変わらぬ先生
「おはよう。」
「おはようございますの、タケルさん。」
クラスが喧噪に包まれている中、リリーが挨拶を返してくれた。
「リリーおはよう。」
俺は席に座る。
いつもなら加藤が教室までくっついてくるか、
銃を突きつけて、中二病的なふるまいをしてくる。
それがないのは少し物足りなさを感じる。
「ミナサン、おはようございまス。」
苗村先生はぎこちのない動きで教室に入ってきた。
「授業をはじめます。」
教卓に出席簿を置くと先生はさっそく授業を始めた。
「ねえ・・・タケルさん。」
「ん?なんだ?」
「なんだから最近、先生の様子、おかしくございませんか?」
「ああ・・・うん。まあでも出席簿持ってきて出席とらないとかテンパる苗村先生ぽくないか?」
「まあ・・・そうなのですけど・・・・」
先生と一瞬目が合う。
困ったような笑顔を一瞬見せたような気がした。
今日は、職員会議だから先生と放課後話をすることができない。
もうすぐスパイに殺されてしまうという先生のかわいい勘違いを聞くことができないのは
寂しい限りだ。
苗村先生の一つ一つの動きに目を追う。
震えながら書くチョーク先は文字の震えとして黒板に反映される。
黒板に向かうその背中はひときわ小さく見える。
ひざ下まであるスカートを左手でつかみながら、
かつかつと授業の内容を黒板に書いていく。
「せんせー、そこ間違ってますよー。」
「ひゃあ!!ごめんなさい!!」
黒板消しを取ろうと前のめりになる。
「ぷぎゃあああああ!!!!!!」
ああ、懐かしい、ぷぎゃあああだ。
そのまま額を頭にうちつけて動かなくなった。
「ああ・・・・。」
いつも通り。
これまでの47回と同じだ。
何も心配はない。
いつもと変わらない日常。
俺はだから今まで通り叫ぶ。
『誰かー、担架を!担架を持ってきてくれ!』
そう叫ぶ。
今まで通りだ。
よかった。
苗村先生だ。
今まで通り。
だから明日の放課後はまた先生と話しをしよう。
それで笑ってあげるんだ。
「なんすか?ぷぎゃああって。」




