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女装探偵  作者: 相澤 沁
17/72

ステージの裏側6

個別面談当日。

エターナル・プロモーションのオフィスビルは、都心の雑居ビルの上層階にあった。

美穂はエレベーターで上がる間、鏡に映る自分の姿を確認した。

今日は審査の時とは違い、フリルたっぷりのピンクのブラウスに、膝上丈のレーススカート。

髪には大きなリボン、首元にアクセサリーのネックレス、袖口に小さなチャームブレスレット。

可愛らしい「ぶりっ子」アイドル志望者そのもの。

しかし、そのフリルやアクセサリーのあちこちに、高木が仕込んだ超小型隠しカメラと盗聴器が埋め込まれていた。

胸元のリボン、ネックレスのペンダント、スカートの裾のレース、ブレスレットのチャーム……

すべてが、闇契約の現場を徹底的に記録するための目と耳だ。

面談室は狭く、窓のない密室だった。

ドアを開けると、すでに三人が待っていた。

エターナル・プロモーションの社長:50代半ばの男。笑顔だが目が冷たい。

Next Star Project 2026の審査委員長:60代前半。威圧的な態度で座っている。

プロデューサーらしき男:40代。

目つきが好色で、ジロジロと美穂の体を舐め回すように見ている。


社長が明るく立ち上がり、手を差し出した。

「ようこそ、佐藤美穂さん!合格おめでとうございます。今日は大事なお話があるので、よろしくね!」

審査委員長は偉そうに腕を組みんで言った。

「君はファイナリストの中でも特に目立っていた。これからが本番だ。誇りに思いなさい。」

プロデューサーは口元を歪めて、好色丸出しの顔で言った。

「可愛いねぇ……本当に可愛い。これからが楽しみだよ。」

美穂はにこにこ笑って頭を下げ、

「わー、ありがとうございますぅ!こんな私でよければ、よろしくお願いしまーす♪」

社長がテーブルの上に厚い契約書を置いた。

「この度、佐藤美穂さんがアイドルとして所属契約を結ぶのは、弊社『エターナル・プロモーション』です。こちらが契約書ですので、サインしてください。」

美穂は目を丸くして、ぶりっ子全開で首を傾げた。

「えーっ? いきなり契約書ですかぁ?まだデビューも決まってないのに、契約金とか……ちょっと、びっくりしちゃいますぅ……」

審査委員長が即座に声を荒げた。

「何を言ってるんだ!君は合格したんだぞ?こんなところで恥をかかせるな!さっさとサインしろ!」

プロデューサーは椅子に深く腰掛け、足を組んでニヤリと笑う。

「早くサインしないと……永遠に帰れないよ?ここから出る方法は、もう一つしかないんだからね?」

部屋の空気が一瞬で凍りついた。

美穂は怯えたふりをして目を潤ませて

「え……永遠に、ですかぁ?そんな……怖いですぅ……」

社長は笑顔のまま、契約書を美穂の方に押し進めた。

「心配しなくていいよ。サインすれば、1,500万円の契約金がすぐ振り込まれる。デビューも保証される。君みたいな可愛い子は、すぐに人気が出るよ。ただし……特別な『お仕事』もお願いするけどね。」

美穂は震える手で契約書に触れ、

「特別な……お仕事、ですかぁ?どんなのですかぁ……?」

プロデューサーが低く笑いながら

「それは……サインしてからのお楽しみだよ。まずはペンを持って。!ほら、早く」

美穂の指が、ゆっくりとペンを握る。

フリルの袖口のチャームが、わずかに光を反射した。

それは、高木が遠隔で監視している隠しカメラのレンズだった。

部屋の外では、高木がバンの中でモニターを凝視していた。

「…全部録れてる。脅迫、闇契約の匂わせ、映像の強要……これで決定的証拠だ。」

美穂は心の中で呟いた。

「…もう少し。もう少しだけ、喋らせて。」

可愛い顔で涙を浮かべながら、佐藤美穂は、ゆっくりとペンを契約書のサイン欄に近づけた。

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