時は戻らない
「えーっと・・・・どういうこと?」
抱きかかえた苗村先生を立ち上がらせる。
苗村先生はスカートを払い、咳払いをしたのちこちらを見る。
「タケルさん。苗村先生です。」
「あ・・・うん・・・うわ・・・・」
涙が出てきそうになる。
あの日。
首をはねられたはずの苗村先生が、
俺の前に立っている。
どういうわけだか苗村先生が生きているのだ。
これほど安堵したことはないだろう。
何かの為に足掻いて、足掻いて報われたような気がした。
ただ・・・・
タイムリープは実行されていない。
加藤が眼帯を外して閃光に包まれると入学式の日までさかのぼる。
それが実行されていない。
そうだとしたら、苗村先生はこの時間軸において生きているわけがないのだ。
「ああ・・・・そういうことか・・・・」
「??なんだ?タケルさん。」
それ以上何も言うまい。
双子の妹がいたって何もおかしくあるまい。
教員が一人減ったのだ。
補充があってもおかしくない。
たまたま先生には双子の妹がいて、教員になることができる資格があって、
たまたまこの学校に来た。
そうでなければ辻褄が合わない。
だって、まだタイムリープは起きていないのだから。
「じゃあ、先生。また明日な。」
「うむ!しっかり遅れずにくるんだぞ・・・・ってぷぎゃあああ!!!!!」
先生は案の定、教壇から転げ落ちた。
「あー誰か!担架を・・・・・」
誰もいない。
だから俺が先生を背負って、医務室に連れていくことにする。
先生の体温を感じる。
小さな体で俺らを導こうとこの学校にきたのだ。
涙が出てきそうだ。
もう二度と言わないセリフを、またいうとは思わなかった。
担架を運んでまたこの先生を運ぶことができた、そんな錯覚に陥った。
だけど、あの俺が思いをはせていた苗村先生ではないのだ。
うり二つではあるが、違う人なのだ。
時を巻き戻すことはできないが、俺は今度こそ誰も不幸せにしないための
ふるまいをしなくてはいけなかった。
先生とも誰ともかかわらない。
心を閉ざし、耳をふさいでいれば誰も悲しませることはない。
医務室に向かう道のりで改めて決意を胸にしたのだ。




