さようなら、ハルカ。
『いやあっ、いやっ!』
私はガレキの中を這う。
ベレー帽を落としたのはまずかった。
だが、タケルさんを外に出せたのはよかった。
私の芸術活動はこのベレー帽によって、なんとか隠し通すことができていた。
妨害電波を使い、これまでの活動を
国に知られなかった。
タケルさんは多分助かった。
でも、お父さんは、、、
『お父さん、お父さん!!』
あたりの薄暗さと私の視力も相まって全くあたりがどうなっているか分からない。
タケルさんにしがみつかなければ、
私は外を歩くことが出来なかった。
何も見えない。
絵を描ききることができたのはよかった。
もう目が見えないから、描けない。
『はい、天野です。あなたのお名前は?』
確認しないと誰だかわからないくらいに目から光は失われつつあった。
視聴覚室のガラクタの山。
そこから抜け出すことができないくらい。
誰かが、
ガラクタにつまずき、少し大きな音がする。
『ひぃっ!』
私はその場でうずくまった。
誰かが私を襲いにきたのではないか。
『あ、まの?』
聞いたことのある声だった。
『最近はあまり描いてないのか?』
『ああ、ええ。ちょっと最近はゆっくりしてます。』
タケルさんはおそらく雑然としているであろう部屋を見渡しているのかもしれない。
目が見えないから。
何をどこに置いたかもよくわからない。
今になって後悔している。
アイスコーヒーを飲んだ時。
目玉焼きトーストを食べた時。
『ハルカだよ。』
そう言えばよかった。
昔よく作ってくれた味。
『お父さん、お父さん!お父さん、どこにいるの!?』
ガレキの中を這う。
『おとうさーん!ううっ、うわあああああ!』
私は柄にもなく泣き喚いていた。
悲しいから?
寂しいから?
暗いから?
それとも
痛いから?
『ハルカ!』
『お父さん!』
何も見えない。
でもきつく抱きしめてくれる。
『お父さん、お父さん!お父さん!』
『ハルカ、ハルカ!すまなかった!大丈夫か!今、助けてやるからな!』
いったいどれだけコーヒー豆を擦っているのか。
コーヒーの匂いがする。
『えへへ、、おと、うさんコーヒーの匂いがす、るね、、』
お父さんの顔あたりに手を伸ばす。
『ああ、ハルカ!ハルカ、、すまない。』
お父さん、の髭。
ゴワゴワ、、して、、いて気持ちいい。
『良か、、た、 また会えて、、よかった、、』
『ハルカ!これからは!これからは、ずっとずっと、、、』
雫が顔に落ち、、てくる。
私の頬も、、涙に、で、、濡れて、、きた。
『ああ、ああ!ハルカ!どうして、どうして!私は、もっと早くお前に、、嫌だ、嫌だ!どうして!』
お父さん、、は泣き喚いている。
こ、ども、みたいだね。
『お、と、、うさん。』
『な、なんだ!どうした!』
私はさ、いご、、の力を振り絞る。
『あ、えて、よかっ、、たよ。、だ、いすきだよ、お、、と、、、さ、、、』
『ハルカ!ハルカ!』
私の、イシキ、、ハ、、ヨドンデ、、キテ、、
サヨウナラ、、オト、、ウ、、サン、、、
・・・・・・。
『ハルカあああああっ!』
俺はガレキから聞こえた泣き叫ぶ声の方へ向かった。




