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女装探偵  作者: 相澤 沁
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彼氏のフリと本気の警護3

事務所のソファに由香が座り、健一と高木が向かい合って椅子を引いた。

健一はノートパソコンを脇に置き、ペンを手に取る。

高木はコーヒーをもう一杯淹れて由香の前に置いた。

「じゃあ、由香ちゃん。まずは状況を詳しく聞かせてくれる?」

健一の声は落ち着いていた。

女装なしの「男の俺」で仕事ができる喜びが、どこか声に滲んでいる。

由香は少し頰を赤らめながら、スマホを取り出して話し始めた。

「うん……その男の名前は福田潤っていうの。大学3年の同じ学部で、ゼミが一緒。虚勢ばっかりで、キモオタって感じの人なんだけど……最近、急にベタベタしてくるようになって…」

健一がメモを取りながら質問を重ねる。

「いつから? どこで? どういう形で接触してくるの?」

由香は指を折って数えながら答えた。

「最初はゼミの発表後に『由香ちゃん、今日も可愛いね』って言われて、それから学食で隣に座ってきたり、帰り道で待ち伏せされたり……LINEも急に増えて、『今何してる?』『写真送って』とか。断っても『冗談だよ~』って誤魔化してくるの。気持ち悪い……」

高木が眉をひそめた。

「どうやって由香ちゃんを知ったんだろう?ゼミ仲間なら最初から知ってるはずだけど、急にエスカレートした?」

由香は小さく頷く。

「そう。私が『彼氏いる』って言ったのがきっかけかも。『年上で高身長でカッコイイ彼氏がいるから』って言ったら、『へぇ~、どんな人?』って食いついてきて……それから毎日『彼氏より俺の方がいいだろ?』とか言ってくるようになったの。」

健一はメモを止め、由香の目を見て言った。

「分かった。福田 潤、ね。由香ちゃん、怖かったらすぐに言って。俺たちは絶対に守るから。」

由香は少しホッとした顔で頷いた。

「ありがとう……健一さん、高木さん」

その時、事務所のパソコンに通知音が鳴った。

高木が画面を確認し、すぐに読み上げた。

「仁さんからまたメール。日付指定と、デートの詳細が来た。」

内容はこうだった。

『高木くん、健一さん由香のデート日程を以下に指定します。

・2月11日(水):大学近くのカフェで軽いデート

・2月21日(土)~23日(月):箱根の温泉旅館で2泊3日

・3月1日(日):都内映画館+ディナー デート時は私のプライベート車を使ってください。

高木くんのデート服は由香に選ばせて新調してほしい(費用はこちら持ち)。

部屋割りは、由香と高木くんが二人部屋、健一さんが個室です。

代金はすでに支払い済みです。

よろしくお願いします。 片桐仁』

健一と高木は同時に顔を見合わせた。

「……セレブだなぁ」二人の声が重なる。

感心と呆れが半々の複雑な表情。

由香は目を輝かせて手を叩いた。

「やったー! 温泉旅行!パパ、ほんとに過保護すぎるけど……高木さんの服、私が選んでいいんだ!楽しみ~!」

高木は苦笑しながら頭を掻いた。

「…僕、服まで新調か。由香ちゃんのセンスに任せるしかないな。」

健一はノートを閉じ、軽く笑った。

「まあ、仁さんのプライベート車なら移動も楽だ。部屋割りも完璧。由香ちゃんの安全が最優先だから、悠斗が彼氏役で、俺は影から福田潤を監視する。2月11日から本番だ。由香ちゃん、変な接触があったらすぐ連絡して。」

由香は元気よく頷いた。

「うん!高木さんの彼氏役、楽しみにしてるよ♪健一さんもカッコよく守ってね!」

健一は久しぶりにスーツの襟を正す仕草をして、心の中で呟いた。

「女装なしで、男として……やっぱり良いな。」

仁の過保護が、奇妙な形で皆を強く結びつけ始めていた。



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