レンもケイも
「レン!!」
朴念仁な俺でもわかる。
追いかけるべきだと。
「レン、どこだっ!!」
飲食街を走り回る。
突然の愛の告白に戸惑いながらも、たぶん勇気を振り絞って言葉を紡いでくれたことはうれしい。
ならば答えなくてはならないと思うのが人としての筋であろう。
カレーが煮詰まらないくらいの弱火にしたあと、俺は飲食街を縦横無尽に駆け巡っていた。
しかし、レンは見つからない。
走り回っていると、件のカレー屋が見つかる。
「おい、店主!!銀髪のロングヘアの女の子、来なかったか??」
店主はテーブルに座っていた。
椅子には、壊れかけた使い物にならなくなった女の子が寝かされている。
「いやあ、、、見なかったよ。。。。」
俺は一瞬足を止めた。
「なあ。。。そいつ病院に・・・・連れていかないのか??」
「病院??そいつは何だ??」
こいつの国には病院もないのか。
いや、病院が不足しているのか、経済的に難しくていったことがないのか。
「悪いなんでもない。」
俺は思考を切り替えた。
「なあ・・・その仕入れってのはどこでやってるんだ??」
「仕入れねえ・・・お前さんが行くのかい??」
「いや、知り合いがさ、そこに今いて俺が探しているやつの妹なんだよ。」
「はあ・・・・そうかい。」
店主は手のひらを差し出してきた。
タダではないということか。
俺は店主の手のひらに金を握らせた。
仕入れを行っているという場所は飲食街を抜けた先にあった。
テントがたくさん建てられている。
仕入れ場所の入り口には屈強な男が2人。
さながら風俗店の内勤のようないでたちだ。
「あの・・・・ここは・・・・」
男の1人はこちらを見るなり、仏頂面を満面の笑みに変える。
「男性おひとり様ですね。初めてでございますか??」
「ああ・・・・」
「料金システムはご存じですか??」
「いや・・・・料金システム???」
メニュー表を見せられた。
・体液摂取 時価
・体液交換 時価
・買取 時価
ずらりと書かれたお品書き。
「中を見て回る・・・はできないのか?」
黒服は手をすりすりさせている。
「ええ・・・見ていただいてからどうするかお決めいただいても結構でございます。閲覧は無料ですから。」
閲覧か。
俺は歯をかみながら、何か黒い鉛を飲み込むように言葉を飲み込んだ。
仕入れ場所を案内される。
そこはレンやケイのような褐色肌の女の子だけでなく、
おそらく他国から来た子や経済的に困窮しているであろう女の子たちがショーケースに置かれているような場所だった。
俺は信じたくなかったが、、、ここは仕入れ場所ではない。
ケイはここで年貢を稼いで納めているわけか。
ケイに助けを求める必要があった。
レンが行きそうな場所を探す必要があった。
ショーウィンドウを見ていると見慣れた顔に合う。
サファイアの瞳。
胸元をちらつかせて、尻を振っている。
「あれ??タケルさん??どうしたんですか???」
「いや、レンが店を飛び出してなあ・・・・行先に心当たりはないか???」
「え・・・レンちゃんは後ろにいますよ?」
俺は後ろを振り返る。
ショーウィンドウにいたのは銀髪のロングヘアの女の子。
「なんでレンまで・・・・?」
「・・・・・」
レンは黙っている。
察した。
ケイだけには無理をさせられないのだろう。
カレー屋でやっていくのをあきらめたのか。
「タケル・・・・・そのカレー食べてくれた??」
レンは顔を伏せている。
あのコトコト煮ていたカレーは俺にあてたのもだった。
「カレー屋で頑張るんじゃないのかよ!!」
あたりの見物客はこちらを一斉にみる。
「タケル、声が大きいよ。」
「あ、ごめん・・・でもなんで・・・・」
「カレー屋じゃあ、もう無理なんだよね。ケイちゃんが私の体液を吸い始めたあたりから考えていたの。私はどうなってもいいから、
せめてケイちゃんに楽をさせてあげたいから・・・・」
「でも共倒れなんだろう??それじゃあ・・・・・。」
「私ね・・・・結構稼げたんだよ。お金も結構できたからさ。。。だからさ・・・・タケルにお願いがあるの。」
「な、なんだよ・・・・・」
レンはせき込む。
手で口を押えているが、一筋の赤い液体が手の甲を伝う。
「私は・・・・もう長くないの・・・・たぶんね。ケイちゃんに体液をあげていたのもあるけど。。。ケイちゃんの稼ぎだけだと足りないから・・・・・」
俺は間違っていたのか。
レンがやせているのは、ケイに吸われただけではない。
レンもまた、仕入れを行っていて・・・・。
「だからね。」
レンは口元を赤く染めながら、ニコリをはにかむ。
見たことのない優しい笑顔で。
それはとてもきれいでかわいい笑顔で。
「私のお金で・・・・ケイちゃんを買い取って・・・・・それで・・・・・二人で逃げて。。わたしはいけないから・・・・・」
黒服がショーウィンドウに入ってくる。
「ああ・・・血まみれにしてしまって。今日はあがりな。。使いものにならんだろう。」
レンは奥に引っ張られていく。
「レン!!!」
「お客さん、この子今日はもうあがるからさ。別の子にしてくだせえ。」
俺は奥に引きずられていくレンを見守るしかなかった。




