とんでもない依頼9
あとは審査委員長を残すのみ。
キャバクラ嬢たちに写真を回しても、「見たことない」「来てないよ」という返事ばかりだった。
顔を知らない、または来店していない可能性が高い。
健一と高木は一旦、別の情報網を探ることにした。
ある日、繁華街から少し外れた場所にある高級クラブのママから高木の情報源経由で相談が入った。
ママの声は疲れ切っていた。
「最近、常連の客がやたらと女の子たちにいやらしい絡みをしてきて……胸を触ったり、スカートの中に手を入れたり、拒否しても『金払ってるんだからいいだろ』って……それが原因で、辞めてしまう子まで出ちゃって。どうにかならないかしら?」
高木はすぐに写真を送って尋ねたところ、ママの返事は即答だった。
「そう! この人!最近は週に2、3回は来てるわ。名前は名乗らないけど、いつも大金落としてるから、店としても強く言えなくて……」
高木は健一に目を向けた。
「審査委員長だ。 見つけたな。」
健一は静かに頷いて言った。
「美穂の出番だな。ママさんに、こいつが現れたら連絡をくれって頼んでおいてくれ。」
翌日、連絡が入った。
「今夜来てるわ。美穂ちゃん、来てくれる?」
美穂として潜入する準備はすぐに整った。
黒髪のロングウィッグに赤いリボン、深い胸元の黒いドレスにストッキング、ヒールで大人びた色気を演出。
高木は後方支援で、店外の車から音声と位置情報を監視する。
店に着くと、ママが控えめに迎え入れ、「最近入ったレア出勤の子」として審査委員長のテーブルに紹介した。
審査委員長はすでにかなり酔っていて、美穂を見た瞬間、目を血走らせた。
「こんな美人さんが新入りか……ははは、いいねぇ。!」
美穂はにこやかに微笑み、審査委員長の隣に腰を下ろした。
他の女の子たちはママの合図で一旦引き上げ、テーブルは二人きりになる。
美穂はグラスを傾けながら、軽く審査委員長の内股を指で撫でた。
ゆっくり、誘うように。
審査委員長は即座に欲情した目になり、息を荒げて美穂の肩に手を置いた。
「おいおい……こんなところで大胆だな。気に入ったよ。今夜は俺の女になれよ……金ならいくらでも出す。」
美穂は甘い声で囁きながら、胸元のブローチに仕込んだマイクを意識した。
「ふふ……そんなに急がないで。もっと、ゆっくりお話ししましょう?最近、どういうお仕事してるんですか?なんか……お金持ってそう。」
審査委員長は酒の勢いで、さらに口が軽くなる。
「仕事? はは……昔はアイドルオーディションの審査委員長やってたけど、今はちょっとした『裏仕事』さ。もう少しで大金が入るんだよ。3億8000万だぞ?3億8000万! ちょっと手違いがあって失敗したけど、次がある。今度はもっと確実に……お前も、俺の女になれば金なんて思いのままだぞ?」
美穂は笑顔を崩さず、さらに聞き出そうと尋ねた。
「へえ~! こんな刺激的ですごいお話、もっと聞きたいです。」
審査委員長はさらに酒を煽られ、呂律が回らなくなるまで、次の計画の断片を漏らし続けた。
美穂はすべてを録音し、深夜に店を出た。
高木が車で迎えに来ていた。
「録音データ、全部取れた。審査委員長の自白……次は株取得資金の『別のルート』を狙ってるらしい。
刑事課にデータ渡して、一網打尽にしよう。」
美穂はウィッグを外しながら言った。
「これで、残党の全貌が掴める。仁さんの会社を完全に守る。」




