余命宣告
俺は、リリーの病院に訪れていた。
リリーの主治医から、気になることがあればすぐにでも来てくれと言われていたからだ。
『やあ、タケルくん、だったね。どうぞ。』
主治医に促されて部屋に入る。
『何かあったのかい?』
『リリーが、俺の名前を忘れたんです。』
拳をキュッと握りしめた。
『それは、、そうか。とうとうか。』
『どういうことなんですか?今までは名前を忘れることはなかったのに。』
主治医は顎に指を当てて天井を見ながらうーんと唸る。
『病状が進んだ可能性がある。しかし、大事なことは忘れないようにしかけを、、いや、そうつなないか。』
主治医なりに推察しているのだろう。
『リリーちゃんと会わないとわからないけど、もしかしたら記憶障害であることも忘れているかもしれないな。』
『それは、どういう、、、』
『昨日がリリーちゃんの受診日だったんだけど、、、彼女は来なかった。』
『それは、忘れただけじゃあ、、、』
『いや、彼女は病院は必ず来ていたのだ。忘れないようにメモをしてね。ほら、タブレットあるだろう?大事なことはメモをしているんだ。』
『それは、、つまり、、、』
『リリーちゃんはメモをすることそのものを記憶できなくなった。そう仮定したら病状は進んだという事だ。』
『だったらよ、先生。リリーをここに連れてくるから!少しでも記憶を定着させる、治療をしてくれよ!!』
俺は机に拳をおろす。
主治医は首を振った。
一枚の紙を出す。
『リリーちゃんの書いた誓約書だ。ここに来なくなったら多分病状が進んだ。そうなったらもう放っておいて欲しい、まあ簡単にいうとそんなことが書いてある。』
『なんだよ、それ。それはまるで、、』
『そうだよ。彼女の遺書のようなものだ。』
主治医は吐き捨てるように言った。
『なんだよ、、なんだよ!!それはっ!!』
『タケルくん。ここは病院だ。静かにしなさい。』
『うるせえっ!先生はリリーを見殺しにすんのかよ!?最後は目覚めるのを忘れてしまうんだろ?それじゃあ、リリーは、、リリーは!!』
『タケルくん。』
次の瞬間、頬に痛みが走る。
スパーンという音がした。
主治医に平手打ちをされていた。
『いいかい。リリーちゃんが選んだんだ。リリーちゃんが人生の幕の下ろし方を選んだ。ただそれだけだ。キミや俺には彼女の選択を歪める権利はないんだ。』
俺は膝から崩れ落ちる。
なんども床を叩く。
『ちくしょう、ちくしょう、、』
体全身が震えているのがわかる。
声も震えている。
『ああっ、ああああああ!!』
リリーが目覚めなくなる時が近づいている。
それは、リリーとの別れが近づいているという事だって。




