とんでもない依頼7
思ったより社長はベラベラ喋ってくれた。
美穂として聞き出した自慢話は、予想以上に核心に近かった。
エターナル・プロモーションの残党が、片桐ファーマシーの内部情報を盗聴で掴み、次の「別のルートでの大金」を狙っていること。
その「別のルート」が何なのかは、酔いが回りすぎて具体的に出なかったが、少なくとも彼らはまだ諦めていないことがはっきりした。
翌日、別のキャバ嬢から連絡が入った。
「プロデューサーさん、近所のコンビニに入るとこ見たよ。スウェット上下で、近所に住んでるっぽいね。場所はここ。」
添付された地図は、都心から少し離れた住宅街のコンビニ。
健一と高木は即座に張り込みを決めた。夜8時過ぎ。
コンビニの向かいの路地に車を停め、二人は交代で監視を続けた。
高木が双眼鏡で店内を覗いた。
「来た。スウェット上下のまま。コンビニ弁当買ってる。」
健一は助手席でボイスレコーダーをチェックしながら、プロデューサーを目で追っていた。
「近所に住んでるなら、自宅特定は早い。今夜中に仕掛けるとするか。」
プロデューサーがコンビニを出て、路地を歩き始めた。
高木は車を降り、自然に歩行者のふりをして接近。スリの要領で、プロデューサーの鞄のファスナーをわずかに開け、小型の盗聴器(バッテリー式・音声送信型)を滑り込ませた。
一瞬の動作。
プロデューサーは気づかず、そのまま歩き去った。
そのまま高木は車に戻った。
「仕掛けた。今夜、自室で何を喋るか……楽しみだな。」
二人は事務所に戻り、受信機をセットして待機した。
深夜0時過ぎ。
盗聴器から音声が流れ始めた。プロデューサーの声は、酒と苛立ちが入り混じった低い呟きだった。「……くそっ、ニセ警官の失敗のせいで……俺は一銭にもならなかった……アレックスなんかに大枚叩いて情報を買ったってのに。結局あの軽自動車に逃げられて……3億8000万が手に入らなかった……社長はもう次の計画を立ててるけど、俺の取り分はどうなるんだよ。あのクソガキども……Guardeanとかいう探偵事務所のせいだ……次はもっと確実に……」
健一と高木は顔を見合わせた。
「あのニセ警官の事も、アレックスから情報を買ったって事も、コイツが絡んでるようだ。それにGuardeanの名前が出た。俺たちの事も狙ってるのは間違いない。次の計画……片桐ファーマシーにまだ何か仕掛けてくる可能性が高い。」
高木は受信機のGPS信号を確認した。
「プロデューサーの自宅を特定した。この盗聴器で残党の動きを丸ごと掴める。刑事課にデータ渡して、
一網打尽にしよう。」
健一は青いリボンを指で軽く撫で、
「そうだな。エターナル・プロモーションの残党……ここで終わらせる。」
事務所の明かりの下、二人は新たな録音データを整理し始めた。




