表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/126

楽しい放課後

その日の昼休み。


俺はすでにレンもケイも屋上に誘っていた。


「はい、タケルさんあーん。」


「あーん。」


今日はリリーが俺にあーんしてくれる。

ケイとレンは息が上がっていながら、持ってきた弁当を食べていた。


俺は横目に二人を見る。


「汗、すごいんだな。」


「そりゃあ、運動のあとでござるからね。」


ケイはリアクションしたが、レンは黙っている。

わかっているさ。

そういう反抗的な目すら愛せるというものだ。



俺は立ち上がり、レンの髪をなでてやった。


満更でもない惚けた顔をしてこちらを上目遣いで見ている。


悪くない。











次の日。



「先生なんですか??」

「タケルさん。私そろそろ殺されちゃいそうです。」


「またそれですか。スパイにばれたんですか?」


「はい。。。。ばれました。」


「・・・・でどうやって先生は殺されてしまうのですか?」


俺はため息をつく。


「わかりません。ただたぶんスパイ容疑ヲかけられているカラ・・・・

どうでしょう。暗殺か・・・・公開処刑カ・・・・。」



苗村先生は眉間にしわを寄せている。


「苗村先生・・・・だったらどうして逃げないんですか?」


「逃げる・・・・どこから?」


「この学校やこの世界からですよ。」


俺はこの言葉を紡いだとき、すこし胸が締め付けられるような思いになった。



ケイやレンを逃がすことができずに。

リリーや天野を幸せにできなかったくせに。


なのに、他人には自分ができなかったことを求める。


はなはだおかしい。



「そんなことはできませんヨ。」


「どうして??」


俺は食い気味に尋ねる。



「私は・・・先生ですから。たとえ命が狙われようガ・・・生徒に教えるものを教えて

あなたたちガ巣立てるように、その日まで伴走するのガ・・・役回りですから。」


苗村先生はにっこりと笑顔を俺に向けてくる。

はじめてみたかもしれない、その優しい笑顔に俺は思わず顔を熱くしていた。

俺にだけ。

今ここにいる俺にだけ注いでくれる笑顔に嘘はなかった。


だって48回もリープしているとわかる。


ぷぎゃああああといいながら、入学式で倒れてしまうような

ポンコツな先生だ。


嘘はつけない。

今の自分の感情を殺すことなんてできないのだ。


だからこの至高の笑顔はたぶん本物だ。




「わたしは・・・・たぶんそろそろやばいです。」


「そうですか・・・・。」


先生はもしかしたら俺とこういう会話をしたいだけなのかもしれない。

生徒と先生という垣根を越えて。

あの手紙すら先生の自作自演ならばこの流れは筋が通っている。


あれだけ不器用な先生なのだ。

そう思うと少し愛おしく感じざるを得ない。



「だからね・・・タケルさん。」


「はい?」


先生の顔を見すぎていた。

ばれていないだろうか。

俺のやましい思考が漏れていないだろうか。



「あなただけでも・・・・この腐った世界から・・・・」


「え?」



「逃げて。」



苗村先生は目に大粒の涙をためていた。

先生は手に口をあてている。

震えていた。




「はあ・・・・・。」


俺はため息をついた。

今度はあきれているのではなく、安堵のため息に近い。


加藤がいないこの世界でも。

こんな中二病チックな人がいてくれるだけでも助かる。



それだけでもやがて訪れる淘汰の日までの楽しみが増えるというものだからだ。



「ねえ・・・先生。また明日こうして話聞かせてほしいです。」


「え??」


俺は反射的にそう先生に頼んでいた。


「・・・・・。」


先生は目を泳がせている。

困惑しているのか。



しばらくの沈黙のあと先生は答えた。



「はい・・・・それでタケルさんの気持ちが固まるなら。私は何度でもあなたと話しをします。

だから・・・・。」



「はいはい。助けてください?でしょ?それとも逃げる?先生、前向きに検討させていただくことにしますよ。」



俺は立ち上がった。


振り返りもせずに教室を出て行った。


先生はどんな表情をしていたのかは知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ