彼氏のフリと本気の警護2
健一はスマホを手に取り、由香にLINEを送った。
内容はシンプル。
「今から事務所に来れる? 大事な話があるんだけど」
送信して30秒も経たないうちに、既読がついた。
そして、すぐに返信。
「今行きます! 5分で着いちゃうよ!」
健一は画面を二度見した。
「…5分?大学から電車で30分かかるだろ?」
高木がコーヒーをすすりながら、
「由香ちゃん、相当暇だったのかな。それとも、僕の彼氏役に期待してる?(笑)」
健一は肩をすくめて、
「まさか。でも、来るなら早めに打ち合わせ始めよう。」
ところが、本当に5分後。
事務所のチャイムが鳴った。ドアを開けると、そこに息を切らした由香が立っていた。
ショートカットの髪が少し乱れ、頰が上気している。
「はぁはぁ……来ました! 美穂さん! ……じゃなくて、健一さん!」
健一と高木は同時に目を丸くした。
「…早すぎだろ。本当に5分で?」
由香は事務所に入りながら、息を整えて笑った。
「だって、ここすぐ近くなんだもん!最近、最上階に引っ越してきたの。パパの提案で!」
健一と高木は同時に固まった。
「…最上階?このマンションの?」
由香は頷きながら、鞄をソファに置いた。
「うん! 先週引っ越したばっかり。パパが『由香の安全のため、探偵事務所のすぐ上に住めば安心だ』って。家賃はもちろんパパ持ちだし、決して安くないけど……私も大喜びでOKした!だって、Guardeanがすぐ下なんだもん!美穂さん……じゃなくて、健一さんにもすぐ会えるし、高木さんにも!」
健一は呆れ顔で高木を見た。
高木も呆れ顔で健一を見返した。
二人は同時に呟く。
「…先週、最上階に誰か入ったなと思ってたの、由香ちゃんだったのか……」
由香は無邪気に笑った。
「びっくりした?パパ、最近ほんとに過保護でさ。でも、私も嬉しいよ。だって、こんなに近くに健一さんと高木さんがいるなんて、最強のボディガードじゃん!」
健一は額を押さえ、ため息混じりに笑った。
「…仁さん、やりすぎだろ。でも、確かにこれなら警護もしやすいな」
高木はコーヒーを由香に渡しながら、
「じゃあ、もう『彼氏のフリ』も本気でやらなきゃいけないね。由香ちゃん、ぶっちゃけ僕の事どう思ってる?高身長でカッコイイって、嘘じゃなかった?」
由香は頰を赤らめて、ぷくっと頰を膨らませた。
「本当だよ! 高木さん、背高いし、優しいし、頼りになるし……でも、今回は『彼氏のフリ』だからね!本気になっちゃダメだよ?」
健一は二人のやり取りを見て、くすくす笑った。
「よし、じゃあ本題に入ろう。由香ちゃんの『面倒くさい男』の情報、全部聞かせて。俺は今回は女装なしで、影から警護する。悠斗が由香ちゃんの彼氏役で。作戦、ちゃんと練ろうぜ!」
由香は目を輝かせて頷いた。
「うん! 楽しみ~!健一さんがカッコよく守ってくれるんだよね?」
健一はスーツの袖をまくりながら、久しぶりに男らしい笑みを浮かべた。
「任せろ。今回は、俺が本気の『男』として仕事する番だ!」
仁の過保護が、意外な形で皆を近づけていた。
高木がため息をつきながら、
「…これで、俺も由香ちゃんの彼氏役を本気で演じなきゃいけないのか。プレッシャーだな。」
由香が笑って高木の腕を軽く叩く。
「大丈夫だよ! カッコイイから!」
健一は二人の様子を見て、心の中で呟いた。
「…女装なしの仕事、思ったより面白くなりそうだな」




