天野と父さん
視聴覚準備室に入る。
『はい、天野です。あなたの、お名前は?』
『タケルだよ。』
引き戸を閉める。
天野は空で両手を左右に動かす。
目隠しをされた人間があたりを見渡すような仕草だ。
『天野、絵画展もうすぐだな。』
『ええ、もうすぐお父さんに会えます。』
『っ、、、。』
言葉に詰まる。
『天野、絵はあれを出すのか?』
『ええ。私の渾身の力作なんです。』
天野は優しく微笑む。
俺は拳を握りしめて怒りを殺すしかなかった。
『天野、絵画展いい展示にしような。』
声を震わせながら、天野に伝える。
『タケルさん?』
天野は小さく首をかしげる。
俺の言葉とは裏腹な怒気を感じとったのだろうか。
天野は側に立つ俺の手を取り、頬でさする。
『あ、天野!?』
顔が熱くなる。
『タケルさん、私は、嬉しいんです。日陰にいた私を日向に引っ張り出してくれて、、それだけでも嬉しいのに、お父さんに会えるかもしれない。私は今とても幸せなんですよ。』
天野なりの感謝の伝え方なのだろう。
こういうところがずるい。
俺は感情がぐちゃぐちゃになっていた。
『天野様の娘さんですか、、、はい。オーナー様のお子様ですね、、、ああ絵画展に、ええオーナーも来ますが、、、』
『お会いするのはおやめになった方が良いかと思います。』
『なぜだ?』
『オーナーは、、、ハルカ様を捨てられたのです。今更お会いになりたいとは思われないでしょう。』
怒りや天野への思い。
全てを俺が受け止められなくても、、、
俺は、、、
『タケル、、さん??』
天野を強く強く抱きしめていた。
『いた、いです、、、』
『ああ、ごめん!』
天野を離そうとする。
しかし、天野は袖を掴む。
『違い、、ます。』
天野は上目遣いで頬を赤く染める。
『優しく、抱きしめてください。』
天野は俺の体にくっつく。
俺は一瞬固まる。
すぐに、天野に腕を伸ばし、
優しく抱きしめかえした。




