終わりの時
俺はガラクタの中のレンを抱きかかえる。
すっかり衰弱しきっていたレンはなんとかはにかむように笑みを見せる。
「た・・・・ケル。よく、、、見つけてくれたね・・・・・」
「レン!!レン・・・・ああ!どうして!!」
あの仕入れ場であったときに。
力づくでもレンを連れ去ってしまえばよかった。
「へへ・・・・・こんな私になっても・・・会いに来てくれる人が・・・いてくれたんだあ・・・・」
「レン・・・すまない。。。俺が俺がお前を・・・・」
俺は歯を食いしばっていた。
「や・・・やだなあ・・・・うれ・・・しいんだよ。こんな傷だらけのガラクタの・・・私を・・・・」
「待ってろ・・・・今助けるから・・・・」
助かるはずもないのに。
「そ、そんなこと・・・・・より・・・・抱きしめて・・・・ほし・・・い」
俺はレンの体を抱き寄せる。
臓器のほとんどを抜き取られたのか。
軽い。
軽いだけでなく、強くだきしめようとすると壊れてしまいそうなほど、何もない。
俺は体を震わせていた。
レンの顔を見る。
「あ・・・あたしの・・・・体・・・軽いだろ??いろんな人の役に立てるよう・・・・すっからかんに・・・」
力なく笑うレン。
俺は耐えきれず、、ぽつぽつと涙を落とす。
「な、、、何泣いてるのよ・・・・・わ・・・・あたしはうれしいんだよ・・・惚れた男に・・・こうやって傷物のなったあとも
抱きしめられている・・・・んだから。」
レンは瞳が見えなくなるようににっこり笑っているが、目からは一筋の涙が流れていた。
「レン!!俺は・・・・・!!!!」
「いいんだよ・・・・別に・・・・ほれ・・・・たのはあたし・・・・あんたがどう思っていようが・・・。」
レンの息があがる。
「こんなさ・・・・報われない・・・世界・・・でもさ・・・こうやって・・・胸をときめかせることができただけでもさ・・・・
幸せだったのさ・・・・・。」
ひゅーひゅっとレンの息が変わる。
「あ・・・あたしとケイはさ・・・・中のいい姉妹でさ・・・・・小さいころから・・・・お父さんとお母さんもいて・・・あの頃は・・・
幸せだったのにさ・・・・・・」
レンは胸で息をしながら、口を動かし続ける。
「なあ・・・・・タケル。。ケイは・・・・・元気か?」
「え・・・・?」
あんな妹のことを、、、死にかけているこのタイミングで?
「なあ・・・・・・タケルさ・・・・頼みがあるんだ・・・・・・」
レンは力を振り絞って俺の首に腕を回す。
「あた・・・しはさ・・・・自分の貯めた金で・・・・自分を助けることも・・・・できた。だけど。。。あたしは。。。。自分の恋も・・・・
自分の命も・・・捨ててさ・・・・あの子に生きてほしい・・・と思ったんだよ・・・・。」
レンはせき込む。
もう体の中にほとんどない体液を吐いた。
「だからさ・・・・あっけらかんとしていてもさ・・・・・怒らないであげてくれよ・・・あの子だってさ・・・血の通った人なんだからさ・・・
姉貴が死んで悲しまないわけがない・・・んだよ。あたしらにさ・・・・悲しむ時間はないんだよ・・・・それくらい・・・生きるのに必死なんだ・
肉親が死んでも・・・生きることができなかった分・・・心を殺して・・・生きていくしかないんだよ・・・・それがあの子なりの・・・・
私への手向けになるんだからさ・・・・・・」
俺は・・・・。
あの時。
ケイはこの瞬間にも蒼い瞳をきらめかせながら、胸元を見せるような姿勢なのだ。
こいつはただの体液中毒だ。
「・・・・だって。」
ケイは尻をもふりはじめた。
あれは、、、もしかしたら。
いつも通りにでもしないと乗り越えられない悲しみだって・・・・
ケイは泣いていた。
「へ、、、、へへ、、、、ははは。。。。私だけ。。。。。へへへ。。。。。」
泣くのごまかすかのように笑っていた。
そう私だけ。
私だけ、肉親を失い、心を殺していきていく。
姉が生きることができない明日を背負って生きていく。
俺はそれをレンに任されたのに・・・・
俺は・・・・・・俺は!!!
レンは大量に体液を口から吐いた。
「レン!!!レン!!」
「あ、、あたしは・・・・もう駄目だよ。。。。ケイに伝えておいておくれよ。。。。」
レンは体を起こす。
「あ・・・あんたはさ・・・私を背負わないで・・・幸せに・・・・生きて・・・・・」
レンは手を振りわせて俺に差し出そうとした。
「たけ・・・・る・・・・あい・・・し・・・・・」
その手は一気に脱力し、レンの体からすべての力が抜けきった。
レンはもう二度と動くことはなかった。




