さようならも言えない
「タケルさん!!走るんだ!!先生は導きたい!!君を導くんだ!!」
息が切れる。
とっくに息は切れているのだが、脳内でドーパミンががんがん出ているおかげか
興奮状態だからか全くもって問題ない。
「く・・・・」
レンとケイはおそらくこちらには来ない。
そんなことを言葉に出すことすら惜しい。
今は逃げるときだ。
俺以外の3人は背中でそう語っていた。
どうしてこんなことになっているのか。
俺が部屋に引きこもっていたから。
またもやいらないことをしてしまった。
いやさすがに・・・
授業をさぼっていたら裏切者になる。
そんなこと・・・・
入学式の日を思い出す。
「春だなあ、平和だあ・・・・」
こんな日は学校に行かずにさぼりたくなる。
さぼってしまうか。
来た道を振り返る。
「手を挙げろ。裏切者はヤってしまうよ?」
教えてくれていたじゃないか。
あの眼帯をつけていた美少女が何回も何回も教えてくれていたはずなのに。
授業をさぼってはならない。
すべての周回で前提を間違っていたのだ。
ただ、授業をさぼっていなくても苗村先生は死んだ。
俺にこのクラスにスパイがいることを告げて死んだ。
それはどうあがいてもこの世界では無駄だということではないか。
そうか。
だから、苗村先生の「妹」さんはこうやって俺をこの狂った世界から逃がそうとしてるのか。
でも、結局俺は仲間を死なせてしまった。
仲間を犠牲にこの狂った世界から逃げるのか。
俺は歯を噛んだ。
どうしたって、何をしたって犠牲が出るこの世界なら
いっそこの命などなければよかったのに。
それでも、俺を逃がそうとしてくれるクラスメイトや先生がいるのだ。
銃弾がまた俺の顔を掠める。
「身を伏せてください!!タケルさん!!」
自分をガラクタ呼ばわりしている盲目の女の子が俺の為に
命をなげうってくれている。
「早くしなさいまし!!」
ロリータ服に身をつつんで汚れるのをよしとしない女の子が
俺の為にお気に入りの服を汚してまで俺と逃げてくれている。
それだけでもいい人生なのかもしれない。
たかだか俺の為に。
「あ。」
天野が倒れる。
「天野!!」
天野の足からは油のにおいがする。
銃創が2つ。
天野はニコリと笑い、そして
「逃げてください!!」
俺は振り返らなかった。
リリーと先生がそれを許さなかった。
どんどん小さくなる天野。
最後に聞こえたのは
「いやああああああああああああああああああ!!死にたくない!!!!!!」
断末魔の叫びであった。




