とんでもない依頼5
Guardeanの軽自動車は、ギリギリの路地に滑り込んだ。
狭い住宅街の裏道、軽自動車でさえミラーが壁に擦れそうな幅。
高木はハンドルを切りながら、冷静にアクセルを調整。
後ろの黒いセダンは、ボディが大きすぎて路地に入れず、入り口で停車せざるを得なかった。
美穂(健一)は助手席からバックミラーを確認した。
「ヤツら、やっぱり入ってこれない……悠斗、このまま直進して次の大通りに出よう。支社まであと7分。」
高木は頷いた。
「了解。仁さんには現状の報告を頼む。」
軽自動車は路地を抜け、大通りに出た。
後方を確認しても、黒いセダンの影はない。
美穂は深くホッと息を吐いた。
「追ってきてない……よし、予定通り支社へ。」
支社の地下ガレージに到着したのは、予定より遅れての午後1時過ぎ。
仁から事前に連絡が入っていた支社スタッフが、ガレージの入り口で待機していた。
4つのアタッシュケースを素早く車から降ろし、スタッフが責任を持って受け取る。
健一は美穂の姿のまま、
「現金、確かにお渡しします。」
スタッフは緊張した顔で頭を下げた。
「ありがとうございます。片桐社長から連絡がありました。これで支社は正式に独立できます。」
受け渡しが完了し、軽自動車は支社を後にした。
帰途につく車内で、美穂は仁に電話をかけた。
「仁さん、現金輸送、無事に完了しました。支社でスタッフに手渡し済みです。途中でニセ警官に止められましたが、迂回して振り切りました。被害はありません。」
仁の声は、電話越しでも安堵と感謝に震えていた。
「ありがとう……本当にありがとう。3億8000万……これで、食品会社の株取得が進められる。君たちのおかげだ。高木くんにも伝えてくれ。報酬はすぐに振り込むよ。」
美穂は軽く笑って、
「報酬は。いつもの月額に含んでくれていいです。まずは仁さんが安心してくれたことが大事です。あと……追ってきたニセ警官の正体、必ず暴いてみせます。」
電話を切った後、高木が運転しながら言った。
「ニセ警官……あいつら、ただの強盗じゃなかったな。3億8000万の情報をどこで嗅ぎつけた?仁さんの会社内部に、漏洩源がいる可能性もある。」
美穂は助手席でスマホの録画データを確認しながら言った。
「セダンのナンバーは控えてあるから、刑事課に連絡して追尾車両の身元を洗ってもらう。ニセ警官の正体を暴くのが、次の仕事。」
軽自動車は下道を静かに走り続ける。
後ろの心配は消え、前方には帰るべき事務所が見え始めていた。
現金輸送は、無事に完了した。
しかし、現金を狙う影は、まだ完全に消えたわけではなかった。




