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女装探偵  作者: 相澤 沁
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とんでもない依頼4

順調に行けば支社まであと10分。

下道の直線道路を、軽自動車は静かに走っていた。

美穂(健一)は助手席で後方を確認し、高木はハンドルを握りしめながら前方に集中している。

車内の空気は張り詰めていたが、まだ異常はない――はずだった。

突然、後方から黒いセダンが急接近。

赤色灯を回し、パッシングを繰り返しながら、拡声器が鳴り響く。

「そこの軽自動車! スピード違反です!左に寄せて停車してください!」

高木はミラーを確認し、冷静に言った。

「……来たか。」

美穂は即座にスマホを握り、カメラを起動して言った。

「悠斗、止めて。でも、絶対に車から降りないで。」

高木はハザードを点け、ゆっくり左に寄せて停車した。

エンジンはかけたまま。

セダンも後ろに停まり、運転席から制服姿の「警官」が降りてくる。

もう一人、助手席からも降りてきた。

二人とも制服は遠目には本物に見えるが、動きにどこか不自然さがあった。

「スピード違反です。免許証を出してください。」

高木は窓を少しだけ開け、静かに答えた。

「すみません、免許証は後部座席のバッグに入ってます。今取ってきます。」

その瞬間、美穂と高木は同時に気づいた。

――ニセ警官だ。近くで見ると制服の生地も全然違うし、襟の徽章とバッジの位置まで全く違う。

そして、何より――

「警官」の目が、トランクの方をチラチラ見ている。

高木は無言でアクセルを踏み込んだ。

軽自動車が急発進し、タイヤが悲鳴を上げる。

ニセ警官が慌てて叫び、セダンですぐに追尾を開始した。

美穂はスマホを耳に当て、仁に電話をかけた。

「仁さん! 今、ニセ警官に止められました。スピード違反の名目で。免許証を出せと言ってきたけど、

明らかに偽物です。現金を狙ってる可能性が高い。念のため、一旦支社を素通りして迂回します。支社には後で到着します。仁さんも支社スタッフに連絡して、到着まで警戒させてください!」

仁の声は震えていた。

「わかった……!気をつけてくれ。支社には今すぐ連絡する。絶対に、無事で……!」

美穂は電話を切り、高木に言った。

「悠斗、支社まであと5分。そのまま直進して、支社を素通り。次の信号で左折して、迂回ルートに入る。後ろのセダンはまだついてきてる。」

高木はハンドルを切りながら、

「了解。速度は法定内ギリギリで。目立たないように……でも、絶対に止まらない。」

黒いセダンは執拗に追尾を続ける。

パッシングと赤色灯を交互に使い、

拡声器で「停車しろ!」と繰り返すが、高木は無視。

軽自動車は下道を疾走し、支社の看板が見えた瞬間――

そのまま素通りした。後ろのセダンは一瞬戸惑ったように速度を落としたが、すぐに追尾を再開。

美穂は後方を確認しながら、

「よし、迂回ルートに入る。次の交差点で右折。支社に戻るまであと15分……仁さんには到着予定を遅らせる連絡を入れておいた。」

高木はアクセルを踏み込んだ。

「現金を狙ってる影……やっぱりいたか。3億8000万……誰かが嗅ぎつけてたんだな。」

美穂は助手席で拳を握りしめた。

「絶対に渡さない。この金は仁さんの会社にとっては未来そのものだ。」

軽自動車は疾走し続ける。

後ろの黒いセダンは、執拗に距離を詰めてくる。

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