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女装探偵  作者: 相澤 沁
23/72

彼氏のフリと本気の警護5

2月11日、デート初日。

事務所の前で、白いメルセデス・ベンツAMGが静かにエンジンをかけていた。

高木は由香に選ばせた新調の服を着ている。

ヴィンテージ加工の濃紺ジーンズに、黒のライダースジャケット。

インナーは白のシンプルなTシャツで、全体的に「カッコイイ年上彼氏」感が完璧に決まっていた。

健一は事務所の窓からその姿を見て、笑いを堪えきれずに肩を震わせた。

「…悠斗、似合いすぎだろ。由香ちゃんのセンス、恐ろしいな!」

高木は照れくさそうにジャケットの襟を直しながら、

「笑うなよ、健一。僕だって緊張してるんだから。」

由香は助手席から手を振って、

「高木さん、カッコイイよ~!パパのカードで選んで正解だった!」

健一は笑いを抑えつつ、スマホをポケットにしまい込んだ。

「じゃあ、移動は高木と由香ちゃんは車で。俺は電車だ。到着時間や立ち寄り先は、由香ちゃんのマイク付きGPS発信機で常にやり取りする。俺は10m以上離れて監視するから、何かあったらすぐ合図してくれ。」

由香はポケットから小さなキーホルダー型のGPS発信機を見せ、

「うん! これで大丈夫だよね?」

高木が運転席に座り、エンジンをかける。

「じゃあ、行くぞ。健一、後ろから頼む。」

AMGが滑らかに発進し、健一はマンションの階段を下りて最寄り駅へ向かった。

デート場所は大学近くの高級イタリアンレストラン。

高木と由香はテラス席に案内され、ランチコースを注文。

仁のクレジットカードで支払われるため、由香は遠慮なく前菜からデザートまで楽しんでいた。

一方、健一はレストランの向かいの路地から様子を監視。

スマホのGPS画面と由香のマイク音声をチェックしながら、牛丼チェーンのカウンター席に座っていた。

理由はシンプル。

その牛丼屋のカウンターに、福田 潤がいたからだ。

福田はスマホをいじりながら、時々レストランの方向をチラチラ見ている。

由香の姿を遠くから確認しているようだが、特別な動きはない。

ただ、視線が執拗に由香と高木のテーブルを追っている。

健一は牛丼を一口食べながら、高木にLINEを送った。

「福田、牛丼屋のカウンターにいる。そっちを見てるだけ。動きなし。引き続き監視を続ける。」

高木からの返信はすぐに来た。

「了解。由香ちゃんは楽しんでるけど、僕は緊張で胃がキリキリしてる(笑)」

デートは無事に終了。

高木は由香と車でマンションに戻ってきた。

「今日はありがとう。由香ちゃん。」

由香は助手席から笑顔で言った。

「高木さん、今日めっちゃカッコよかった!また次もよろしくね♪」

事務所に戻った高木は、ドアを開けるなりため息をついた。

「…終わった。由香ちゃんの彼氏役、想像以上に気まずかったよ。」

部屋の中では、健一が宅配ピザを頰張りながらソファに座っていた。

ピザの箱が開いたまま、チーズが伸びている。高木が近づくと、健一は少し拗ねた顔で言った。

「…飯の差がありすぎだろ。お前たちは高級イタリアンでコース料理。俺は牛丼だぞ。しかも福田の監視しながら食う牛丼なんか最高過ぎて泣けてくる。」

高木は苦笑しながらピザの一切れを取った。

「ごめんごめん。でも、健一が影から守ってくれたおかげで何も起きなかったんだから、それでいいじゃん!」

健一はピザをもう一口かじりながら、

「まぁ、福田は今日は様子見だけだったしな。次回の温泉旅行で、もっと露骨に動いてくるかもな。」

高木はジャケットを脱ぎながら、

「そうだな。2月21日から箱根の2泊3日……部屋割りも二人部屋と個室だし、僕と由香ちゃんが同じ部屋って、仁さん本気で過保護すぎるだろ。」

健一はピザの箱を閉じ、立ち上がった。

「でも、俺は個室だから楽だ。女装なしで、男として護衛できる。これからも、この調子でいこうぜ、悠斗!」

高木はニヤリと笑って、

「了解、健一。次は温泉だ。由香ちゃんの安全、絶対守るぞ。」

デート初日は、無事に終わった。

でも、福田 潤の影は、まだ消えていない。

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