逃亡
「はあ・・・・はあ・・・・」
ターン!!ターン!!
「うわああ!!!!」
「痛い!!痛い!!誰か!!誰か助けてください!!」
光景はまさに淘汰の日であった。
そのあたりで銃声と断末魔の叫びで支配されている。
あたりが油くさい。
「痛っ!!」
何かにつまずく。
「うわああ!!!!」
つまづいたのは、うちの学校の制服を来た生徒だった・・・もの。
銃創だらけでその穴からは油のにおいがする。
「なあ・・・・これは・・・これはどういうことなんだよ!?」
「タケルさん、走りながら話しますと舌を噛みますのよ!!」
リリーは怒鳴るように伝える。
俺以外の5人は何も言わず荒廃し始めた街を駆け抜ける。
「敵」による淘汰は今までのような銃撃だけでなく、
戦闘機による爆撃が加わっている。
建物は破壊されてあたりは炎と煙に包まれている。
今回はかなり徹底して淘汰しているようだ。
加藤を見つけないといけない。
時間を巻き戻さねばみんな死んでしまう。
加藤に時間を巻き戻してもらう。
ただ、この周回で一度も加藤と会っていない。
それどころか加藤の存在を知っているのは俺しかいないようだ。
「こっちでござるよ!!」
ケイの手引きで俺らは近くのマンホールに潜り込む。
「なんだかじめじめしているな・・・・。」
これまで潜った飲食街や美術展のフロアとは違い、
人の出入りがしていないような印象。
水もくさっていて、側道もごみいや、ガラクタだらけだ。
「ガラクタだらけですね・・・・」
天野は何かを確かめるようにつぶやく。
ガラクタだらけ。
少しあたりを見渡してみる。
「なあ・・・ここは・・・・」
「タケルさん、気づいたかな??」
苗村先生は胸を張り、えっへんと言わんばかりの態度で続ける。
「ここは、私たちの墓場・・・・」
「そうですわね。でも先生。私たちはこの世界から逃げるのではなくて?」
「そう。だから、死なない。誰も。そしてこの報われない世界で転げおちていくのではなく、
一歩動くの。」
「まずいわ!!銃声が聞こえてきた!!」
レンが警告を出す。
「逃げよう!!」
先生の一声で駆け出す。
俺はリリーに手を引かれて走り出した。
「やばい!!やばいでござるよ!!!銃声が近づいてくる!!」
銃弾が頬をかすめた。
「ひっ!!」
「タケルさん!!身をかがめてくださいまし!!」
リリーの言葉で俺は身をかがめながら、走る。
慣れたことのない動きだから少し疲れる。
行軍ではゲリラの動きもやっていたのだが、
実戦と訓練は違うということか。
「走れ走れ!!」
銃弾が横をかすめた。
その銃弾はケイの右肩に命中した。
「痛っ!!」
「ケイちゃん!!!」
倒れるケイを抱えるレン。
「痛い・・・痛いよお・・・・」
「大丈夫よ!!今、私が・・・・助けるから!!」
レンは短パンの布を破り、ケイの肩に巻き付ける。
「動ける!!?」
「うう・・・痛い・・・」
「レン!!ケイ!!」
俺は二人が座り込んでいる方へ戻ろうとする。
「タケルさん。」
先生に腕をつかまれる。
「逃げるのよ。」
「え・・・でも・・・レンとケイが・・・・・!!」
「わ、わたしらは大丈夫・・・あとから追いつくでござるから・・・・逃げて・・・!!」
「タケルさん逃げますのよ!!」
リリーに腕をつかまれる。
「いやだ!!二人を置いていくなんて・・・!!!」
「タケル!!頼むから逃げてくれ!!」
レンが懇願するように叫ぶ。
「でも・・・・・」
「カレー屋姉妹のしぶとさをなめるなよ!!」
知っている。
彼女らはしぶとい。
でも。
それ以上に他人の為に己を犠牲にできてしまうくらいに
優しいことを・・・・
天野とリリーに引っ張られるように俺は連れていかれる。
レンとケイがすこしずつ小さくなっていく。
最後に聞こえたのは無数の銃声だった。
声はもう聞こえなかった。




