伝わらない想い
私の愛しいタケルさん。
私は記憶がなくなっていきます。
そのことはすでに伝えましたわ。
私はあなたに想いを伝えることは叶いません。
なぜならスリープすると、記憶がデリートされてしまうからです。
スリープしないと生きてはいけません。
本当は伝えたかった。
タケルさんがお昼に誘ってくれた日。
何も言わずに私の行進の練習を見守ってくれた。
本当はとても嬉しかった。
あの時すぐ伝えれば良かった。
思いをすぐ伝えればよかった。
私を庇って地雷源に行かないようにしてくれた時も、本当は嬉しかった。
生命を張って、記憶がなくなる私を助けてくれる人はいなかった。
私は作られたガラクタに過ぎなかったのに。
それでも生命をかけてくれた。
ロリータ服の店に行った時も、悲しみにくれていた私を飲食街に連れていったくれた時も。
いずれ目が覚めなくなる私に
心を傾けてくれる人なんて今までいなかった。
だからね、私も腹を括りますの。
今日、学校でタケルさんが来たら。
私はあなたに想いを伝えますの。
今日はスリープできない。
スリープしたら記憶がなくなってしまうのですわ。
スリープしないと私がガラクタになるまでの期間が早まってしまうけど、想いを伝えられたなら、私は、私は、、
後悔することなく、ガラクタになれますのよ。
タブレットを閉じる。
『なんでだよ、、、』
スリープしないでいったからなのか。
頭がふらふらになりながら、演習をやって、、、
それでも俺に想いを伝えたいからって、、、
床が湿る。
ポツポツと流れ落ちる。
『あああっ、、、うわああああ!!!』
声を上げる。
涙がぼろぼろと流れ出る。
『うう、うううあああああああああああ!!!』
声をあげて泣き続けた。
『なんで、、、なんで、、ああっ、ああああ・・。』
タブレットから通知音が鳴る。
『うああああ、、?』
タブレットを見る。
『タケルさん、万が一あなたが学校にこなかった時のことを考えて、、記録をしておきます。
タケルさん、、愛してます。世界の誰よりも。
いつかこのことを、私の口から直接言える日を夢見て。』
通知は読んだあと、すぐ消えてしまった。
俺はタブレットのデータを全て消した。
この世界線はもはや、生きていても意味がない。
リリーがいない世界なんて、意味がない。
外から銃声が聞こえる。
窓から外を見る。
第50高校の学生が次々と銃弾に倒れていく。
『始まったか。』
今回はずいぶんだな。
俺らは淘汰されていく。
扉が開く。
『やあ、君か。』
そいつは何か閃光のようなものを発した。
俺はまた、時間を巻き戻す。
リリーの死なない世界線へ。
リリーとはラブコメをしない。
俺はリリーには使命を果たして欲しいから。




