48回目の世界線と管理者
「いや先生・・・・・・」
俺は立ち上がり苗村先生を呼び止めた。
「なアに・・?タケルくん。」
苗村先生は振り返った。
「いや、今更だなって感じでさ・・・・。」
「なにガ・・・・?」
「だって・・・・・スパイってさすがにちょっとぶっとんでいるというか。スパイごっこをしている奴ならいるけど。」
「ごっこ・・・・ごっこだとあなたは思っているのかしラ?」
苗村先生は両手を後ろに組み、胸を突き出すような姿勢でこちらを覗き込む。
「加藤は・・・あれはただの中二病だろ・・・?」
俺はやれやれといった感じで両手の平を天井に見せるように手を挙げた。
「か・・・カトウ??」
苗村先生は首を傾げた。
「ああ・・・・あの眼帯をした加藤だよ。」
苗村先生は俺に近づく。
「キミは・・・疲れているようだね。今日は早く帰ってお休み。」
肩をたたかれた。
入学式の翌日はさっそく総合演習だった。
りりぃと書かれた胸がバインバインの女の子。
りりかと書かれた胸がバインバインの女の子
それと俺の3人組で総合演習は実施された。
「リリー、地雷原には気をつけろよ。忘れないようにメモで渡しておく。」
「忘れる??わかりましたの、タケルさん。」
「天野も、目悪いんだから気を付けなよ。困ったらしがみつけよ。」
「は?はあ・・・・・・」
ああやばい。周回していることをこいつらにばれてはいけない。
いや、なんかもう今更この世界がどうなったってどうでもいいから適当にしておこう。
辻褄合わせや演技するのは正直もう面倒くさいから。
淘汰の日まで何事もなく過ごす。
「加藤は・・・・どこへいったんだろうな?」
「タケルさん??加藤さんって・・・・」
「なんだ?リリー??」
「誰ですの?」
「は?」
「タケルさん、私も加藤さんって誰だかよく知らないんだけど・・・」
「ああ・・・天野は教室はじめてだったよな。加藤ってのは、眼帯をつけたショートヘアの厨二病のやつがいてさ。よく
裏切者はヤッチャウよ?みたいなことを銃を突きつけながら俺にやってくる痛い感じの女の子だよ。」
「そんな方がいたのですね。」
「タケルさん?そんな子はうちのクラスにいましたかしら?」
「は?」
リリーに振り向くと胸がぼんと顔にあたる。
「わ・・・ごめん!!リリー!!」
「ああ・・・すみません。近すぎましたの。」
リリーは胸を両手で隠すようにしながら2歩後ろに下がる。
顔が真っ赤で内股なのがまたかわいい。
「加藤いたろ??ほら・・・よく・・・・。」
総合演習を一緒にやっていた加藤がさ。
と言いかけて俺は体が固まる。
天野の方を見る。
天野がなぜここにいる??
俺は48回目を繰り返しているはずだ。
だとしたら天野がなぜここにいる??
世界線が変わった??でも何かしたか?
いやタイムリープだとしたら・・・・
世界戦が変わるなどありえない。
いつも通りあいつの目が光ってそして、入学式から初めて・・・・・
いや、桜並木の下で俺はあいつと一緒にいるはず・・・?
いや違った。
リリーと天野でいいのだ。
加藤はいない。
そうそれはまた違う俺の話だ。
加藤なんて奴は存在しないのだ。
入学式の翌日。
下校時間になる。
今日は座学であった。
桜並木を亀のようにゆっくり歩く。
あいつと会えるはずなのに。
加藤はいない。
「タケルくん??」
ピンク髪のロリがぽつんと道の真ん中にいる。
「苗村先生・・・・。」
「ちょっとお話があります。教室に戻っていただけませんか??」
夕焼けに照らされる教室で苗村先生と二人きり。
これだけ書くと、なんだか教師と生徒のいけない感じの関係に見えるが
当然そんな間柄でもない。
「先生・・・話ってなんですか??」
「タケルくん。私、この学校にスパイがいるって話をしたじゃない??」
「はい。」
「私がね、スパイがいるってことを突き止めたのがスパイにばれてしまったみたいなの。」
「はあ・・・・」
「それでね、どうやらそいつは私をなんとかしようとしてみるみたいで・・・・その・・・」
「はあ・・・・。」
「私、このままだと消されてしまうみたい。だから誰がスパイか見破って私を助けてほしいの。」
「はあ!?」
48回目。
思えば誰も助けることができなかった47回。
俺は何もしないと決めたのだ。
そう決めたんだ。
「先生・・・・すみません。忙しいので、、、、今日はこれで失礼させていただきます。」
俺は先生の顔を見ずに教室を去った。
走り抜けて思考を飛ばしたかった。
俺は何もしない。
何かしたら誰かを不幸にしてしまう。
だから48回目は何もしない。
これが正解だから。




