薄れ行く
チャイムが鳴る。
俺はリリーに声をかけた。
『リリー、屋上行かない?』
『え?なんで、ですの?』
『いや、リリーと話をしたいなぁって思ってさ。』
『はあ。いいですわよ。』
リリーは快諾してくれた。
いつもは、訝しげにこちらを見て『なんでですの!?』と言うリリーが。
俺がリリーとラブコメしたいということを実は覚えていてくれるのかもしれない。
『着きましたわ。』
リリーは屋上の鉄柵ごしに街を見ている。
少し風が強く、髪を片手で抑えて目を見開いて見ている。
『今日は風が強いな。』
『そうですわね。』
リリーは街を見ている。
俺とは視線を合わさない。
『なあ、リリー。昼メシ食うなら何食いたい?』
『はあ。よくわからない質問しますのね。』
リリーは虚な目でこちらを一瞥したかと思うとすぐ視線を街へと戻す。
『なあ、リリー。』
俺は思い切ってきいてみる。
『リリー、本当はさいろいろ覚えてるとかないよな?』
『何がですの?』
『・・・・。』
言葉の凪が訪れる。
何がと言われると少し体が強ばる。
俺とお前は昨日、デートして、俺はお前を抱きしめて、そしてキスをした。
それを覚えていてくれるなら、いやキスのところは忘れていて欲しい。
『いや、なんでもない。』
覚えてないのか、怒っているのか。
風が強くなる。
轟々と音を立て始める。
『風が強くですわ。戻らないと。』
『ま、待ってくれよ。』
屋上の扉に向かうリリーを止める。
『まだ何かありますの?』
『いや、その何も覚えてないのか??』
『はあ。しつこいですわね、、、あと、、あなたに言いたいことがありますのよ。』
リリーはジロリと睨むようにこちらを見る。
『私、あなたとお話しするのも初めてですのよ。お名前くらい教えてくださらないかしら?』




