朝帰り
リリーと、ナイトマーケットにいた。
『リリー、落ちついたか?』
『ええ取り乱したみたいで申し訳ないですわ。』
『いや、いいんだが。何か思い出したか?』
『カレーを食べてからですわね。いろいろと変なのですわ。母のことやそうですね、なんだか遠い記憶が思い出されますの。』
ナイトマーケットの灯りをぼんやり眺めながら、リリーは話す。
『その、、俺と何かした約束は思い出さないのか?』
『はあ?そんな、、記憶、ございませんのよ。』
リリーは視線を下に下げて、声をうわずらせながら話す。
『でも、カレーは美味しかったですわ。なんだか、昔に戻った気がしましたのよ。母のことも忘れてましたわ。でも思い出しましたのよ。』
リリーは歩き出す。
『そろそろ帰るか?』
リリーは首を横に振る。
『門限すぎたから締め出されてしまいますの。』
『そういうのは初めてか?』
『初めてですわね。こうやって朝までナイトマーケットを彷徨くくらいしかできませんのよ。』
リリーは両手を後ろで組み、地面を蹴るような仕草を繰り返す。
少し屈むような姿勢だから、胸元が見えそうになる。
(こんな時に何を考えているんだ。)
俺は理性で自分を抑えた。
『レンのいるところに泊めてもらうかね。』
俺はおでこをさすりながら、リリーに伝える。
『リリーは首を振る。』
『いいの。歩いて、疲れたら路地裏に座って夜を明かしましょう。私らには行き場がありませんから。』
リリーは寂しそうに俯く。
『でも、今日はタケルさんがいますわ。』
リリーは手を差し出す。
『私を離さないでくださいね。』
リリーの上目遣い。
俺は自分を理性で抑えるので精一杯だ。
リリーは別にそういうことをしたいわけではない。
だから、俺は手を握りしめた。
2人であてのない、夜の旅路を堪能するために。
ただただ歩く。
リリーはタブレットをたまに触りながら、歩く。
疲れたら路地裏の木箱に寄りかかり2人で眠る。
リリーは疲れていたらしい。
俺の肩に寄りかかりすぐ寝息を立て始めた。
俺はリリーの無防備な姿と表情に一睡も出来なかった。
そして朝はすぐに来た。
『一旦、帰寮しますの。』
『ああそうだな。』
『学校に行ったら懲罰ですわね、2人仲良く。』
『ああ。』
朝焼けが路地裏の隙間から見えた。
俺らの関係に進展は特になかったけど、
俺はこの朝のことを忘れたくなかった。
マーケットを歩き、寮に入るリリーを見送る。
俺は自分の寮に戻る。
『疲れた、、な、、』
俺はふらふらのまま、ベッドに倒れ込む。
2時間後には起きて学校に行かないとならない。
『アラーム、、かけ、、ない、となあ。』
そのまま力尽きた。
私は寮に帰り、着替えを済ませましたわ。
タケルさんとのこの夜のことはまだ覚えてますの。
『意気地なし。』
鏡を見ながら、胸元に手を当てる。
『な、何考えてますの!私は、、、』
顔が熱くなる。
『寮なんて帰ろうと思えば帰れましたのよ。』
路地裏でも狸寝入りでしたのよ。
なのに、タケルさんは、ニブチンさんですわ。
帰りたくなかった。
タケルさんといたかった。
あれ、この気持ちは、、、
『ああ、覚えてますの!』
タブレットを開く。
『ずっとずっと覚えていたいですの。』
タブレットをしまう。
『ああもしかしたら、、、』
今日だったら、タケルさんに話せるかもしれない。伝えられるかもしれない。
私が記憶を失う前に、タケルさん、あなたに大切なことを伝えなくてはならない。
『学校に行かないといけないですわね。』
玄関を開ける。
朝日が眩しく。
立ちくらんでしまいそうなくらいに眩しい。
『あ、、れ?』
何か全身に痺れが走る。
『なぜ、、、??』
そのまま倒れる。
ああ。
また忘れてしまう。
タケルさん、タケルさん。
私は、、あなたのことが、、、、




