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女装探偵  作者: 相澤 沁
24/72

彼氏のフリと本気の警護6

2月21日、箱根温泉旅行初日。

由香は前日にSNSへ投稿した。

「箱根の温泉に行くよ~♡ 楽しみ!」

年上のカッコイイ彼氏のことは伏せて、ただの女子旅風に仕立てた。

これで福田が反応するかどうか、様子を見る作戦だ。

高木は由香の見立てで新調したハイブランドのスーツを着ていた。

チャコールグレーのスリーピースに、カシミアの柔らかなマフラー。

仁のクレジットカードで買った服は、サイズもピッタリで、180cm近い高身長がさらに際立つ。

高木は鏡の前でネクタイを直しながら、ため息をついた。「…僕、こんな格好で温泉旅館って、浮きまくりじゃない?」

由香は助手席から笑顔で手を叩いた。

「カッコイイよ! 高木さん、完璧な彼氏だもん!パパのカード、フル活用しちゃった♪」

白いメルセデス・ベンツAMGが箱根の山道を滑るように進む。

一方、健一は小田急線で箱根湯本駅まで電車移動。

スーツにコートを羽織っただけのシンプルな装いだが、今日は女装なしの「男の俺」で護衛できる喜びが、胸に満ちていた。

高級旅館「霧の里」に到着したのは夕方。

仁が予約した部屋は、露天風呂付きの特別室。

由香と高木が二人部屋、健一が隣の個室。

チェックインを済ませ、ロビーで一息ついた高木が呟いた。

「福田はここまで来れないだろ。旅館の中はセキュリティも厳しいし……とりあえず、今日は安心して過ごせそうだな。」

由香は頷きながら、スマホをチェック。

「SNS見た人から反応あるけど、福田からはまだ何もないよ。でも、健一さんが近くにいるから大丈夫!」

夕食は、旅館の個室で会席料理。

高木と由香のテーブルには、箱根の山菜、川魚の造り、松茸の土瓶蒸し、

そしてメインの黒毛和牛のステーキ。

仁の計らいで、健一の個室にも同じコースが運ばれてきた。

しかも、健一の分にはさらに高級な日本酒と、追加の伊勢海老の姿焼きが付け加えられている。

健一は部屋の卓に座り、箸を止めてため息をついた。

「…仁さん、初日のイタリアン差を埋めようとしてるな。」

高木からのLINEが届く。

「健一、飯どう? 俺たちは和牛ステーキだけど、由香ちゃんが『健一さんにも豪華なの食べてほしい』って仁さんに言ったらしくてさ(笑)」

健一は苦笑しながら返信した。

「伝えておけ。次は牛丼奢れって(笑)」

夜、露天風呂で湯に浸かりながら、健一はスマホのGPSを確認。

由香の発信機は部屋の中で静かに点滅している。

福田の気配は、まだない。

由香と高木は二人部屋でくつろいでいた。

「高木さん、今日もカッコよかったよ。パパの車運転してる姿、ほんとに彼氏みたいだった!」

高木は照れくさそうに笑った。

「…本気で彼氏役やるのも、結構大変だな。でも、由香ちゃんが楽しそうでよかったよ。」

健一は個室の窓から、箱根の夜景を見ながら呟いた。

「初日は平和だったな。でも、福田はしつこいタイプだ。明日以降、動きがあるかも……俺は影から、絶対に守る。」

湯煙が立ち込める中、高級旅館の夜は静かに更けていった。

仁の過保護が、豪華な食事と安全な空間を提供する一方で、福田の影は、まだどこかで息を潜めている。

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