天野と再会
別に何かをしたわけではない。
なんとなく、勇気がいる。
視聴覚室に入る心の準備が終わっていない。
意を決して扉を開ける。
ガラクタがさらに増えていた。
『なんだこれ?』
ビリビリに裂けた白地の布。
フリルがついている。
『なんで、天野がこんなところに、、』
天野の境遇はよくわからないが、
現状を見るとこんなところに押し込められている。
外の世界に出して幸せになってもらいたい。
だから、俺は絵画展をすすめたんじゃないか。
意を決して視聴覚準備室に入った。
『はい、天野です。あなたのお名前は?』
『やだなあ。タケルだよ。』
天野は目を合わせない。
何かボーっとしている。
やはりちょっと俺の言動を不審に思ってるのか。
『良かった、、もう来ないと思って、、、』
予想外の反応だった。
『あ、いや、そんなことはしないさ。』
ポリポリと頬をかきながら答える。
『うふふ。』
天野が笑みを浮かべる。
天野はあれ以来絵を描いていないようだ。
筆も筆入れに入ったままだ。
俺は意を決して聞いた。
『なあ、天野。あのベレー帽の男性と天野の関係ってなんなんだ?』
軽いかんじで聞くことが出来れば良かったのだ。
しかし、声がうわずる。
『ああ、私に絵を教えてくれた人、、、あれは、私の父です。』
『お、お父さんなのか。』
『ええ。父です。』
一気に力が抜けた。
笑みが思わず溢れてしまった。
天野にバレてないだろうか。
天野は視線をキャンバスに向けたままだ。
『お父さんは、絵描きなんだな。』
『ええ。父は売れない絵描きでした。男手一つで私を育ててくれたんですよ。』
『そうなんだ。』
『絵はお金になりませんから、空き時間はひたすらアルバイトをしていました。』
『そうか。立派なお父さんだな。』
『ええ。立派でした。とても、立派な、、、』
天野の目から涙が溢れている。
『天野?』
俺は天野に手を伸ばそうとする。
『父は、、、ある日私を置いて蒸発してしまったんです、、、』
天野はポツリと話し始めた。




