とんでもない依頼2
事務所の明かりの下、仁は疲れた顔でコーヒーカップを握りしめながら、静かに話し始めた。
「金額は……3億8000万円です。」
健一と高木は同時に息を飲んだ。
仁は淡々と続ける。
「現金は4つのアタッシュケースに分けて入れてあります。用途は、支社の独立資金です。ある食品会社の株を支社名義で買い、ゆくゆくは片桐グループを形成していくための第一歩……これが成功すれば、うちの会社はもう一段階大きくなる。」
健一はカップを置いた。
「……3億8000万。しかも現金で、株取得資金……仁さん、次元が違うな。」
高木も呆れたように呟く。
「僕たち、痴漢捕まえたり、コスプレ護衛したりしてたのに……いきなり3億超えの現金輸送か……構想も金額も、何もかもスケールが違いすぎる。」
仁は苦笑しながら、
「だからこそ、警備会社を信用できないんだ。最近、外国人スタッフが増えて……私の偏見もあるのは解るが、信用できない部分がどうしても拭えなくて。君たちなら、安心して任せられると思ったんだ。」
健一は腕を組み、冷静に確認する。
「現金輸送に見えないように偽装は?」
仁は頷く。
「軽自動車のトランクに積み込んであります。今は会社の駐車場に停めてある。アタッシュケースは普通のスーツケースやスポーツバッグに偽装してあるから、外見だけ見れば旅行か出張の荷物にしか見えないはず。」
高木が眉を寄せる。
「ルートは? 時間帯は?」
仁は首を横に振った。
「ルートも時間帯も、君たちGurdeanに任せたい。明日中に輸送してほしい。支社の場所は……ここです。」
仁はスマホを取り出し、地図アプリを開いて画面を二人に見せた。
「東京から車で約2時間。明日の午後中には届けたい。」
健一は地図をじっと見て言った。
「了解です。ルートは俺と悠斗で最適なものを組みます。高速を使うか、下道で目立たず行くか、休憩ポイントの選定、万一のトラブル時の代替ルート……全部今夜中に決める。」
高木がコーヒーを一口飲んで、
「輸送車両は俺たちの軽自動車にした方がいいかもな。仁さんの軽自動車だと、万一追跡されたらすぐバレる可能性がある。僕たちの車なら、普段使いのナンバーで目立たない。」
仁は深く頭を下げた。
「本当に頼むよ。3億8000万……私の会社にとっては、未来を決める大金だ。君たちに任せれば、安心して眠れる」
健一は静かに頷き、力強く言った。
「任せてください。今夜中に、完璧な計画を立てる。仁さんは戻って、少し休んでください。俺たちは今からルートとタイムテーブルを組む。」
仁は立ち上がり、
「ありがとう……本当にありがとう。何かあったら、すぐに連絡する。」
仁が去った後、事務所は静かになった。
健一と高木はテーブルに地図アプリとノートを広げ、すぐに作戦会議を始めた。健一が呟く。
「3億8000万……次元が違う依頼が来たもんだな。」
高木は苦笑しながら、
「由香ちゃんのコスプレ護衛から、いきなり現金輸送か……僕たちの日常、ほんとに振り幅がすごいくなったな。」
健一は地図を指でなぞりながら、
「でも、仁さんが信頼してくれてる。失敗は許されない。明日、絶対に成功させる。」
二人はコーヒーを飲み干し、夜通しの計画立案に入った。
Guardeanの新たな任務が、静かに始まろうとしていた。




