リリーのいない世界
リリーの葬式は第50高校による、葬儀だった。
第50高校の敷地にある葬儀場だ。
敷地のはずれにあり、そこには丘があり
墓がたくさんある。
野外葬儀場でリリーを弔う。
『死者の顔を見ることは死者への冒涜である。』
校則にそう書かれているので棺にいれられたまま、最後の時を迎える。
リリーの死に顔を見ていない俺には、未だ実感がない。
リリーはもうこの世にいない。
俺は棺に近づく。
クラスメイトの啜り泣きが聞こえる中、
俺はゆっくりと近づく。
涙は出ない。
だって、リリーが死んだ。
その事実を受け入れることができないから。
リリーの葬式から2週間後。
『あ、タケルくん。』
『なんでしょう、苗村先生。』
ピンク髪の苗村先生。
2週間ぶりの苗村先生。
俺は2週間ぶりに学校に来た。
『坂上さんの、遺品整理を手伝ってほしくてね。男手が必要なんですよ。』
『はあ、俺がですか。』
リリーの死を受け入れるくらいにはなったが、まだまだ向き合うのは辛かった。
『嫌、、と言ったらどうなりますか?』
『そうですね、内申点に響きますよ。演習の単位として認定しますからね。』
『わかりました。』
『では、遺品整理のことはくれぐれも他言無用でお願いしますね。また放課後教室で。』
苗村先生は人差し指を口に当てて去っていく。
ああ。
リリーのいない世界。
リリーがいないのなら、生きていても仕方ない。
遺品整理なんてやったら、俺はリリーの死を認めることになる。
昼休み。
屋上に来た。
リリーと過ごした日々。
『イチニ!イチニ!』
こんな日々が愛おしい。
『はあっ。なんかダメね。』
よりにもよって
リリーの手伝いとは。
だけど、手伝っていた日々が愛おしくて。
『リリー、さっきも教えたぞ?』
10分前に回れ右をして足を90度上げて右斜め45度を見ながらという行進の手順を教えた。
『はっ!?聞いてないですわよ!?』
もう一度聴きたい、あの声を。
リリーは踵を上げて俺の脳天に落とそうとする。
『ああごめんごめん。それより今日は紫のパンツなんだな。』
『ひやあっ!!』
なんてことのない日々。
『リリー。もうやめよう。』
『いや、、ですわ、、、』
リリーはなぜ諦めないのか。
『リリーお前だってわかってるんだろ?』
リリーの肩に手を置く。
『何がっ!』
リリーは髪を振り乱してこちらを睨む。
『私は、、、私は諦めるわけにはいかないですの。』
『なあ、リリー。』
俺は生唾を飲み込む。
『お前は記憶がその保持されないんだろ?だからさ、、、』
『私は!』
ダンっと机を叩く。
『私は私の理由のために諦めるわけにはいかないですのっ!』
『なんで、そこまでして、、、』
リリーは立ち上がる。
『明日はお休みですわね。』
バサッと金髪を払う。
『付き合ってくださらない?タケルさん。』
゛あきらめない。゛
その言葉を発する君は美しくて。
俺はとても大好きで。
『お母様の記憶は私が必ず取り戻して見せますの。だから、、』
リリーは涙を流してこちらを振り返る。
『だからタケルさん、私は諦められないですの。母の記憶を取り戻すために。』
リリーはそのあともずっとずっと母の手を握っていた。
母を想う優しい女の子が。
『んー!!美味いですわあっ!!』
カレーを食べてるリリーはまた格別に可愛くて。
『いいの。歩いて、疲れたら路地裏に座って夜を明かしましょう。私らには行き場がありませんから。』
リリーは寂しそうに俯く。
『でも、今日はタケルさんがいますわ。』
リリーは手を差し出す。
『私を離さないでくださいね。』
俺が演習にいたら。
そう俺が演習にいなかったから。
『リリー、大丈夫か?』
覆い被さったリリーの顔を見る。
『タケルさん、すごい音でしたのっ!』
リリーはニカッと笑っている。
『リリー、危なかったじゃないか。』
『ふふ、でもタケルさんが助けてくれましたわ。ところでタケルさん。手をどかしてくださいまし。』
『え、うわっ、ごめん!』
リリーの胸に手があたっていた。
『まあ不可抗力ですわ。』
俺はリリーから離れる。
リリーは立ち上がり、体育着の汚れを払う。
『でも、なんでしょうか。胸がなんだかドキドキしますわ。』
リリーの屈託のない笑顔。
ベーっと舌を出し、両手を腰の後ろで組む。
リリーが死んだのは
俺のせいだ。




