固まった後、ぱっと手を叩いた。

「決まり! 佐々木さんはハルク!!ボディペイントで緑色に塗って、筋肉を思う存分披露してください!」

続いて高木が指名された。

「悠斗さんはアイアンマン! クールでカッコいいからぴったり!」

高木は渋い顔をしたが、由香の視線に負けてため息。

由香はニコニコしながら言った。

「健一さんはブラックウィドウ!美穂さんみたいにカッコよくて強い女性キャラ、絶対似合うよ!!」

仁はもう完全にノリノリで、スマホを取り出した。

「よし! 衣装は全部オーダーする!最高級のコスチュームメーカーに特注で作らせるぞ!佐々木君のハルクは……ボディペイント専門のスタッフも呼ぶ!」

佐々木は満面の笑みで、再びポージングを決めた。

「ふふふ……この肉体が、再び世に放たれる日が来るとは!!!」

健一と高木は顔を見合わせ、揃って呆れ顔で笑った。

「佐々木さんって……意外とダメ人間だったんだな。」

「完全に筋肉バカだ……」

由香は皆の輪の中で、最高に幸せそうな笑顔を浮かべていた。

「みんなでアベンジャーズ!パパの会社がスポンサーで、超大規模イベント!私、スカーレット・ウィッチやる!絶対、最高の思い出になるよ!」

イベント開催までの大々的な宣伝は、仁の「由香が喜ぶなら何でもする」という過保護全開の情熱がそのまま形になったものだった。

片桐ファーマシーと昭和製薬の共同スポンサーシップにより、予算は常識外れの規模に膨れ上がった。

宣伝のキーワードは徹底して「最初で最後の巨大コスプレイベント3日間開催」

片桐親子やGuardeanの名前は一切出さず、あくまで「一般向け・超大規模なコスプレ祭り」として位置づけ、たくさんの人が参加できることに主眼を置いた。


由香たちのアベンジャーズは人気だった。

佐々木のハルクは緑のボディペイント+自慢のムキムキ筋肉全開で大ウケ。

観客から「本物のハルク!?」と絶叫が上がった。

美穂のブラックウィドウはクールでセクシーな動きで拍手喝采。

高木のアイアンマンは光るギミック満載で子供たちに囲まれる。

由香のスカーレット・ウィッチは魔法エフェクトを駆使したパフォーマンスで大ウケ。


イベント全体で、参加者の満足度は極めて高く、SNSでは「人生最高の3日間」「日本史上最大級のコスプレ祭り」とバズりまくった。

仁は由香の笑顔を見て大満足。

Guardeanメンバーも呆れながらも楽しかったと振り返り、佐々木は「ハルク役、もう一度やりたい」と本気で言っていた。

昭和製薬の資金援助は「Guardeanへの恩返し」として、仁が固く約束を守った形。

結果として、何万人もの人々が純粋に楽しめた、忘れられない巨大イベントとなった——。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ