表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/126

カウントダウンは聞こえない

『よう天野。』


『はい、天野です。あなたのお名前は?』


天野はキャンバスの方、いや少しキャンバスからは不自然に視線が外して、床を見ている。


『やだなあ、タケルだよ。』


『ああ、タケルさん。こんにちは。』


焦点が定まっていないように見える。




『天野、この前さ、、、』


天野に喫茶店のことを話そうとする。

いや、俺が水面下で親父さんを探しているのは伏せよう。


『はい?』


『あ、いや、なんでもないんだ。』


『はあ、そうですか。』



天野は俺の方を向く。

いや、微妙に視線がズレている。


最近、こんなことが増えたような気がする。



『天野、、、その、、絵画展もうすぐだな。』


ぽやんとしている天野に微笑む。


『ええ、、楽しみです。』


天野は困ったように笑う。

自分の絵画でお父さんと会えるのだろうか。

そんな風に無言で語っているのか。


なんだろう。


何かここ最近は浮かない表情だ。

もともと無表情だが、笑った時は心のそこから笑っているように、最初の方は感じることができたのだ。



天野は絵を描くことなく座っている。


『最近はあまり描いてないのか?』


『ああ、ええ。ちょっと最近はゆっくりしてます。』


視聴覚準備室の天野の画材の方を見る。


筆が上下逆に入っていたり、絵の具での汚れも少し目立つ。


初めて視聴覚準備室に来た時より、なんだか雑然としているような印象だ。



『その、何かあったのか?』


唾を飲み込む。


『いえ、どうしてですか?』


天野は首を小さく傾げる。



『あ、いや、なんでもない。』








それより天野の父さんの手がかりを少しでも集めないとならない。



『天野、今日はちょっと学校サボるわ。』


『え、、でも、、大丈夫ですか?』


『大丈夫だよ。加藤には何か言われるかもしれないけど、、』


加藤は体調が悪いらしいから、そんなに動けないだろうし問題ない。



『じゃあまた明日な。』


『ええ。さようなら。』


天野は手を振る。

俺とは微妙にズレた方向に。


















『手がかりないなあ。』


聞いてまわったが、一向に手がかりは掴めない。


今日も喫茶店に寄る。



『いらっしゃいませ。あああなたは。』


喫茶店はお客が俺1人。


来客が少ないのだろうか、俺のことをマスターは覚えていたようだ。




『こんにちは。アイスコーヒーと、、あとショートケーキ!』


『はい、かしこまりました。』


ケーキセットが来るまで店内を見渡す。


秋葉原。

浅草。

東京タワー。


天野と絵のタッチが似ている。

いや、素人目から見るとそんな感じなのだろう。



ぐるりと見渡す。


荒廃したビル群。


天野とクオリティ的には同等だ。

これだけの絵を天野も描くことができるのだ。


親父さんも見てくれるに違いない。



『あれーーーー』


俺は見落としていた絵があった。





『お待たせしました、ショートケーキと、、、』



『マスター!』


『は、はい、お客様!』


『この絵、誰から買ったんだ!?』



俺が見た絵は、、








ベレー帽を被った父と娘が手を繋ぎ丘の上で木を眺める絵だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ