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女装探偵  作者: 相澤 沁
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経理の闇3

高木の調査で、武藤の過去がさらに明らかになった。

高木は事務所のPCで、武藤の個人信用情報と、過去のSNS痕跡・知人からの聞き取りをまとめ、健一に報告した。

「武藤啓太郎は3年前までは借金まみれだった。消費者金融から数百万円の借り入れ、滞納でブラックリスト入りしてたらしい。でも、この3年間は急に羽振りが良くなってるようだ。横領金の流入の時期と完全に一致する。」

健一は資料を読みながら、静かに頷いた。

「借金地獄から一転して豪遊……典型的な横領犯のパターンだな。金が入り始めたタイミングが、横領開始時期と重なる。言い逃れはできない。」

さらに、美穂として「クラブ・エリート」のママに聞き込みを続けた結果、より具体的な情報が得られた。

「美穂ちゃん、大橋さんと武藤さん、二人で来る時は特にヤバいのよ。VIPルームを朝まで独占して、キャスト全員を指名しちゃうの。シャンパンタワーも立てまくり、一晩で百万円以上なんて事もあるの。金払いは良いから文句は言えないけど……正直、店側は迷惑してるのよ。キャストちゃんたちもウンザリしてるし、『またあの二人か……』って顔してるの。でも、ちゃんと払うVIP客だから何も言えないのよねぇ…」

美穂は店長の言葉を録音しながら、さらに深掘りした。

「大橋さんたち、いつもどんな感じで支払ってるんですか?現金? カード?」

ママはため息と共に言った。

「ほとんど現金なのよ。高級車や高級時計はつけてこないし、地味な服で来るけど……支払いの時は札束出してドヤ顔しちゃってんの。この辺じゃ『金持ちの経理マン』って有名よ。六本木の系列店でも同じパターンで豪遊してるってさ。」

健一は事務所に戻り、高木に報告した。

「大橋と武藤、二人でキャスト全員独占して朝まで……一晩で百万円以上の豪遊。現金支払いがメイン。これで横領金の使い道がほぼ確定した。」

高木は資料に追記しながら、冷静に言った。

「浪費癖の証拠は、店側の証言と監視カメラ映像で固められる。シャンパンタワーのレシート、キャストの証言……これで『横領金の私的流用』が立証できる。言い逃れは、もうできない。」

健一は青いリボンを指で軽く撫でながら、静かに微笑んだ。

「次は、決定的な自白を引き出す。美穂として、もう一度クラブに潜入して、大橋に甘えてみる。酔った勢いで全部吐かせるよ。」

高木は小さく頷き、サムズアップを返した。

「初陣は完璧に決める。大橋と武藤の言い逃れを、すべて塞ぐ」


翌日の夜、クラブ・エリートからママの連絡が入った。

「美穂ちゃん、今日は大橋さんと武藤さんが揃って来てるわ。二人揃うとマジでヤバい……他の客が可哀想になるくらいよ。何とかしてくれないかな……」

健一は、すぐに美穂になって準備を整え、青いリボンを結んで店に向かった。

店に着くと、ママがカウンターの奥からウンザリした顔で迎えた。

「美穂ちゃん、助けて……あの二人、今日もVIPルーム独占しちゃっててさ。キャスト全員指名して、シャンパンタワー立てまくり。他の客から『あの部屋うるさい』ってクレームまで…もう限界よ!」

美穂は大袈裟に笑顔を作り、サムズアップをしてみせた。

「任せて!私が静かにさせますよ〜♡」

ママは疲れた顔で、「お願いね……」とため息をつき、美穂をVIPルームへ案内した。

ドアを開けると、大橋と武藤がすでに酔っぱらって大声で笑い合っていた。

テーブルには空のシャンパンボトルが5本以上転がり、キャストたちの疲れた笑顔で囲まれている。

大橋は美穂を見つけると、目を輝かせて立ち上がった。

「おお! 美穂ちゃん来た!待ってたぜ! こっちこっち、俺と武藤の間に座れよ!」

美穂は可愛く微笑みながら、大橋と武藤の間に滑り込むように座った。

大橋はすぐに肩を抱き、武藤は反対側から腰に手を回してきた。

「美穂ちゃん、今日も可愛いな〜!飲め飲め!」

美穂はグラスを傾けつつ、キャストたちに軽く目配せして「大丈夫よ」と合図を送った。

キャストたちは少しホッとした顔で、美穂を中心に会話を回すように調整していった。

時間が経つにつれ、大橋と武藤の酔いが回り、声が大きくなり、態度がさらに傲慢になっていった。

「俺たちみたいな賢い奴はよ、会社でちょっと工夫すりゃ金が入ってくるんだよ!なあ、武藤!」

武藤も下品に笑いながら「ははは! その通り!頭使えば、金なんていくらでもってな!」

大橋がトイレに立った隙を狙い、美穂は武藤の方に体を寄せ、甘えるように上目遣いで尋ねた。

「武藤さん……大橋さんと武藤さんみたいにお金持ちになる秘訣って……どんなことなんですか?私、知りたいな……♡」

武藤は酔いで顔を赤くしながら、ドヤ顔でグラスを傾け、声を潜めたつもりの大声で言った。

「ふふん……簡単だよ!会社の金を拝借しちまえばいいのさ。帳簿をいじって架空の経費にしちまえばいい。部長の大橋がサインしてくれりゃ誰も気づかねぇ。俺は振込担当だから簡単にできるんだ。で、半分は俺の取り分、半分は大橋の取り分……どうよ!」

美穂は目を輝かせたふりをして、スマホの録音を確実にオンにしながら、さらに甘く囁いた。

「すごい……武藤さん、頭いいんですね……でも、ばれたら大変じゃないですか?」

武藤は大声で笑い飛ばした。

「バレるわけねぇよ!領収書は俺が偽造してるし、大橋が承認してるんだから完璧だ!これで一生遊んで暮らせるぜ!」

ちょうどその時、小橋がトイレから戻ってきた。

武藤は慌てて口を閉ざしたが、美穂はすでに決定的な自白を録音していた。

美穂は内心で拳を握りしめながら、武藤にウィンクしながら微笑んで、「ふふ、武藤さんって面白い人なんですね♡」とごまかした。

その夜、大橋と武藤は朝方まで飲み続け、美穂はキャストたちをフォローしつつ、すべてを記録した。

店を出て、事務所に戻った美穂はすぐに高木に報告した。

「武藤から決定的な自白を入手した。『会社のお金を拝借する』『帳簿をいじって架空経費』『大橋が承認』『取り分半分』だとさ。録音も出来てる。これで二人とも言い逃れは出来ない。」

高木は録音を聴きながらニヤリとしていった。

「お疲れ。これで横領の全容が解明されたな。佐々木弁護士に録音を送って、警察提出用の証拠として最終調整する。ここまであればもう十分だろう。」

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