護る者として1
大橋と武藤の逮捕から数日後、昭和製薬本社の社長室に、佐々木蔵之介弁護士が静かにノックして入ってきた。
安達祐次社長はデスクで書類に目を通していたが、佐々木の表情を見てすぐに椅子から立ち上がった。
いつも冷静で、国際案件でも動じない佐々木の目が、今日は少し赤く腫れ、声がかすれている。
「蔵之介、どうした?珍しく顔色が悪いな。」
佐々木は深く息を吸い、ゆっくりと頭を下げた。
その手には、白いメモ用紙が握られていた。
「……社長。本日は、私の顧問料について……お願いに参りました。」
安達は眉を寄せ、ソファを勧めた。
佐々木は座らずに立ち続け、声を震わせながら、しかしはっきりと続けた。
「私の顧問料を……月額300万円から、100万円に下げてください。」
安達は一瞬、言葉を失った。
佐々木は目を伏せ、悔し涙を堪えながら言葉を重ねた。
「あんな……素晴らしく恐ろしいまでに優秀なGuardeanの皆さんが、月額100万円で、あれだけの仕事をやってのけている。たった2人で、たった3週間で1億2千万円の横領を暴き、自白録音、金の流れ、証言、映像……すべてを完璧に揃えて、検挙まで持っていった。それに比べて、私など……どれだけ傲慢だったか、思い知らされました。本当に……恥ずかしい。300万円も受け取る資格など、私にはありません。」
佐々木の声は次第に震え、目から涙が一筋、ぽたりと落ちた。
「今まで、自分がどれだけ甘えていたか……国際弁護士の肩書に頼り、高額報酬を当然のように受け取っていた。でも、あの二人の仕事を見たら……悔しくて、情けなくて……涙が止まりませんでした。社長、どうか……顧問料を下げさせてください。これからも、Guardeanと組んで、昭和製薬を守るために、全力で働きたいんです。」
安達は静かに佐々木の肩に手を置き、しばらく言葉を探した後、優しく言った。
「……そこまで言うなら、承諾しよう。月額100万円に変更する。ただし……蔵之介、君の優秀さは確かだ。国際案件の処理、銀行照会、ログ復元、映像入手……君がいなければGuardeanの証拠もここまで早く揃わなかったと彼らも言ってたよ。だから、いつでも言ってくれ。『月額を戻したい』と思ったら、すぐに戻す。君のプライドも、会社の信頼も、どちらも大事だからな。」
佐々木は涙を拭き、深く頭を下げた。
「……ありがとうございます、社長。これからも、Guardeanと共に……全力で、昭和製薬をお守りします。」
安達は佐々木の肩を軽く叩き、穏やかに微笑んだ。
「頼むよ、蔵之介。……Guardeanも、君も、欠かせない重要な人材だ。」
社長室に、静かな決意の空気が満ちた。
佐々木蔵之介は、顧問料を下げたことで、むしろ心が軽くなったように感じていた。
これからは、Guardeanと並んで、昭和製薬の影で戦う――
その思いが、佐々木の胸に強く刻まれた。
翌朝、Guardean事務所のチャイムがいつもより控えめに鳴った。
ドアを開けると、そこに佐々木蔵之介弁護士が一人で立っていた。
スーツはいつも通り完璧に仕立てられているが、目の下にうっすらとクマができ、声がかすれているのが一目でわかった。
「佐藤さん、高木さん……突然お邪魔して申し訳ありません。少し、お時間をいただけますか?」
健一と高木はすぐに佐々木を中へ招き入れ、テーブルに座らせた。
健一がコーヒーを淹れる間、佐々木は深く息を吸い、ゆっくりと頭を下げた。
「……安達社長に、直談判してきました。私の顧問料を、月額300万円から……Guardeanと同じ100万円に下げてもらいました。」
健一と高木は一瞬、言葉を失った。
佐々木は目を伏せ、悔し涙を堪えながら続けた。
「今までの自分が……どれだけ傲慢だったか、本当に思い知らされました。国際弁護士の肩書に頼り、高額報酬を当然のように受け取って……でも、Guardeanの皆さんが、月額100万円で、あれだけの仕事をやってのけている。自らを危険にさらして、潜入までして、完璧な証拠を揃えて……それに比べて、私など……恥ずかしくて、情けなくて……涙が止まりませんでした。」
佐々木は深々と頭を下げ、声が震えながら、しかしはっきりと続けた。
「どうか……私を、Guardeanの仲間と認めてほしい。これからは、同じ志で……昭和製薬を守るために、全力で働かせてください。」
高木は静かに立ち上がり、佐々木の肩に手を置いた。
「佐々木さん……頭を上げてください。」
佐々木がゆっくり顔を上げると、目が涙で濡れているのがはっきり見えた。
健一は佐々木の目を見て、穏やかだが力強い声で言った。
「佐々木さん……貴方は最初から同じ者を護る仲間でした。銀行照会、ログ復元、映像入手……俺たちが集めた証拠を、あんなに迅速に、確実に形にしてくれた。あの事件で、佐々木さんがいなければ、ここまで早く決着はつかなかったでしょう。だから……もう、謝らないでください。俺たちは、最初から仲間なんですから。」
佐々木の目から、再び涙がこぼれた。
しかし、今度は悔しさではなく、安堵と感謝の涙だった。
「……ありがとうございます。本当に……ありがとうございます」
佐々木は深く息を吸い、丁寧に頭を下げてから、静かに、しかし強く言った。
「これからも、Guardeanが調査を進める上で、法律的な助けが必要になった時には……例え外部の仕事であっても、遠慮なく私に言ってください。国際案件でも、国内の訴訟でも、全力でサポートします。仲間として。」
健一は微笑み、高木は静かに頷いた。
「ありがとう、佐々木さん。これからも、よろしく」
佐々木は涙を拭き、ようやく穏やかな笑顔を浮かべた。
事務所に、静かで温かな空気が広がった。
佐々木蔵之介は、顧問料を下げたことで、むしろ心が軽くなり、Guardeanとの絆をより強く感じていた。
「それでは……Guardeanの皆さん……これからも、よろしくお願いします。」
Guardeanの輪は、静かに、しかし確実に広がっていた。佐々木蔵之介という、新たな「護る者」が加わった日だった。




