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女装探偵  作者: 相澤 沁
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執拗な圧力2

由香の小さな体が、ソファの上で震えていた。

美穂の胸に顔を埋め、両手で強く握りしめた服の袖が、わずかに皺を寄せている。

由香の呼吸は浅く速く、何か得体の知れないものが自分を狙っている——という実感が、ようやく心に染み込んできたようだった。

パパの会社のこと、土地のこと、自分が名前を出されて脅されたこと……。

今まで「怖い話」として遠くにあったものが、急に自分のすぐ近くに迫ってきた。

美穂は由香の背中を優しく、ゆっくりと撫でながら、耳元で囁くように言った。

「由香ちゃん……大丈夫だよ。私たちがずっと付いてるから。絶対に、由香ちゃんに何もさせない。」

由香は顔を上げ、涙で少し潤んだ目で美穂を見つめた。

その瞬間、美穂は由香を強く——でも痛くないくらいに——抱きしめた。

由香の髪から、シャンプーの甘い匂いがふわりと漂う。

由香は小さく「うん……」と頷き、美穂の胸に再び顔を寄せた。

少しだけ、震えが収まっていくのがわかった。

部屋の空気が少し和らいだところで、由香はふと画面の方に視線を移した。

そこには、眼鏡をかけた穏やかな表情の男性が映っている。

由香にとっては初めて見る顔だった。

「……あの、どなたですか?」

由香がおずおずと、ほとんど囁くような声で聞いた。

高木が静かに口を開いた。

「由香ちゃん、この人は佐々木さん。佐々木蔵之介さんっていう国際弁護士だよ。」

美穂が由香の髪を優しくかき上げながら、補足した。

「Guardean事務所のブレインとして、最近仲間になってくれた人。ものすごく頭が良くて、信頼できる人なんだ。今、K-joyfulのこととか、由香ちゃんを守るための調査を全部やってくれてるよ」

佐々木は画面越しに、いつもの丁寧な笑みを浮かべて軽く頭を下げた。

「由香さん、初めまして。佐々木蔵之介と申します。突然のお話でご心配をおかけして、本当に申し訳ありません。ですが、私も皆さんと同じく、由香さんの安全を何より第一に考えております。どうか、少しでも安心していただけるよう、全力で努めさせていただきます。」

由香は一瞬、ぴくりと体を硬くした。

いきなり知らない大人の男性に話しかけられた緊張が、顔に表れている。

でも、美穂の腕の中で、少しずつ息を整えながら、小さく頭を下げた。

「……は、初めまして……佐々木さん。よろしくお願いします……」

声は小さかったが、ちゃんと敬語を使おうとしているのが伝わってきた。

仁が優しく微笑み、由香の頭を撫でた。

「由香、佐々木君は本当にいい人だよ。パパも、健一君たちも、みんな佐々木君を信頼してる。だから、安心していいんだ。」

由香はこくりと頷き、美穂に寄りかかったまま、もう一度画面の佐々木を見た。

「……ありがとうございます。佐々木さんも……私を守ってくれるんですか?」

佐々木の目が、優しく細められた。

「もちろんです。由香さんが安心して大学に行けるように、笑っていられるように——それも、私の大事な仕事です。」

由香の唇が、ほんの少しだけ緩んだ。

まだ恐怖は完全に消えていないけれど、美穂の温もり、悠斗さんの静かな視線、仁の大きな手、そして画面の向こうの新しい「仲間」の言葉が少しずつ心の隙間を埋め始めていた。

美穂が由香の耳元で、もう一度囁いた。

「ね? みんなで守るよ。今日はもう休もう。この美穂さんが、ずっとそばにいるからね。」

由香は小さく「うん……」と答え、美穂の胸に顔を埋めた。

事務所の照明が、優しく五人を包む。

外では夜が深まっていたが、ここには確かな「守る」力が、静かに息づいていた。

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