動き出すときへ
朝になった。
何度目の朝だろうか。
俺は決意した通りの行動をとっていた。
世間でいうと引きこもりというのだろう。
誰ともかかわらない一番の方法は部屋に引きこもることであった。
「学校にきませんとだめですのよ。」
リリーにそう言われた。
でもかかわらないことに決めた。
「タケルさん・・・・私の絵を見に来ていただけないでしょうか。」
天野も来た。
「タケルさん・・・飲食街で最近見ないでござるね。」
「カレーでも食べにきなさいよ・・・あんたがいないとハリがないのよ。」
ケイとレンも来た。
だめだ。
俺では誰も幸せにできない。
関わることで必要以上に感情移入してしまう。
感情とは非常に面倒だ。
人は感情によって興奮し、
感情によって怒りや不安を感じ、
感情によって時には殺されてしまう。
この長い「敵」との戦争の為の訓練ももとはといえば
誰かと誰かの感情のぶつかり合いだ。
誰かと誰かがいがみ合い、ままならなくなり戦争へと駆り立てたのだ。
結局、感情なんてものがなければ何もうまないのだ。
何もうまないということは何も起きない。
何もおきないということは誰も幸せにもならないが不幸にもならない。
何もしない、誰とも関わらないということが大事なのだ。
俺は部屋にこもり、何もせずひたすら部屋の隅でくるまり続けた。
「先生・・・・」
「なあに?坂上さん?」
私は先生に相談することにしましたの。
だってタケルさんがあんなに苦しんでいる表情をしているのに
何もできないなんて悲しすぎますから。
それに・・・・
何かタケルさんにはとても恩がある気がしますの。
「あ・・・あの・・・先生。」
私は本来、先生に話しかけられるようなシロモノではなく、ただのガラクタです。
でも、タケルさんがあんなに苦しんでいるのだから私は何かしたいと思うようになったのです。
「はい・・・・あなたは・・・・」
先生は目をまるくして私を見ています。
その隣には、ロリータ服のスラっとしたきれいな女子生徒がいます。
「あなた、私が先に先生に話しかけてましたのよ。」
「で、でも!!」
「・・・たくなんの用ですの???」
「あの・・・実はタケルさんについて・・・相談があって・・・・」
「あなた・・・・タケルさんと知り合いですの?」
「ええ・・・たまに話しかけてくれるんです。私みたいな・・・・その・・・」
「そうですの。・・・・・」
言葉の凪というんですの??
沈黙が空間を支配してましたわ。
「私も・・・・そのタケルさん・・・についての相談ですのよ。」
少し顔が熱くなってしまいましたの。
でも・・・・
「そうですか・・・・よかったです。同じように思われている方がいて・・・」
私はベレー帽をかぶりなおしました。
少し照れますね。
こうやって誰かと同じ志を持つというのはうれし恥ずかしです。
「えーーと・・・・二人ともタケルさんについての相談なんですね・・・・って
・・・・ぷぎゃあああああ!!!!!!」
「「おっと危ない!!!」」
私たちは先生が転ぶのを防ぎましたわ。
ここで倒れられても、話が進みませんの。
「ははは・・・ありがとう。で。タケルさんがどうしたって??」
「は、はい・・・なんだか学校にも来ていないみたいで・・・この前ちょっと訪問したんですけど
すごく暗くて・・・・何かはげませないかなあって・・・・」
「あら。あなたもタケルさんのところに行かれたのですね。奇遇ですわ。
先生。タケルさん、なんだかずっと調子悪そうですの。どうしたらいいですか?」
苗村先生は腕をくんでうなり始めました。
「話を聞いてみないと・・・わからないかなあ・・・・でも話をしてくれる感じでもなさそうだし。」
「何か理由はご存じでいらっしゃいますの?」
「いやあ・・・わかんない。でも確実に言えるのは・・・先生をおぶって医務室に運んでから
もう学校には来てない。」
「先生に何か負い目を感じているのでしょうか。」
「さあ・・・・でも先生を見た瞬間・・・・タケルさんは・・なんだから泣きそうな顔になっていたなあ・・・・」
「泣きそうな顔・・・・」
なんで苗村先生を見て・・・しかも初めて会う苗村先生とあって・・・
「タケルさん・・・入学式もきてなかったですの。」
「そうなんだよね。先生もたまたまさ、入学式前日に学校にきていて、、、
なぜだかタケルさんもいてさ・・・・よくわからないんだよね。」
苗村先生とタケルさんに何があったのでしょうか。
まだ学校生活が始まる前だったというのに。
ただの登校拒否にしか見えないのです。
「とりあえず、みんなで部屋にいってみようか。話をしなくては何も始まらないからね。」
私たちはその日は解散し、次の日曜日にタケルさんの部屋に行くことにしましたの。
部屋に戻りましたの。
「ふんふんふん・・・」
私は脱衣所で服を脱ぎシャワー室に入りましたの。
「体が熱くなっていますの。冷却しないと・・・」
冷却しないといけない。
誰にそんなことを教わったのだろうか。
人としての本能?
いや、そんな本能など。
私たちにはプログラムされていないのですの。
だからたぶん、そういう仕様なんですの。
「でも・・・なんだかあまり体によろしくない気がしますの。」
こんなことをするなんて。。
国はよほど予算がないと見ましたの。
それはそうですわね。
「もう・・・・49回目の実験なのですから。」




